第40話 四文字熟語をこじらせたら その三
「よっ。また例のノートにネタを書き込んでいるのか?」
慎吾は夢中になって何かをノートにメモしている孝之に言った。
「うん。まーね。ところで慎吾。このノートの名前考えないか?」
「ノート? ノートはノートでいいだろ」
慎吾は特に思入れがない物(ノート)であるので興味なさそうに答えた。
「なんかなー。うーん。ノートに名前があると愛着が沸くじゃん。例えば”例のノート”貸してより、何か名前で言った方がいいじゃん」
「うーん」
あまり興味のない慎吾は親友の熱意に考えるふりをした後、適当にこう言った。
「それなら、四文字熟女ってのはどうだ?」
「うーむ。なるほど。それは面白いな。加藤綾子って書いとこ。通称アヤポン」
「それ、うちのかーちゃんの名前じゃないか。それだけはやめてくれ‥‥。っていうか通称アヤポンってなんだよ」
「じゃー。このノートの名前なんてつけるかなー」
(アヤポンはスルーかよ)
孝之が腕を組んで考えていると、慎吾は何かが閃いたように、こう提案した。
「四文字熟語をこじらせたような語句だから『コジラセノート』でいいんじゃないか?」
「コジラセノート? ふーん。なるほどね。じゃー。このノートの名前は『コジラセノート』にするか」
慎吾の提案にノートの名前jはあっさり決まった。
それから三日後ぐらいして放課後のこと、孝之が「またネタを仕入れたから見てくれ」と、言ってきた。
慎吾はどれどれと編集者ばりに、『コジラセノート』を開いた。
そこにはこうネタが書かれていた。
『感慨無量』
『感謝無用』
「感謝無用って、誰に言ってんだよ」
慎吾は早速ツッコミを入れた。
「俺には感謝無用だからな」
胸をのけぞりながら孝之は「エッヘン』と言った。
「おまえに感謝したことなんて、一度もねーよ」
「まぁー。お互い小学校からの腐れ縁で、馴れ合っているから、お互い感謝の気持ちを感じることが鈍くなったんだろう」
「いや、ほんとはおまえには感謝する気持ちもないことはないのだが、この場合、ああやって突っ込んだほうがいいと思って」
慎吾のその言葉を聞いて孝之は頬を緩ませた。
『臥薪嘗胆』
『我慢精進』
「なんかそれらしい四文字熟語に変わちゃってるんですけど」
慎吾は感心した。
「結構上手いだろ」
孝之は腕組みしながらしたり顔をした。
「つまりこういうことかー」
慎吾も孝之に釣られ腕組みをして解説してみせた。
「何かを得るには我慢をし、精進をせねばならぬという諺ということか」
「そう。その通り」
孝之はさらに鼻高々にしたり顔で答えた。
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