第17話鏡とにらめっこ

 私は小さい頃、鏡とにらめっこしたことがある。

「にらめっこしましよ。笑うと負けよ。あっぷぷ」

 しかし鏡とのにらめっこは、なかなか決着がつかない。自分の変な顔を見て同時に吹き出してしまっているからだ。

 ある日、姉が私の行為を見て「ミサト。鏡の前で何変顔してるの? もしかして変顔の練習?」と聞いてきたので、私は「違うよ。お姉ちゃん。鏡とにらめっこしてるの」と答えた。

「アホなの。鏡と勝負したって決着つくわけないじゃない」と姉は呆れ顔でその場を去って行った。

 その次の日、私はぐっすり寝ている姉の顔に油性ペンでメガネを書き、チョビ髭を付け足した。

 起きてきて顔を洗おうとした姉はその姿を見てびっくり仰天し、怒り心頭で私に詰め寄ってきた。

「なんてことしてくれるの。これじゃー、学校にいけないじゃないの!」そうわめかれて、姉は私のことをぶった。

「もしかしたら鏡がお姉ちゃんの顔を見て吹き出すと思ってやったの。ごめんね」と、私は必死に泣きながら謝った。

「鏡が吹き出すわけないでしょう。こっちの頭から湯気が噴き出したわよ」

「お姉ちゃん。頭から湯気がふき出すの?」

「もう、例えよ。た・と・え。そんなことよりミサトが自分の顔でやればよかったじゃない」

「だって、そうしたら最初から鏡は私の顔を映すことになるでしょう。そしたら鏡は笑ってくれないかもしれないじゃん」

 それから、しばらく姉は口を聞いてくれなかった。

 あれから大人になった今、姉は合コンで私のことをネタに笑いをとっている。

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