第41話 四文字熟語をこじらせたら その四

今日も放課後の教室の片隅で、孝之と慎吾は『コジラセノート』を見開き、いつものように孝之の書いたネタを慎吾が突っ込むとういうやり取りをしていた。


『花鳥風月』

『課長痛風』


「なんか風流な言葉が、痛い言葉に変わったな」

慎吾が素直な感想を述べた。

「今、その課長は痛風だから大好きだったビールが飲めないんだ。こんな辛いことはないぞ」

「課長も大変だな。日頃のストレスをウチに帰ってからの一杯に癒されていたのに、痛風なんてな。これに懲りて健康に気をつけなくちゃな」

「ああ。全くその通りだ。健康でなければ、家族を養えないからな」

ウンウンと頷いていた慎吾に隆之が突っ込む。

「ウンウンと納得していないで、”どこまで話を持って行ってるんだよ”って、突っ込むところだぞ。突っ込みがないと笑いにならないだろ」

そう孝之が言うと慎吾はこう言った。

慎吾は「ふむ」と言って腕組みをする仕草をすると、「なんでやねん!!」と急に突っ込んだ。

「『なんだやねん!!』ってこっちが言いたいわ。いったいどうしたんだよ急に」

「いやー。ただ言ってみたかっただけだ。やっぱ突っ込みは関西弁の方が破壊力あるな」

「まぁー。確かに。だが、今日はグダグダになったからこれで終わりにしよう。言い慣れない関西弁使っても面白くないぞ」

そう言って孝之は『コジラセノート』をカバンにしまい教室を出て行った。

「ふー。やれやれ。突っ込みも難しいなー」

そう独り言を吐く慎吾を教室のドアの隙間から覗いている視線があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る