幻想小説と散文詩の間を行き来しつつ、やはりこれは小説。表現されている風景は極めて明瞭。ただその奥行は曖昧としている。光とそれを隠す霧のような厚みと湿気を感じる物語。文字の量は少ないが、その読破時間は長め。それは必ずしもスクロールを求めるフィラーのせいばかりではない。全体に読み飛ばしにくい薄闇めいた流れになっている。線形の文章に立体や空気感までを織り込んだ文章に特有の雰囲気。実に夜めいた湿気と肌寒さを感じる作品。
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