コラム6 乳離れの乳心分析

 乳源は幼児期に適切な量の乳汁を呑まずに育つと、成乳期に心が不安定になり、奇行や非行などに走るようになる。そのことを授乳心理学上、初めて唱えたのは乳心分析にゅうしんぶんせき家フロイティッツだった。


 のちの心理学実験でもこの事実は裏付けられている。発達段階にある乳房に、異なる乳伝子を含む多くの乳子が混乳されることにより、様々な情緒や思考が形成されるようになるのだ。まさに『乳は心なり』なのである。


 たとえば《暗黒の乳世》と呼ばれる断乳時代は、乳胸当たりの乳盗や削乳の割合が他の時代に比べて著しく高く、極めて乳安が悪かった。

 乳房の大きな乳源が迫害された《痴汝狩り》などは、まさに哺乳育児が宗教的に禁止された時代だからこそ生まれた、胸悪しき文化だろう。


 ポストティッツと呼ばれて久しい現代は、化学調味乳や源工甘味乳などといったインスタントミルクが流通している。

 けれど、乳源の身体の一部を交し合う乳呑み文化は、他者への思いやりが溢れる豊かな社会を形成する上で重要な働きを担っていた。


 乳汁を交わし合うのは乳親でなくとも、親戚乳でも、友乳ゆうちちでも、恋乳こいちちの乳でもかまわない。口伝えで交わすのが気恥ずかしければ間呑みでもかまわない。

 離乳時代の現代こそ、乳の温もりが求められているのではないか。

 

【参考文献】

『乳心分析入門』(チチムンド・フロイティッツ、訳:乳見照、新乳社)

『痴汝狩り』(メロンジーナ・ミルクハンター、訳:乳山呑子、豊満書房)

『なぜ、若者は乳離れしたのか』(乳谷乳漏、πHπ研乳所)

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