第19話サンタ・ルチア
とあるクリスマスの日の出来事である。
サンタはその日、仕事の為にあるクリスマスパーティーに呼ばれていた。
「すみませんな。毎年来てくださって。子供達もたいそう喜んでいました。さっさ、どうぞ一杯」
そう言って主催者側の責任者がワインをグラスに注ぐ。
「すみません。毎年呼んでもらって」
サンタは白い髭をなぜながらワインを口にする。
「そう言えば、お孫さんが生まれたそうで、おめでとうございます」
「ええ。ありがとうございます」
「初孫だそうで、さぞ可愛い事でしょうな」
「はい。目に入れても痛くないとはよく言ったものです」
サンタはことさら気分がよくなりワインを飲み続けた。
パーティーの終盤、サンタは主催者の責任者にこう申し出た。
「今日は気分がいい。私が一曲、歌を披露しましよう。これでも昔は合唱部に所属していたんですよ」
「そうですか。ではよろしくお願いします」
サンタは壇上に立ちマイクを持った。
「えー。パーティーも終わりに近づいてきました。ここで私が一曲、歌を披露したいと思います」
会場から拍手が沸き起こった。
サンタは一呼吸置いてサンタ・ルチアを歌い始めた。が、そのとき悲劇が起きた。
サンタは酔いすぎて呂律が回らなかった。そしてサビに差し掛かったところで思いっきり腹に力を込めたものだから、『サンタ〜ル・ゲロゲロ』と、そのままゲロを吐いてしまっのだ。
会場にいた人たちは全員酔いが覚め、悲惨な現状をただ黙って見ているだけだった。
まさにサンタにとって惨憺たるサンタ・ルチアを披露した事となった。
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