私は少年と
あんなに恐ろしい話だったなんて。
予想していなかった。
じゃあ、ね。
始めさせていただこうか。
と、ご老人は、断りを入れてから。
あれは、たしか儂が十代の頃。
だから70年くらい前か。
そのくらいの頃の事じゃ。
儂は、機関車の機関助手だったんじゃ。
だったんじゃ。
しかしな。
あれ、のせいで儂は、機関助手をやめたんじゃ。
あれは1つの事故じゃったな。
ここの路線では、事故は頻発していたんじゃがな。
あれは。
慣れていても、恐ろしかった。
冬の日。
私は、いつもと同じように機関士の手伝いをしていた。
するとな、突然機関士が叫んだんじゃ。
「ブレーキ用圧縮空気を開放しろっ!今すぐだ」
私は言われたようにしてブレーキ用空気弁を開放したんじゃ。
その瞬間。
ドグシャ、ベキ、ゴギャ
と、不自然な音が聞こえたんじゃ。
機関士は、
「間に合わなかったか...」
肩を落とし、停止した機関車から降りたんじゃ。
どうせ動物だろ。食べれるかな?
とか、軽い事を言いながらな。
しかし。
飛んで帰ってきたんじゃ。
その時は。
顔を真っ青にしてな。
「人だった。機関室に乗せるんだ。儀式をするんだ。」
私は、仲間の機関助手から儀式の事は聞いていた。
人を轢いてしまったら、機関士、機関助手で死者を弔う。
その遺体は、ボイラーの中で火葬する、というものじゃ。
私は、吐き気を抑えて儀式、をした。
終わった頃。
客が数人降りてきていて、儂たちの所へ来たんじゃ。
何故、長時間停止しているのか、とな。
儂はとっさに、
「機関士が腹を壊しまして。それで少し。」
と弁明した。
あ、そうか。
お大事にな。
など。
ばれずに良かった。
そう思いつつ、機関士は機関車を発車させたんじゃ。
儂は、暇だったんじゃ。
だから、さっきの現場でも見ておこう、と考えたんじゃ。
それが、間違いだった。
発車してすぐ、紅に染まった地面が見えた。
しかし、驚いたのはそれではないんじゃ。
散らばった肉片をほおばる人がいたんじゃ。
儂は、吐き気を堪えきれなかった。
それ以来、何度か同じような噂を何度か聞いた。
どうじゃ?
怖かっただろう。
ご老人が聞いてくるが、私は答えられない。
私は、この路線にまた来ることはしない。
と、強く心に決めたのだった。
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