Arashino Yoruno Shounen

 石畳の道を見る。


少年は、いなくなっていた。



 シュワァ

シュワァシュワァ


 ふと下を見る。


石畳に積もった、木の葉が溶ける。

蟻に降りかかり、蟻もろとも溶かされる。


 「強酸の雨」

すっかり忘れていた。


杖は、家だし。

このままだと、私は液体になり川へ注がれてしまうかもしれない。


 私は、小走りになる。


 溶けかかったドアノブをひねる。


 春の日向のような温かさ。

ゆり椅子に座る。

床を蹴る。


私の瞼は重力に逆らえなくなってしまった。


 

 パチっ

 パチっ

 暖炉の薪は、灰へと変化していた。


 かすかに床を照らす太陽。

木々の葉の影が引き延ばされる。


 もう昼頃か。

嵐はやんでいた。


もう取り換え時か。

ドアノブを回す。


 さわさわ、と森の合唱が。


強酸で薪は、森に吸収されたようだ。

跡形もなくなっている。


 凍死するのは嫌だ。

暖炉の燃料を、森から拝借しよう。



 

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