第24話他力本願
桜の名所である他力本願寺というお寺へ、桜を見に行った。それはもう見事な桜が咲いていて、しばらく満喫して歩いていると、本殿の前にこんな石碑を見つけた。その石碑にはこんな一文が書かれていた。
『信念を持ってする行いは他人に頼るべからず』
僕は逆説的だなと思ったが、これは逆説的よりもギャグ説的ではないかと思っていたところ、「どうしたそんな卑猥な顔をして」と声がしたので、声がした方を向くと、お坊さんがいつのまにか横に立っていた。
「誰も、卑猥な顔なんかしてませんよ。ただ、この寺の名前と石碑に書かれていることが真逆だなと思って考えていたんです」
「青年よ。他力本願とは仏教用語では、自らの修行によって悟りを得るのではなく、阿弥陀仏の本願に頼って成仏するという意味じゃ」
「えっ!」 僕は驚いた。そしてお坊さんが何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「よく聞け青年よ。ここでいう他力とは他は阿弥陀如来のことを示し、力とは本願力、つまりは、はたらきを意味するのじゃ。それに本願とは、あらゆる人々を仏に成らしめようとする願いのことであり、人間の欲望を満たすような願いのことではないのじゃ」
僕はへーと唸った。
「青年、まだまだ修行が足りぬな」
僕は心の中で修行僧じゃねーしと思った。
「ほほほほ」と笑うお坊さんに僕は尋ねた。
「もしかして、ここの住職ですか?」
「イカにもタコにも」
僕は痛い住職だと思いながら更に尋ねた。
「もしかしてこの石碑は他力本願のほんとうの意味を知ってもらいたくて刻んだのですか?」
「青年よ。これからも精進するように。ほほほほ」
そう言って住職は去って行った。
僕は迷える子羊のようにそこに佇み、近くにある教会の桜を見に行くことにした。
脚注:涼月さんのコメントで他力本願って意味が普段私たちの使っている意味とは全く違うと頂いたので、ウイキペディアによって調べ、加筆しました。
あと、他力本願寺という名前のお寺が、ああっ女神さまっに架空の寺院として登場するのもウイキペディアによって知りました。あと他力本願寺というロックバンドもあるそうです。
ウイキペディアさま、いつもお世話になっております。
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