Arashino Yoruno Shounen

 フシュ、プシューッ。

機関車は盛大に蒸気をまき散らす。

私と少年は白くなった視界に驚く。


 蒸気が退散していくと、顔には水滴が。

産毛という産毛に水滴が。

私は、フルフルと頭を振る。

少年もそうした。


近くに座っていた老婦人が、こちらを見る。

そして、

「同じ動きして...可愛らしいわね。」

と。

そんなつもりじゃないのだ。

しかし、頬が言う事を聞かない。

どんどん紅に染まっていく。

ダメだ。


 私は、照れ隠しにデッキへ。

いつの間にか走り出していた列車は、かなりのスピードだった。

沿線の家、畑、城が飛んでいく。

風は紅の丘を冷やす。

デッキにいれば心地よい風も、手を出せば暴風になる。


冷えてきた頃。

私は、席に戻る。

備え付けのテーブルに置きものの長い影が映る。

差し込んでくる夕日は相変わらずに、オレンジのまま。


私は、退屈しかけていた。

何故か。

駅につかないから。


周りの乗客は皆、眠っていたり。

しかし、私はもう十分に寝ている。

目がガンガンにさえている。


私は、列車を探検してみることにした。

長く乗るのだろうから、知っておいて損はないだろう。


 ギィ、ガチャ

隣の車両に移ると...

そこにはたくさんの人が。

何をしているのか。


近くに寄ってみると、それは分かった。



 私は、時間がたつのも忘れて熱中していた。

「今、何時ですか?」

「ええっとね、10時頃かな」

これはいけない。

こんなに集中していたなんて。


私は満足して帰った。

相変わらず、日が差し込んでいる。


 どうやら夜、がない場所のようだ。

そんなところまできてしまっているのか。

車窓はすっかり雪模様に代わってしまっている。

これは、苦労する予感...

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