衝撃の事実

「気をつけろ乃々のの! こいつの手に触れると砂になっちまうぞ!」


「分かってる!!」


 敵の手に触れないように気をつけながら戦う乃々のの勇助ゆうすけ


 絶対に触れてはいけない手。それを意識するとやはり戦いにくい2人。なかなか攻撃に転じることができない。


 遠距離攻撃が可能なら簡単なのだろうが、キーメイスとノガタナはどちらも至近距離専用武器だ。


「これじゃあ埒が明かないな……」


「いっそ武器を投げつけてみる? 必殺技のエネルギー溜めて」


乃々のの……」


「冗談よ、本気にしないで」


「いいじゃん、採用!!」


「え、マジ? 本当にやる気なの?」


「ほら。同時に押して投げるぞ!」


「う、うん……」


 勇助ゆうすけに急かされて、青いボタンを押そうとする乃々のの



 その時だった。



 バイクだ。二輪車が爆音を発しながらこっちに向かってきた。


 その光景にデジャヴを感じる勇助ゆうすけ

 だが、今回のライダーは十文字じゅうもんじではない。


 バイクの主がヘルメットを脱ぐ。ライダーの正体は、佐々木仁ささきじんだった。


 じんは颯爽とバイクから降りる。


佐々木ささきっ!」


じんさん!」


 じんの登場に喜ぶ勇助ゆうすけ乃々のの


 彼の『止』があればかん文字化もじばけを楽に倒せる、そう2人は考えた。


 だがじんの殺意は文字化もじばけではなく、ある人物へと向けられていた。


佐々木ささきくん! 君も戦ってくれる気になったか!」


 十文字じゅうもんじは激しく喜ぶ。もちろん演技だ。


 だがその演技は、真実を知っているじんにとっては茶番ですらなかった。


「猿芝居はやめろ。草垣くさがきから全部聞いた」


 草垣くさがきが目覚めたことを聞くと、十文字じゅうもんじの目つきが変わった。


「そうか、目覚めたのか。それは残念だ」


 クククと不気味に笑う十文字じゅうもんじ


「どういうこと?」


「???」


 いまいち状況が読み取れない勇助ゆうすけ乃々のの


 そんな彼らに、じんは真実を話した。十文字平じゅうもんじたいらが黒幕であることを話した。


「マジかよ」


「ひ、酷い……」


 勇助ゆうすけ乃々ののは冷たい目で十文字じゅうもんじを睨む。


「おやおや、全部バレてしまったか。それじゃあ仕方ない」


 十文字じゅうもんじはあのドライバーを、新型の文字もじるドライバーを取り出す。


「変身」


――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、モジックTIME!――


 金色のモジシャンに変身する十文字じゅうもんじ


「ふん。それが噂の新型ドライバーってわけか」


「これからはゴルドモジシャンと呼びたまえ。……さて、あまりスマートではないが、君達3人には消えてもらおうか」


「消えてたまるかよ。……変身」


 ――START WORDING――


 じんもプロトドライバーで変身、さらにイヅチを呼び出す。


「さあ、楽しいゲームの始まりだ!!」


 十文字じゅうもんじじんの戦いが始まる。勇助ゆうすけ乃々のの、そしてかんだった文字化もじばけもそれに加わる。


 3対2、数だけなら勇助ゆうすけ乃々ののじんの方が有利に見える。


 だが2のうちの1人、十文字平じゅうもんじたいらの使っているドライバーは新型。


 その性能は従来の4倍……つまり乃々のの達普通のモジシャン4人分の力がある。

 能力で見れば、3対5なのだ。


「でりゃあああ!!」


 それでも彼らは負けるわけにはいかない。


 乃々ののは両刀で、十文字じゅうもんじに攻撃する。


 それを十文字じゅうもんじは両手で受け止める。金色モジシャンの防御力も通常の4倍、乃々ののの渾身の攻撃も軽くあしらわれてしまう。


「そうだ、全部暴露されてしまったついでだ。君に面白いことを教えてあげよう、佐倉乃々さくらののくん」


「……今更何を言ったって、あんたの口から出た言葉なんて、なんの真実味も無いわ」


「まあ、そう言うな。面白いことというのは、君が持つ文字石もじいしについてだ」


 十文字じゅうもんじ乃々ののが首からぶら下げているペンダントを指差す。


「私も最初はその石を『乃』だと思っていた。だが最近、それは間違いだと判明したよ。佐倉さくらくん、君の石は……」


 少し間をおいて、十文字じゅうもんじは衝撃の言葉を放った。




「『女』さ」




 十文字じゅうもんじの言葉に、勇助ゆうすけじんは驚きを隠せなかった。


 長年モジシャンとして活動していた2人だからこそ、この言葉を意味に気付いた。


 だが乃々ののは、男2人よりモジシャンになって日が浅い乃々ののは……。


「えっと、それがなんですか……?」


 意味が分からないという顔をしていた。


「案外察しが悪いね、佐倉さくらくん……。ではきちんと説明しよう」


「よせ! 乃々のの、そいつの言葉に耳を貸すな!」


 勇助ゆうすけ十文字じゅうもんじを止めようとするが、間に合わなかった。






「『女』の文字石の力はその名の通り、所有者を女に変える。つまり、佐倉くん、君の性別は、本当は男なのだよ!!」






 十文字じゅうもんじの言葉に乃々ののは驚愕する。驚きすぎて、一瞬、十文字じゅうもんじが何を言っているのか分からなかった。




「う、嘘よそんなの……」




 やっと彼女の口から出た言葉はそれだった。


「だって、私は生まれた時からずっと女の子だったし。男だったことなんて1度もないし……」


文字石もじいしが暴発して町に散らばったのが19年前。君の生まれた年と一致するよ。おそらく佐倉くんがまだ母体の胎内にいた頃に、何かしらの事故で君の身体に入ったのだろう」


 そういえば、と乃々ののは遠い昔に母から聞いた話を思い出す。


 自分がまだお腹の中にいた頃、交通事故に遭ったことがあると。

 

 もし自分の身体に文字石もじいしが混入したとしたらその時しかない。


「君が持つカタカナが何よりの証拠だ。その2本の刀を交差させてみるといい、それは片仮名の『メ』を表しているのだよ」


 乃々は自身の手に握られた2本の交差した刀を見る。


 十文字じゅうもんじの言うとおり、それは『メ』の形をしていた。

 ノガタナ達は『僕らは、メ、だよ』と、持ち主に語っていた。


「で、でも! こうすれば『ニ』になるし、こう持てば『ナ』にもなる! そもそも2画の片仮名なんて、いくつもあるわ!!」


 乃々ののは2本の刀で様々な片仮名を作る。


 しかし、そんな必死な彼女を十文字じゅうもんじは嘲笑った。


「では実際に検証してみようではないか。……一了かずあき!」


 漢一了かんかずあきだった『壊』の文字化もじばけに乃々ののを襲うように命令する十文字じゅうもんじ


 乃々のの文字石もじいしが『女』であるという告白に驚いた3人は、文字化もじばけの動きに反応するのが遅れた。


 文字化もじばけの指が乃々のののペンダントに触れる。


 その瞬間、ペンダントに、文字石もじいしにヒビが入った。




「あぁ! ……あ? あー、あー、ああ、ああ!?」




 乃々ののは、あー、と発声する。


 彼女はかつてないほどの違和感を覚えた。

 

 声が、自分の声が低いのだ。


 風邪の時の比ではない。

 それこそまさに女性のソプラノボイスが男性のバスボイスになっていた。


「そんな、そんな……」


 2刀を落とし、膝から崩れ落ちる乃々のの


「お、おい乃々のの!」


 勇助ゆうすけの呼びかけにも乃々ののは反応しない。


 もはや彼女には戦う意志など微塵もなかった。


 文字石もじいしにヒビが入ったのが原因か、それとも乃々ののの戦意が削がれたのが原因か。彼女の変身は解かれた。


「ちっ!」


 ――DESTROY ERASER――


 イヅチにエネルギーを溜めるじん


 そしてそれを地面に叩きつけ、砂や石など粉塵を巻き上げる。


「おい、一旦引くぞ!」


「わ、分かった。乃々のの立てるか?」


 返事をしない乃々のの


 仕方ないので勇助ゆうすけは彼女を抱えて、じんと共にその場を立ち去る。


 モジシャンに変身していて勇助ゆうすけの腕力は上がっているはずなのに、乃々ののの身体がいつもより重くなっているのを彼は感じた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉乃々さくらのの

 19歳。中性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 赤いモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『女』


 本当の性別で男で、『女』文字石もじいしによって性転換していた。

 

 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角勇助えすみゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青もしくはオーシャンブルーのモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『幾』と『流』


 乃々ののを担いで撤退


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



漢一了かんかずあき

 40代。男性

 ワードカンパニー社長。

 白のモジシャンに変身できる。

 文字石もじいしは『散』


 乃々のののペンダントに、ヒビを入れる。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣天音くさがきあまね

 18歳。女性

 ワードカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



十文字平じゅうもんじたいら

 40代。男性

 文字もじるドライバーの開発者。

 黄金のモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『創』と『壊』


 乃々のの文字石もじいしの秘密を暴露する

 

 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーデューク(レモンエナジーアームズ)


 

佐々木仁ささきじん

 29歳。男性。

 黒もしくは灰色のモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『伊』と『止』


 これ以上の戦闘は不利と判断し、勇助ゆうすけに撤退を提案する。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーナイト



佐々木奈央ささきなお

 享年20歳。女性

 佐々木仁ささきじんの妹。

 マゼンダ色のモジシャンに変身した。


 プロト文字もじるドライバーの欠陥により、死亡

 あの世から皆を見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーオーズ(ガタキリバコンボ)

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