陳情! 仁だって能力が欲しい

 WワードCカンパニーの休憩室にて。


 江角えすみ勇助ゆうすけ佐々木ささきじんがトランプで暇を潰している最中。


 部屋の扉がドンっと開かれ、江角えすみ乃々のの(×1)が現れる。


勇助ゆうすけ、聞きたいことがあるの!」


「サンタクロースが赤いのはコカコーラによる宣伝だ」


「そうじゃなくて。文字石もじいしって、何かしらの能力があるじゃない?」


「そうだな」


は女にする。は身体能力が少し上がる。は液状化。は敵の動きを止める……」


「それがどうしたんだ?」


「じゃあさ……じんさんのは?」


「え?」

「……っ!」


「よく考えたらさ、じんさんのだけ、能力の説明が無いのよ。イヅチいづちを呼び出してはいるけど、あれはカタカナかたかなであって、文字石もじいし本来の能力とは別物だし」


「……そういやそうだな。どうなんだ、じん?」


「それは……」




「それは私が説明しよう!」




十文字じゅうもんじさん!」

「おっさん!」

「亡霊が……」


「そもそもじん君は、勇助ゆうすけ乃々のの君のライバルキャラとして登場した。そして第3章ではカタカナかたかなを覚醒させた乃々のの君がじん君と戦う。必然的にじん君の文字石もじいしも片仮名モチーフの漢字となる。だが、あまり複雑な形の片仮名だと……読者も知らない武器になってしまう。いろいろ試行錯誤した結果、じん君の文字石もじいしとなったのだ」


「簡単な形なら、ニのやミのでも良かったんじゃないですか?」


「作者もそれは考えた。しかしにしてしまうと、じん君の能力は『増殖』になる。そうなってしまうと、物語終盤での乃々のの君3人分裂のインパクトが薄れてしまう。そのためボツになったのさ」


「なるほど……」


「あと単純に作者がイヅチいづちという名前を気に入った、という理由もあり……じん君の文字石もじいしで決定した。だが、次の問題が発生した」


「次の問題?」


の能力さ。作者は伊という漢字が持つ意味をネットで調べた。そして伊の持つ意味は『これ』『この』『彼』『かの』などだった」


「『彼』……男……っ! もしかしてじんさんは元は女性で、の力で男性になっていたの!?」


「殴られたいのか佐倉さくら


「作者も最初、その設定を考えたが……それだと乃々のの君のとカブるのでボツになった。……まあ、あとで分かったんだが、この場合の『彼』とは指示代名詞のことであって、男性を意味する『彼』とは別だったよ」


「じゃあ結局、の力は何なんだよ……」


「うむ。が持つ能力、それは……」


「「それは……?」」


「無い!」


「「無いの!?」」

「……」


「作者も能力を考えるの面倒くさくなったようでね。もういっそは能力の無い、ハズレ文字石もじいしということになったのだよ」


「ハズレ文字石もじいし……」


「どうせ俺なんか……」


「ああっ、じんがキャラにもなく落ち込んでる! 地獄兄弟になってる!!」


「ちょっとちょっと! うちのお兄ちゃんをイジメないでよ!! お兄ちゃん、これでけっこうデリケートなんだから!!」


「あ、奈央なおさん」


「……奈央なお、俺と一緒に地獄に堕ちよう。俺の妹になれ」


「しっかりしてくださいじんさん! 奈央なおさんは最初からあなたの妹です!!」


「そうよ、あきらめないでお兄ちゃん!! まだシーズン1ではの力は語られていないだけで、ハズレ文字石もじいし扱いにはなっていない! 今はこのまま謎のままにして、シーズン2で能力判明……って展開にすればいいのよ!!」


奈央なお……」


「今から作者の所に行きましょう!! シーズン2が始まるまでに、もう1度の能力考えてもらおう? 私も一緒に行くから!」


「すまない、奈央なお……」


 そう言って、佐々木ささき兄妹は休憩室を去った。


「これは……」


「陳情……」


「だね……」











 WワードCカンパニー、とある部屋。


「……と、いうわけだ」

「お願い、お兄ちゃんのに力を!!」


「そのことなら心配ないよ、佐々木ささき兄妹」


「え?」

「……?」


のことは私もずっと気にしていたんだ。じんさんにはという強力な文字石もじいしがあるとはいえ、やっぱり基本フォームのにも何かしらの特徴は必要だからね。……そして! この度! の能力が決定しました!!」


「おお!」

「……!!」


「発表します!! の能力、それは……」


「「それは……!?」」




「『所有者をイタリア人にする』能力だ!!」




「「……は?」」



「ほら、イタリアを漢字で表すと『伊国』になるじゃん? だからの力も、それにしようかなーって。……というわけでじんさん。今度からイタリア人っぽく喋ってください。『ボンジョールノ』とか『セニョール』とか『マンマミーア』とか」


「……変身」


 ――START WORDING――


「あ、あれぇ? じんさん、なんで文字化けもじばけもいないのに変身を……?」


「来い、イヅチいづち

「殺っちゃえ、お兄ちゃん」


 ――DESTROY ERASER――


「イッテイーヨ」

「だとよ」


「ま、待ってくれ、仁さん!! 落ち着け!! やめろ!! 仁さん!! うわあああ……あああああああ」


「Andare all'inferno」

「イタリア語で『地獄に堕ちろ』って意味ね」


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



 というわけで。

 の能力はまだまだ未定です。

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