Arashino Yoruno Shounen

 ここらの国では珍しく、電力で動いている。

そんな静かな列車が、滑り込んでくる。


 先頭に機関車、後ろには客車。

昔、鉄道が出来たころからのスタイル。

らしい。


 私は、初めて列車に乗る。

しかし。

ひどく気に入った。

ゆり椅子のような心地よい揺れ。

永遠に続く。


少年は、、、どうやらあまり耐性がないようだ。

青ざめた顔をこちらに時折向けてくる。


旅を長く。

列車はなるべく遅いものにしたはずだ。

しかし、これでこんなとは。


変わり映えしない、森林を横目に。

電柱を10ほど通り過ぎると、薪が割れるような音が。

スパーク


 スパークと車窓だけでは、飽きがくる。

私は、ぐったりの少年を席に残し、連結部近くへ。


 テラスのようになっているそこは、風が吹き荒れていた。

私は、コートの前を無意味に押さえる。


コキン

連結器が鳴る。

心地の良い揺れに、耳へのご褒美。

いつしか風も弱まり、準備が完了。

私は、乗降用の段に座る。

 

いつしか、頭は膝を抱えた腕へと、落下していく。


 第一声は、車掌だった。

「ちょっと失礼」

上機嫌なのか、弾んでいた。

ふと、頭を上げる。


ホーム

 人々が別れを告げ、そして再会を祝う。


少年を引きずる。


寝床を通り過ぎ、段を降りる。


 祝え少年。

第一の街。

長旅の始まり。


 列車の後部の紅を見送る。

 

 青が抜けていくのを待つ。

少年は、大分元気をと取り戻した。ようだ。


 若者が抱き合う前を、老人が涙をためて再会する前を。

私は通る。


 金貨を銅貨にばらし、改札を抜ける。

基本的に、旅先は2日滞在が最も良い。


 私は、荷物、もとい少年を放置する為に、宿をさがそうとした。

しただけだった。


 何のあてもない、ただの旅先はおやつのように、甘くはなかった。

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