最終決戦目前

 爆発した文字化もじばけの身体から、文字石もじいしが飛び出してくる。


「うぐぅ……」


 石が排出されたことにより、文字化もじばけは元の姿に、漢一了かんかずあきに戻った。


「社長さん!」

「社長!」

「……」


 3人はかん社長に駆け寄る。

 社長はちゃんと生きている。脈もある、呼吸もしている。


 だが、血だらけ傷だらけ。満身創痍の状態だ。早く病院に連れて行かなければ。 



 その時だった。




 ――ピリオド、ストライク!!――




 4人の背後から、何者かが攻撃を仕掛けてきた。


 エネルギー波が飛んでくる。


 それにいち早く気づいたのはじんだった。


 その波動はとてつもなく速い。


 他の3人に危機を伝える暇も、青いボタンを押してエネルギーを溜める時間も無い、じんはそう判断した。


「ちっ!」


 じんは盾となった。3人と攻撃の間に割り込んだ。身体を張って、謎の攻撃から3人を守った。


 その攻撃は、モジシャンに変身していたじんの防御力を遥かに上回る破壊力であった。


「ぐっ……」


 じんの変身は強制解除され、彼はその場に倒れこむ。


佐々木ささき!」

じんさん!!」




「ふむ。やはり『創』1つだけでは、いまいち本来のパワーが出せないな」


「っ、十文字じゅうもんじ……!」


 十文字じゅうもんじが変身した黄金のモジシャンを見た乃々のの勇助ゆうすけは、臨戦態勢に入る。


「やぁ乃々ののくん。随分と男性化が進んでいるようだね。すっかりイケメンボイスじゃないか。CV.三木眞一郎ってところかな? ちょっと「レモンエナジー」と言ってみてくれないか? なんなら「ジンバーレモン」でも良い」


「大きなお世話よ!」


 怒る乃々ののを無視して、十文字は落ちている『壊』の文字石を拾い上げる。

 そしてそれをギュゥッと握り締めて、体内に取り込んだ。


「これで完全体になれた。いや、戻ったと言うのが正しいか」


 黄金のモジシャンの輝きが一層増す。まるでその力を誇示するかのように。まるでパワーアップしましたよと、言わんばかりに。


「最悪の状況になっちまったな……」


 装甲の下で唇を噛む勇助ゆうすけ


 そう。状況は最悪だった。


 黄金のモジシャンは、変身に必要な片方の文字石をかん社長に使っていたことにより、弱体化していた。本来の力を出せずにいたのだ。


 だが、その石は十文字じゅうもんじの手に戻った。黄金のモジシャンは本来の力を、4倍の力を取り戻したのだ。


 しかもそれだけではない。


「っ、プロトドライバーが……!」


 さっきの攻撃でじんの使うプロト文字るドライバーは、無惨にも壊れてしまった。

 これではもう、佐々木仁ささきじんはモジシャンに変身できない。


「そのプロトドライバーは私の研究の、最大の汚点だったからね。それに『止』の能力は、私にとっても少々厄介だ。じんくんには早々に退場してもらったよ」


 4倍の出力を取り戻した十文字じゅうもんじと、じんを失った乃々のの勇助ゆうすけ。 


 つまり理論上、2対4になった。戦力差が広まってしまったのだ。


「でも、やるしかないよ」


「ああ、そうだな」


 刀とつるはしを握り締める乃々のの勇助ゆうすけ

 2人はやる気満々だ。たとえ不利な状況でも決して諦めない不屈の心、それを彼らは持っていた。


 だが、そんな2人に十文字じゅうもんじは背を向けた。この場から立ち去ろうとしたのだ。


「逃げるのか!」


「私は忙しい身でね、旧式の君達と遊んでいる暇は無い。それに勇助ゆうすけくん、逃げるんじゃない、見逃してあげるんだ」


 2人を嘲笑うかのように、十文字じゅうもんじはその場を去った。


「追うわよ勇助ゆうすけ!」

「当然だ!」


 あと追おうする2人のモジシャン。

 それに待ったをかける者がいた。



「待て……」



 かん社長だ。人間に戻ったばかりの漢一了かんかずあきが2人を静止させる。


佐倉乃々さくらのの。それ以上、文字もじるドライバーを使ってはいけない」


「……?」


「私は文字化もじばけになっていた時の記憶はある、故に状況は把握している。君の文字石もじいしの傷のことも、十文字もじいしが通常のモジシャンの4倍の出力であることも」


 傷口を押さえながら、かん社長は語る。


佐倉乃々さくらのの。君の文字もじるドライバーを佐々木仁ささきじんを譲渡しろ」


 社長の言葉にその場にいた全員が驚きを隠せなかった。


たいらのやつは『止』の能力を危惧していた。あの黄金のモジシャンでも、『止』の呪いを受けると1分25秒は動けなくなる。君の代わりに佐々木仁ささきじんが戦闘に参加すれば、まだ勝機はある」


 本来、『止』による静止時間は5分。

 だが黄金モジシャンの力は強すぎて、1分25秒の静止が限界らしい。


 この情報は本当だ。


 仁の持つ『止』を危険視していた十文字じゅうもんじは、コンピュータでシミュレーションをしていたのだ。


 もし黄金モジシャンが『止』を受けた場合、どうなるか。


 その計算結果が、1分25秒の静止。

 それをかん社長は文字化けになった状態で見ていた。憶えていたのだ。


「それに、傷ついた文字石もじいしではドライバーのエネルギー負荷に耐えられない。このまま変身を続けていたら、『女』は完全に壊れる。そうなれば、君は完全な男になってしまう。そうなる前に、ドライバーを佐々木仁ささきじんに渡すんだ」


 これはかん社長なりの気遣いだった。乃々の男性化をこれ以上進行させないために、そう言ったのだ。


 社長も社長なりに、責任を感じていたのだ。最初に乃々をモジシャンに勧誘したのは自分。自分が誘わなければ、乃々も苦しまずに済んだのかもしれない。かん社長はそう思っていた。



「お断りします」



 だが、そんな気遣い、乃々ののにとっては不要だった。


「今の不意打ちで、じんさんもかなりのダメージを負っています。いくら『止』があるとはいえ、まともに戦うのは難しいです」


 乃々ののの言うことはもっともであった。さっきの攻撃でプロトドライバーだけではなく、じん本人も多大なダメージを負っていた。


「それに私にもモジシャンとしての意地があります。このまま引き下がるわけにはいきません」


「……いいのか? 本当に女としての君は消滅するぞ」


 乃々ののは変身を解き、社長に顔を見せた。覚悟ある自分の顔を、眼を、決意の表情を。


 変身を解いた瞬間、乃々のののペンダントのヒビがまた酷くなったが、彼女は気にも留めなかった。


「もういいんです、女でも男でも。私を愛してくれる人が、勇助ゆうすけがいれば」


乃々のの……」


 勇助ゆうすけも変身を解く。彼の目にも、1点の曇りすら無かった。


 彼らの覚悟を見たかん社長は、もうドライバーを譲渡しろ、とは言わなかった。


 その代わりに、こう言った。

 

佐倉乃々さくらのの江角勇助えすみゆうすけ。君達に命令する。十文字平じゅうもんじたいらを殲滅せよ」


「「了解!」」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉乃々さくらのの

 19歳。中性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 赤いモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『女』


 本当の性別で男で、『女』文字石もじいしによって性転換していた。

 

 彼女の瞳に、もう迷いは無い。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角勇助えすみゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青もしくはオーシャンブルーのモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『幾』と『流』


 乃々ののと2人だけで十文字を倒すつもり。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



漢一了かんかずあき

 40代。男性

 ワードカンパニー社長。

 白のモジシャンに変身できる。

 文字石もじいしは『散』


 モジシャン達のおかげで人間に戻れた。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣天音くさがきあまね

 18歳。女性

 ワードカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



十文字平じゅうもんじたいら

 40代。男性

 文字もじるドライバーの開発者。

 黄金のモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『創』と『壊』


『壊』を回収し、完全な力を取り戻す。

 

 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーデューク(レモンエナジーアームズ)


 

佐々木仁ささきじん

 29歳。男性。

 黒もしくは灰色のモジシャンに変身した。

 文字石もじいしは『伊』と『止』


 プロト文字もじるドライバーを破壊され、戦線離脱。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーナイト



佐々木奈央ささきなお

 享年20歳。女性

 佐々木仁ささきじんの妹。

 マゼンダ色のモジシャンに変身した。


 プロト文字もじるドライバーの欠陥により、死亡

 あの世から皆を見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーオーズ(ガタキリバコンボ)



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