Arashino Yoruno Shounen

 それは、路地の裏。

見過ごしてしまいそうな、店だった。


 私は、数週間ぶり、にそのノブをひねる。

途端。

「あんた誰だい」

野太いが、女性の声とわかる声が、飛んでくる。


「私です、森の奥の」

そう、私が告げると

「ああ、いらっしゃい」

店の奥から、店主が出てくる。


 「今日は、何の用かしら」

「食材が足りなくなったので」

ああ、とだけ店主は言うと、ㇷラリと消えてしまった。


 カランカラン

入り口のベルが、来客を告げる。


「あんた誰だい」

私の時と、全く変わらない。


「僕ですよ、角の」

少し待ってねー。

店主は、言う。


 ドカドカ

足音が近くなる。

私は、テーブルに伏せていた顔を上げる。


 木の箱に、食料が、詰め込まれていた。

「これで、魔術の方は、大丈夫なはずだがね」

どうだ、と言わんばかりに言われる。


しかし

私は、思う。

少年は、魔術を必要とするのか?


 私の今の食事は、この店主に、任せっきりになっている。

そこには、魔術が深く関係しているから。


 要するに、食事で魔力を補っている訳だ。


 魔術に関係していない者が、魔力を補充する。

すると、本人が自覚しないうちに、魔力が発動してしまう。

私は、生活の中で、使っているのだからよいのだが。


 少年は、そういう事は、知っているのだろうか。


 今更、店主に、「変えてくれ」と頼めるほどの気はない。


私は

「ありがとう」

と告げ、疑問を抱えつつ、帰路についた。


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