第16話 不思議は……お前だ!

「次はここだよ」


 そう言って桜が立ち止ったのは美術室だった。

 4人は中に入ってみる。冬夜はあたりを見回すが、特に何かあるようでもなかった。


(今回ははずれか? いや、桜のことだ。また何か変なものでも見つけたのかもしれん)


 冬夜は警戒を強める。


「これまた定番の美術室か。七不思議なら石膏像が動き出すっていうのだが、そうじゃないんだよな」


 和人は石膏像をポンポンと叩きながら桜に尋ねた。


「当たり前じゃない。その石膏像はただの石膏像。動いたっていうのはたまたま生徒が運んでいたところを見間違えたんだと思うよ。夜遅くまで残って描いている生徒がいるみたい」

「それでは、裏七不思議は何なのですか」

「ふふん。それはね、ティリアちゃん。そこの棚にある右から3番目、上から2番目の引き出しだよ」


 桜はティリアに聞かれてうれしそうに、そして得意げに答えた。

 4人はその問題の棚の引き出しに近づく。


(……これは)


 冬夜はその引出しに近づきようやく何かを感じ取る。だが、それが何なのかは冬夜ですらわからなかった。


「この引き出しはね。鍵もついていないのに、何をしても絶対に開かないんだよ。私も色々と試したけどまったく開かなかったの」


 そう言って桜は引出しに手をかけ、力いっぱい引っ張るが、開く気配はなかった。

 冬夜も引っ張ってみるが、やはり開かない。


(これは何らかの封印が施されているな。神力を使えば容易に開くだろうが、無暗に封印を解く必要はないか)


「何か突っかかっているんだろう。それで、桜。次は?」


 封印を解かない限りは安全だと判断した冬夜は桜に尋ねた。

 ティリアも、冬夜の判断に任せるのか特に何も言わない。


「次は理科室だよ。ここはもういいの?」

「ああ、不思議でもなんでもないな。次に行くぞ」

「なんだか冬夜、やる気だね。いつもならもういいだろって切り捨てるのに」

「……別に。桜が自信満々に言っている割には大したことはないと思ってな」

「……そう」


 桜は手の甲を額に当てた。桜が何かを考え込む時の癖だ。数瞬の間そうしていると、そのままクルリと踵を翻し理科室に足を進めた。


「七不思議って、何かが勝手に動くの多いよな。石像とか、絵とか、次に向かってる理科室の骸骨とか」


 突然和人がそのようなことを言い出した。


「まあ、誰だって突然動くはずのない物が動いたら怖いだろ」

「そうかな。私は動いてくれるとものすごくうれしいんだけど」

「桜、お前は感覚がおかしい。普通は冬夜の言う通り恐怖を感じるはずだぞ。そんでもって逃げだすわ」


 和人は呆れたように言う。


「さ、もう着いたよ」


 教室の扉の上には先ほどの音楽室や美術室と同様、理科室と書かれた木の札がある。


「うちの学校は狭くて助かる。移動教室の時に楽だ」

「冬夜はもっと活動的になるべきだと思うぞ。お前はいつも寝てばっかだからな」


 だるそうに言う冬夜を見てティリアがくすりと笑った。

 中に入ると、実験をするために作られた広い机がいくつか置かれており、入って左側にはビーカーやフラスコの置かれた棚がある。


「先に言っておくけどここの理科室に置いてある骸骨は何ともないよ。校舎が古すぎて隙間風が入ってくるんだけどそれで揺れているだけ」

「あー、確かに穴が開いているからな。けど、確かこないだ先生が何かものを詰めて塞いでたぞ」


 桜の言葉に、和人は思い出したように言った。和人が指差す方を見てみれば、そこには園芸用の土袋が壁際に置かれている。

 隙間風を鬱陶しく思った教師が園芸用の土袋で穴を塞いだのだのだろう。


「ここの不思議はさっきのギターと似ているんだけどね。あの棚の右側にあるフラスコが時々なくなるんだよ」


 というので、冬夜は戸棚を開けてみた。すると、


「……」

「……」


 手足の生えた今にも動き出しそうなフラスコと、ない目が合ったような気がした。

 冬夜はすぐさま扉を閉める。静かな教室にバシンと言う音が響いた。


「どうしたの? 冬夜」

「いや、なんでもない。虫がいたからついな」


 そう言って二度目に扉を開けたときにはフラスコがきちんと鎮座していた。手足が生えているということもない。その様子に冬夜はほっとする。だが、冬夜は内心焦っていた。


(なぜこんなにも桜はあやかしの類を見つけるのがうまいんだ?)


「冬夜、何か隠してない?」

「いや、ないが」

「本当に? ……やっぱり冬夜は何考えてるかわからないな~。他の人ならわかるのに」


 昼間のティリアの考えていることを見通す目で冬夜のことを見る桜だったが、冬夜からは一切何を考えているか分からなかったようだ。


 その後もティリアに教室の場所を教えつつ、裏七不思議のある教室や物置を回り続けた四人だったが、幸い桜が妖怪などの決定的瞬間を見つけることはなかった。だが、回った全ての場所で妖怪の類や封印の類、果ては冬夜でさえ何なのかわからない怪しい物が発見されたことは不幸と言っていいのかもしれない。

 どうしてこれほど桜がこういったものを見つけるのが得意なのか冬夜には理解できなかった。だが、仮に桜に妖怪や封印を見つけられる力があるのだとすれば、それはかなり危うい物だと言えるだろう。全ての妖怪や封印が安全と言える根拠などどこにもないのだから。


「ここで6つ目。残り一つか」


 和人は今まで回った不思議の数を数えると、ちょうど6つ目だった。残りは一つ。しかし、もうすべての教室は回ってしまっていた。


「最後の一つはこの校舎にはないの。この校舎の隣にある使われていない物置小屋にあるんだよ」

「そうか。だが、当初の目的だったティリアの教室案内は終わったからな」


 冬夜は視聴覚室の扉を閉めながら言った。扉のガラスから視聴覚室の中にある時計を覗き込むと、案内を始めてから1時間は経過していた。


「そろそろ家に帰るか」

「えー、冬夜帰っちゃうの? 最後の不思議は?」

「もう時間も結構経ったしな。俺は帰ろうと思うんだが、お前らはどうする?」


 冬夜が問いかけると、


「私は最後も見てほしいな」

「俺は部活もないしどっちでも」

「私はお兄様についていきます」


 上から桜、和人、ティリアが言った。


「じゃあ、多数決で帰宅だな」


 そういうと冬夜はさっさと帰ろうと歩きだす。


「どうしてっ! 2:2でしょ! もう一度考え直してよ」

「なぜそうなる。2:1で投票なしが1だろ」

「毬栗は私の票に入るの!」

「入るか」


 冬夜と桜は言い合いをしながら玄関へと向かった。その二人の後を和人とティリアの二人は黙ってついて行った。


「もう最後の一つじゃない。ねえティリアちゃんもみたいよね、ね!」

「私は別に…」

「そんなこと言わずにさ~」


 4人は外に出ると、野球部の掛け声が聞こえてきた。どうやら練習が始まっていたようだ。中にいたためか、校舎内には聞こえてきていなかった。


 冬夜たちが校門を出ようとした瞬間、どこかでガラスが破壊する音が鳴り響いた。どうやら野球のボールがどこかにぶつかったようだ。


「どこか割れたな。どこだ?」


 冬夜が振り向き尋ねる。


「俺が見ていた。校舎隣の物置小屋だな」


 和人が指差した先では、野球部員が物置小屋の前でおどおどとしているところだった。


「まあ、俺らは関係ないか。帰る――」


 帰るぞ、と言おうとした瞬間、冬夜はその物置小屋から嫌な気配が膨れ上がってくるのを感じた。


(これは!)


 冬夜は再度物置の方を見る。すると、突然物置小屋が崩れた。周囲に崩れる音が広がり、外にいる誰もがそちらを凝視する。


「なに、不思議⁉ 突然物置小屋が崩れたんだけど」


 桜は目を輝かせながら言った。桜はこんな時でも桜なようだ。

 物置小屋の前でおどおどしていた野球部員は、間一髪で崩落に巻き込まれなかったようで、小屋の前で尻餅をついている。


「お兄様、あれは」

「ああ、面倒くさい物が出てきたもんだ」


 どうやら、桜の目には何も見えていないようだが、冬夜と和人、ティリアの三人にはまったく別の光景を見ていた。


「冬夜、なんだあのどす黒いの」


 和人は特に慌てることなく冬夜に尋ねる。どうやらドラゴンを見たためか、驚きに耐性が付いたようだ。

 大きさは小屋一つ分ほどもあるその黒い物体は、丸くなったり部分的にとがったりと形が定まっていない。スライムのようなものだろうか。


「あれは…おっと、そのまえに」


 冬夜は神力を使い、人払いをする。すると、崩壊した物置小屋を見ていた野球部は興味が薄れたように練習を再開した。


「さすがです、お兄様。ですが…」

「ああ、一人飲まれたな」


 視界の先では、野球部員が一名、謎のどす黒い不定型の何かに飲まれてしまった。


「おいっ、冬夜! 大丈夫なのか? あのひょろっとした野球部員は」

「問題ない。すぐに救出する。それと、あれが何なのかだったな。あれはまあ、簡単に言うと妖怪だな」

「妖怪? あの黒いのがか?」

「ああ、あんな不定型なものでも妖怪という。よく分からないが、たぶんあの物置小屋の中の何かに封印されていたんだが、たまたま野球のボールが当たって壊れたんだろ」

「重箱みたいな箱があったからきっとそれだね。私には何が何だか見えないけど、これで一つ解明できたよ。やっぱり妖怪っていたんだね」

「ああ、そうかよかったな、桜。……おい、なんでお前がここにいる?」


 冬夜が振り返るとそこには桜がいた。先ほどの人払いにはしっかりと桜にもかけたはずだ。にも拘らず、桜はなぜか同じように壊れた物置小屋を見ていた。


「なんのこと? それよりも冬夜、やっぱり私に隠してたんだね。そうだと思ってたよ。冬夜の正体は何なのかな? 冬夜が何かしたと思ったらみんな物置小屋から興味を失っちゃうんだもん。……実は陰陽師の類だったり?」

「お前には人払いが効かないのか? そんな人間いないと思っていたんだが。……お前本当に人間か?」

「どこからどう見ても人間だよ。そんなことより冬夜。私にも何が起きているのか説明して。野球部員はどこに行ったの? 私だって知りたい!」


 どうやら桜の視点では、野球部員の姿が消えたらしい。


「落ち着け。お前のことをどうするかは後で決めるとして、まずはあれをどうにかしないとな」


 黒い妖怪は小屋の残骸を巻き込みながら冬夜たちの方へと向かってきていた。

 とりあえず、しつこい桜を引きはがす。


「ティリア、よく神力の使い方を見ていろよ。どう流れているのかをな」

「はい、お兄様」


 冬夜は黒い妖怪へと駆ける。


「まずは打撃!」


 冬夜はその黒い妖怪に向けて掌底を打ち出す。もちろんただの掌底ではない。神力を乗せた一撃だ。

 ティリアは、冬夜が体に神力をなめらかに纏う様子を目で捉えた。


「――綺麗」


 思わず、ティリアは呟いた。


 神力の扱いというものは非常に難しい。だが、冬夜はそれを自由自在に、それこそ自分の手足のように使っている。

 神でさえここまでの領域に達しているか分からない。少なくとも、ティリアの父、ルースにはできない芸当だ。

 ルースに冬夜と同じ身体能力の強化ができるかと言われればできないことはない。

 実際に、冬夜とルースが迷いの森へティリアを探しに行った時、ルースは身体強化を使っていた。

 だが、冬夜に比べ神力に無駄がある。神力は有限だ。休めば回復するが、それでも無駄がない方が減りも少ない。

 では冬夜はどうなのか。冬夜は一切の無駄がないと言える。

 冬夜の神力を扱う能力に関しては神を越えていると言っても過言ではないのだ。


「*******」


 黒い妖怪が、苦しむような声を上げる。だが、何を言っているのかよく聞き取れない。


「大した妖怪じゃないな。昔戦ったのはこんなもんじゃなかった、ぞ!」


 次に右側へと素早く回り込むと、回し蹴りを食らわせる。その大きな黒い妖怪の体が10メートルほど吹き飛んだ。


「悪いが、その人間は返してもらうぞ」


 冬夜は黒い妖怪の体に腕を差し込むと、中から野球部員を引っ張り出した。


「よし、ただ気絶してるだけだな。……和人、こいつを頼む」


 野球部員を担いで和人のいるところまで運び、和人に任せる。


「それで、あれはどうするんだ?」

「あれは害しかなさそうだからな。ここで消しておく」

「そうか、まあ、冬夜なら心配ないと思うが、一応気を付けてな」

「分かっている。油断はしないさ」


 冬夜は再び黒い妖怪へと駆けた。だが、妖怪も冬夜のことを敵と判断したのか、体を細く伸ばし冬夜の体を貫こうとした。細く伸ばされた体が地面に深々と刺さっているところを見るに、どうやら黒い妖怪は体を部分的に硬く強化できるらしい。


「遅いな」


 右へ左へ空中へと、全ての針を避ける。だが、空中にいる冬夜に向かって一本の棘が伸ばされた。


「危ない!」


 思わずティリアは叫んだ。普通であれば冬夜が貫かれる未来しか見えないだろう。だが、そんな二人に和人は自信を持って言った。


「大丈夫だ、ティリアちゃん。冬夜はあんなもんじゃない」


 そんな和人の声が聞こえたのか…冬夜はにやりと笑うと、伸びてきた棘を手でつかみ、体をひねって棘の上を走ると、黒い妖怪の体へと近づいた。

 そして、黒い妖怪の体に手を添えた。


「散れ」


 神力を流し込むと、黒い妖怪は霧散した。影も形も残っていない。


「はぁ、まさかこんなことになるとはな」


 冬夜は深い溜息を吐くと、3人のもとへとゆっくりと戻っていった。


「それで、お兄様。この人はどうするのですか」


 一頻りティリアは冬夜を褒めた後、ティリアは言った。

 見れば、何やらキラキラとした目で冬夜のことを見る桜の姿があった。その目で見つめられ、冬夜は気分が悪くなる。少し動物園の動物たちの気持ちが分かった気がした。

 冬夜は一つ大きなため息を吐くと言った。


「桜、悪いがお前の記憶を消させてもらう。このことがばれると困るからな」

「……それは困るね。せっかく不思議に迫れたんだよ。墓場まで持っていくから見逃して!」


 冬夜なら記憶を消すことができると察したのだろう。両手をパチンと合わせて桜は懇願した。

 だが、冬夜は首を左右に振る。


「悪いな。だが、これは友人としての忠告だ。もう不思議を追いかけないほうがいい。今回みたいに危険があるかもしれないからな。……まあ、今言っても意味はないか」


 そういうと、冬夜は桜の額に手を当てた。ぽうっと冬夜の手が光る。そして、手を放すと、


「あれ、みんな。どうしたの? さっさと帰ろうよ」


 そう言って桜は校門の方へと駆けて行った。


「何度やってもいい気分じゃないな。記憶の消去なんて」

「……大丈夫ですか? お兄様」

「ああ、大丈夫だ」


 辛そうな顔をする冬夜に、ティリアは声をかけた。しかし、今のティリアに冬夜の心の負担を軽減することはできなかった。冬夜は小さな声でティリアに「ありがとう」と呟くと、ティリアの頭を数回撫でた。

 冬夜たちは野球部員を保健室に連れて行ったあと帰路についた。ちなみに、物置小屋は古さのあまり柱が腐って崩れたことになっている。ずいぶん古い学校だ。それで理解してもらえた。


「みんな、学校の不思議はどうだった?」


 桜は振り返り、後ろ向きに歩きながら後ろで両手を組んで冬夜達に尋ねた。


「桜、不思議とやらをもう追いかけないほうがいいぞ。これは友人としての忠告だ」


 冬夜は再度桜に忠告した。すると、桜はニコリと笑みを浮かべる。どこか含みのあるような笑みだ。

 冬夜はその笑みに疑問を覚えるも、次の瞬間にはいつもの桜に戻っていたため、見間違いだったのだと納得する。


「どうして?」

「不思議を追いかけて事故にでもあったら危険だからだ。実際に今日は裏七不思議の最後のひとつがある物置小屋に近づかなかったからよかったものの、中にいたら崩落に巻き込まれていただろう。だから、もう不思議を追いかけるのはやめておけ」


 冬夜の言葉を聞くと、冬夜達に背を向ける。そして言った。


「私はね、冬夜。昔、死にかけたことがあるの」


 その言葉に、冬夜は眉をピクリと動かし、和人は驚きの表情を見せ、ティリアは複雑そうな顔をした。恐らくティリアは先日死にかけたばかりの自分と桜を重ねているのだろう。

 そして桜は言葉を続ける。


「小さい頃にね、雪がたくさん積もった日に私は一人川岸を歩いていたの。でも足を滑らせて川に落ちちゃったんだ。しかも朝早かったから近くに誰もにいなくてね。足も届かないし、水は冷たいしで本当に死ぬところだったんだ。

 苦しくて、寒くて、だんだん手足の感覚もなくなって。もう死んじゃうんだなーって思っていた時に、突然私の周りの水が急に無くなったの」

「急に?」

「うん。あんなにあった川の水が急にだよ。それで、ぼんやりとした頭で堤防の方を見たら、そこには着物を着た人間離れしているほど綺麗な女性が私の方に手を向けて立っていたの。本当に綺麗だったなあ」

「それで、その人に助けられたのか?」

「そうなんだと思う。後のことはあんまり覚えてないんだ。気が付いたら、家のベットので寝ていたの。家族は夢だって言うけれどあれは夢なんかじゃない。絶対に私はこの目で見たんだ。常識では考えられない不思議なものを」


 そう言いながら桜は目を輝かせる。そして桜はもう一度冬夜達の方を振り返り言った。


「だからね、冬夜。私はあの人にもう一度会ってお礼を言うために、不思議を追いかけるよ。絶対にあの人に会うの。会って、ありがとうございました、って言いたいんだ」


 冬夜は決意のこもった目で見つめられる。数秒見つめ合ったが、冬夜が根負けした。

 大きなため息を吐くと、冬夜は言った。


「分かった。なら何も言わない。だがこれだけは友人として言わせてもらう。絶対に無茶だけはするなよ。それと、何かあったら俺を頼ってくれ。絶対に何とかしてやるから」

「……ありがとう。冬夜」


 そう言って桜は笑った。その笑顔は美しく、とても輝いて見えた。


「まあ、不思議探しは私の趣味っていうのもあるんだけどね」


 桜は舌をぺろりと出しながら言った。


「台無しだよ全部」


 冬夜は額に青筋を浮かべる。

 加えて桜は腹を抱えて笑った後、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


「やっぱり冬夜はすごいよ。……いろいろと」


 桜はやはり含みのある笑みを浮かべるのだった。

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