注在乳使〈後編〉
飲めや踊れやの乳宴は、翌日も続いた。
朝から晩まで、バスティ王子らはカルボの美味乳を味わった。
「もう飲めぬと言っても、次から次に運ばれてくるわい。これぞ乳渡りの醍醐味よ」
「南のリピッドへは乳筏で渡るとの噂。飲めるだけ飲んでおかねば!」
ルブミンとロブリナの乳房は、今にも破れそうなほどに張っていた。
乳渡りの行者は、中継地の国で乳汁を飲み貯めておく必要があったのだ。この乱乳気騒ぎの乳宴は、どの国でも一週間ほど続いたらしい。
「ところでおぬちら、カルボでは誰に《注在乳使》をお任せになるのじゃ?」
二日目の乳宴には、オリゴ乳王の招きでビフィも加わったのだが、それが
「チュウザイニュウシとは何じゃ?」
四天乳の皆々は王子から乳房を反らし、救いを求めるような胸色でフェリンの方を見た。
「注在乳使とは、その地の乳王に乳果てるまで仕えることになる、四天乳のことでございます。チムとは、カルボ王国で乳離れすることになっておりまする」
乳離れ。その言葉を聞くやいなや、王子の胸が上下左右に震えだし、飲台や乳器がカタカタと音を立てた。
歌い乳や踊り乳らは、王子の胸色の変わりように恐れ、舞う乳を止めてしまった。
「乳離れ……じゃと? チムを置いてゆくのか!?」
「ぱい。一国ごとに一谷ずつ、その国に仕えてもらいまする」
そう言い放ったフェリンの乳房は、微動だもしない。
「そっ、そんなこと……わちは聞いておらぬぞ!!」
「左様ですか。そういえば王子は、わたちちの授業を抜け出しては、いつも乳臣の乳を追いかけ回していたご様子」
フェリンの両の乳首は、真っ直ぐに王子の乳首へと向いていた。
「嫌じゃ!! わちは乳離れなどせぬぞ! チムは、わちらと共に来るのじゃあ!!」
王子は飲台を立つと、歌い乳らを押しのけて客間を飛び出した。
「乳離れなどするものか。乳離れなどするものか。乳離れなどするものか――」
育ち始めた
チムの柔らかい乳房。背もたれに優れた乳房。四天乳の中でも特に甘い乳汁。断じて手放さぬ。
乳殿を出ると、すでに辺りは暗くなっていた。
それでも王子は走り続けた。すれ違う乳房の大きさも、気にせずに走った。
乳畳の細い裏道へ曲がると、道端に転がっていた乳石に躓いた。
膨らみかけた乳房を地面に擦り付け、乳首の先端に痛みが走る。
王子の目からは乳滝のように汁が吹き出し、顎を伝って地に呑ませるがままに落ちていった。
「ひっぐ……ひっぐ……チムゥ……チムゥ……」
鳴いても喚いても誰も助けに来やしない。
仰向けになり、天に輝く乳月の大きさに見蕩れていると、甘酸っぱい匂いが鼻を突いた。
それはどうやら、窓から乳灯を漏らしている、すぐそばの乳壁の中から漂ってきているようだった。
ω ω ω
胸元を赤くさせた乳民らが、薄暗く狭い店内で乳房を揺らしている。
バスティ王子は落ち着かない様子で隅の席に一谷で座り、豊乳瓶に入った乳をチビチビと飲んでいた。
路頭に迷った王子が、その甘い香りに誘われるようにして入ったこの店は、《
「乳はわちらの方が大きいな」
乳房の張りや艶、形の整い具合ではカルボ王国の方に分があるものの、大きさと柔らかさではプロティーン王国に分がありそうだ。
もっとも店内には、王子よりも小さな乳房を持つ者などいなかったのだが。
乳源観察していると、向かいの席に大そうな美乳の持ち主が座った。
「たしかにプロティーンには巨乳が多かった。特にバスティ乳王の巨乳っぷりといったら、オオチチノチチと見粉うばかりの神乳。それに加え、乳汁の濃厚さも天下一品、喉につかえてしまうほどだった。いやはや、もう一度呑みたい名乳だ」
薬乳糖の美乳瓶を両手に持ちながら乳を揺らしていたのは、他でもないオリゴ乳王であった。
彼乳は胸元をスッポリと覆い隠してしまうほどの大きな乳布を巻いていたため、周りの乳民は彼乳に見向きもしなかった。だが、百乳恋摩のバスティ王子の眼だけは誤魔化せない。乳布が描く曲線から、彼乳が相当の美乳の持ち主だと見破ったのだ。
王子がオリゴ乳王の名を口にしようとすると、彼乳の乳差し指が王子の谷間に挟まった。
「ちみのことを皆が探しておるぞ。フェリンとやらは乳眼になって国中を駆けずり回っておる」
「いい乳味よ。わちに隠乳事をした罰じゃ。お替わり!」
正乳なところ、王子は自分を見つけたのがオリゴ乳王だと知って、乳を落とした。
昔から隠れん乳をすれば、一番始めに自分を見つけてくれるのはチムと決まっていたからだ。
「ちみとチムは仲が良かったのだな」
「チムの乳房は乳心つく前から吸っていた。大きさこそ乳上やフェリンたちのものには及ばぬが、その乳汁の甘さは国でも一番のものじゃった。あれがもう呑めぬのかと思うと、これから先どうやって生きてゆけばよいものか……」
「ちみを見ていると、昔のわっちを思い出す。わっちも乳離れするときは、上の乳を流したものよ」
そう言うと乳王は、乳房の両脇にえくぼを作った。
「わちはチムを離したくない。乳離れなどして何になるというのじゃ!」
「乳渡りは乳離れ無くしては成り立たぬ。乳離れをして初めて、わっちらは乳王に成ってゆくのだよ」
バスティ王子がオリゴ乳王の乳房から目を離すと、視界の端に美乳の揺れを察知した。
「乳上、こんなところにおったのですかぁ」
幼いながらも豊かな乳房を持つ者が、乳王の膝元に座った。背丈は王子よりも小さかったが、その乳房は王子よりも一回りも大きく、乳果のように丸々として美しかった。
「わっちの倅だ」
オリゴ乳王の子供――すなわちオリゴ王子は、乳親の胸元をまさぐると、乳布の脇から出したその真っ赤な乳首に吸い付いた。
一谷の乳親が、我が子に乳を与えながら目を細め、子の胸を愛おしそうに揉んでいた。
「なんと!! カルボでは王子が乳王を直呑みしても許されるのか!?」
「おっぱっぱ。何を申すか。我が子に乳をやらん乳親など、この世にいるものか」
「わちの国では許されておらぬ! あぁ!! カルボに生まれていれば!!」
「なぁに。ちみも、いずれ分かるときが来る。乳は貰うよりも、与えるこのとの方が良いものだということにな」
「わちは呑むだけで結構!! はあ、そちが羨ましいのぉ。そうじゃ、乳王! わちにも一口お恵みくださらぬか!!」
「明日には授乳の儀ではないか。ちみには一口と言わず、この乳が萎むまで恵んでやるぞ? もちろん直呑みでな」
「それは
勢いよく王子が立ち上がった音で、客たちが振り返った。そしてようやく、カルボの乳王とプロティーンの王子の存在に気が付いた。
「ああ、真乳だ。喉を乾かせておきたまえ」
「乳意!!」
「通してくだされぇ、通してくだされぇ」
バスティ王子が勢いよく返事をした乳先、乳房を振り乱してチムが現れた。ここまで走り回ったのか、乳で息をしている。
「探しましたよぉ、王子ぃ」
「オリゴ王よ、わちはそちの乳を吸い尽くすぞ……その乳、ぺったんこにしてくれる!!」
一礼したチムに手を引かれ、王子は店を出た。
「プロティーン王国の倅は、とんだ乳狂いよのぉ」
オリゴ乳王は腕の中で我が子を揺らしながら、その胸元をほころばせた。
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