第21話タイムスリップ
今日は四月一日エイプリルフール。友達の家に遊びに来ていた俺は玄関の前でこんなことを言われた。
「実はうちのスリッパを履くとタイムスリップ出来るんだぜ」
友達は真剣な面持ちで訳のわからないことを言った。
俺はわざとエイプリルフールのネタに乗ってやることにした。
「へー。そりゃ、すげーな。それなら体験させてくれよ」
俺はエイプリルフールにしても、もっと現実味のある嘘をつけと心の中で思った。
「これだよ」
そう言って友達は俺の前にスリッパを差し出す。
俺は素直にそのスリッパを履いてフローリングを歩き出そうとした瞬間、見事にすっ転んだ。そして勢いよく二十センチほどの段差がある玄関に転げ落ちた。
「いてててて」
俺は後頭部を抑えた。
「おい大丈夫か。ほんとすまん。スリッパでスリップするようにスリッパの底に蝋を塗っておいたんだ。そしてどのくらいの時間で滑るかスマホのストップウォッチで計ろうとしたんだ。そしてこれはタイムスリッパと言って笑いを取ろうと企んだんだよ。まさか一瞬でこんなことになるとは思わなかった。ほんとにすまん」
友達は必死になって俺に誤った。
「ここはどこ? 俺は誰?」
「おい。おまえ、何言ってんだよ。ここは俺ん家で、お前は蝋を塗ったスリッパを履いてすっ転んだんだよ」
「ところでおまえ誰だ?」
「へっ? 俺だよ。俺、智也だよ」
「うん? 思い出したぞ。俺はタイムスリッパによってタイムスリップしたわけか。じゃーここは未来のお前ん家か?」
「何言ってんだよ。未来じゃなくて現代だよ」
「チッ、チッ、チッ。それは違うね。スリッパを履いてスリップしてから何分経ってるんだよ。あの時から確実に今は未来だろ」
「はぁー。そりゃ、そうだけど。それは屁理屈だろ」
「屁理屈ではない。事実だ。それに今日はエイプリルフールだ。俺の言っていることは嘘になるのか」
智也はしばらく腕組みをしたあとでこう言った。
「そう言われてみれば、お前の言っていることは正しいのかもしれない」
「わかってくれたか。おまえは世紀の発明を成し遂げたんだよ。おめでとう」
「いや、俺はただスリッパの底に蝋を塗っただけだぞ」
「タイムスリッパによってスリップする。転んだことにより時間が経過している見事にタイムスリップしているじゃないか」
俺は満面の笑みで智也の肩に手を置いた。彼は狐につままれたような顔をし、俺の言った言葉を反芻し意味を考えていた。
数日後、智也は「未来では俺は裸になっている」と言って突然服を脱ぎ出し、タイムストリップなるものを俺に披露した。
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