第42話 四文字熟語をこじらせたら その五

「二人でいつも放課後何をしてるの?」

その日の放課後、そう切り出してきたのは、学級委員長の桃井桃華であった。彼女は背中の中程にも伸びた髪を華麗に掻き揚げた。

「放課後何をやっていようが俺たちの勝手だろ」

孝之がぶっきらぼうに答えた。

桃井桃華は獲物を狙う豹のような鋭い眼光でこっちを睨んだ。

孝之はその威風に圧倒され、喉を鳴らした。

「別に校則違反なんてしてないぞ」

慎吾が反論する。

「そう。それなら二人で何をコソコソ漫才みたいなことしてるの?」と桃華が聞くと

孝之は腕組みをしながた「盗み聞きはよくないぞ」と言った。

「自然と耳に入ってきたから気になって、ドアを少し開け様子を伺っていたのよ。実は私こう見えても、ってどう見える?」

「知るか」

「こう見えても、お笑いハンターなのよね」

「『お笑いハンター?』」

孝之と慎吾は一緒に声を上げ、ハモった。

「なんか、面白そうじゃん。私も混ぜてよ」

突然の申し込みに二人は目を見合わせた。

「ダメ〜?」

桃華は両手を組んで上目遣いにお願いのポーズをとった。

「べ、別にダメじゃないけど」

先ほどの態度を一変した孝之が答えた。

「ツッコミは意外と難しいんだからな」

そう言って慎吾は『コジラセノート』を桃華に見せた。

桃華はノートをパラパラめくり、視線を走らせる。

「何これ。ぶっ。『五里霧中』が『ゴリラ夢中』になっている」

そう言って目に涙を浮かべてゲラゲラ笑った。

二人はまた目を見合わせた。

「でも、一年中勃起はセクハラだからね」

「『はぁー?』」

また二人の声はハモった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

笑え! このやろー。じゃなくて、笑ってください。 永遠(とわ)ミツキ @riyouichi_y

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ