Arashino Yoruno Shounen

 途中、操車場の脇を通った。

慌ただしく。

機関車も、人も。

動き回っている。


 誇張しすぎかもしれないが、世界を示しているようだ。

慌ただしく、自分の事優先。

たまにはそこから抜け出してもいいのでは。

依然、操車場は慌ただしい。


 ガタガタゴト

車両が不自然に揺れる。

窓枠を上げ、首を出す。

下を見ると、転轍機が後ろへ流れていった。


不意に車両が減速し、私はよろけた。

向かいに座っている少年に突っ込みそうになった。

外に首を出しながら。


すぐに駅のホームが見えてきた。

見えてきたのだが、、、だが。


蔓が駅舎を覆いつくして。

木製のベンチは腐り落ちて。

ホームも石畳が所々くぼんでいる。

表面は苔むしている。


 廃止になったのだろう。

しかし、私の考えとは逆に,列車は速度を落とし続け停車する。


そして。

カッカッ

列車のタラップを降りる足音が。


茶色の四角いトランクを持った男。

その頭には、白いシルクハットが。

紳士の例のような男が。


躊躇いもなく、ぼろ駅舎へ歩いていく。


スゥーン

と、機関車が唸り、発車する。


 手帳に私は「古い謎の男と駅」

と、下の行に書く。


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