新フォームは必ず勝つ法則

 ――テンサク、フィニッシュ!!――


「俺の必殺技、乃々ののタロスバージョン!!」


 カタカナにパワーを溜め、文字化もじばけを斬る乃々。

 文字化もじばけは切り口から爆発し、石に戻った。


添削てんさく完了っと。次は勇助ゆうすけの所へ行かないと。……?」


 文字石もじいしを回収しようとした乃々ののの身体が硬直する。


「悪いな、女モジシャン。恋人に会いたいなら石を貰わないとな」


 佐々木仁ささきじんだ。勇助ゆうすけの時と同じように『止』で乃々ののの動きを封じたのだ。


佐々木仁ささきじん! くっ。これはあんたの仕業ね!!」


 灰色のモジシャンを見て、状況を瞬時に察する乃々のの


「まあな。詳細はあとで恋人にでも聞くんだな」


 さきほど勇助ゆうすけに説明したからか、乃々ののに『止』のことを言うのが面倒だったじんは、一気に決めるため、必殺技発動ボタンを押そうとした。


 まさにじんの指が青ボタンに接触するかしないかの瞬間だった。


 ブロロロとエンジン音を響かせながら勇助ゆうすけが現れた。

 勇助ゆうすけがバイクでじんを轢こうと猛スピードで現れたのだ。


 じんは咄嗟に後ろに下がり、バイクの突進を回避する。


佐々木仁ささきじん!!」


「おいおいもう来たのかよ。何の用だ? 仮面ライダーごっこなら1人でやりな、変身できなくなった元ヒーローさんよ」


 じん勇助ゆうすけのペンダントをぶらぶらと振り回しながら挑発する。


「そいつはどうかな?」


 しかしそんな安い挑発には勇助ゆうすけは乗らない。

 何故なら勇助ゆうすけにはまだ戦う力がある、十文字じゅうもんじから貰った新たな力が。


 勇助ゆうすけ文字石もじいしがはめ込まれたブレスレットをじんに見せつけ、それを左手首に装着する。


 そして文字もじるドライバーを腰に装着した。


「超、変、身っ!」


 ――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、カキトリ!!――


 活気づいた声を発しながら、赤いボタンを押す勇助ゆうすけ


 水色の装甲が出現し、勇助ゆうすけに装着される。


 いつもの青いモジシャンとは違い、彼はオーシャンブルー色の戦士となった。


 いや、違うのは色だけではない。


 装甲と同時に武器が、カタカナが出現。

 勇助ゆうすけはそれを掴む。


 そのカタカナはつるはし、片仮名の『ル』を逆さにしたような形をしていた。

 

 そう。最初に乃々ののが倒した文字化もじばけの文字石もじいしは、十文字じゅうもんじが渡した石は、勇助ゆうすけが新たに手に入れた力は、『流』だった。


「てめえも新しい石を……!」


「俺の恋人が初めて手に入れた石、俺との相性がピッタリだったよ。しかもカタカナのおまけつきでな。……そうだな、うちの天才科学者風に言うなら、こいつの名は『ルピック』だ」


 さきほどのじんのセリフを真似る勇助ゆうすけ。この発言からは彼の余裕が感じられた。


 つるはしは英語でピック。『ル』のつるはしだからルピック。確かに十文字平じゅうもんじたいらが名付けそうなネーミングセンスだった。


「勝負だ、佐々木仁ささきじん!!」


「舐めるなよ、半人前ヒーローが!!」


 つるはしとトンファーがぶつかり合う。現役と先輩の衝突。

 この2者の激突、新しい石とカタカナを手に入れて勢いのある勇助ゆうすけが優勢だと思われた。

 

 だが実際に押しているのはじんの方だった。


 それもそのはずだ。じんは『止』を手に入れてからすぐに勇助ゆうすけ達の前に現れたのではない。『止』の能力と性質を十分に研究し、またトトンファーを完全に使いこなす訓練も行った。


 だからこそ、5分間の静止と1時間の耐性という特性を発見できたし、トンファーという特殊な武器を扱うことができた。


 それに対して勇助ゆうすけは今初めて、ルピックを手に入れた。つまり、まだその扱いに慣れていない。


「隙だらけだ」


 トトンファーの先端が勇助ゆうすけの顔面に向かってくる。


 まずい、そう思う勇助ゆうすけ


 棍棒が彼の顔面に衝突するその瞬間だった。


 じんのトトンファーは確かに勇助ゆうすけに命中した。

 しかし勇助ゆうすけにダメージはなかった。痛みさえも感じなかった。


 そしてじんも手応えを全く感じなかった。まるで水を叩いたような感覚しか感じなかったじん


「そうか。これが『流』の力か!」


 勇助ゆうすけは瞬時に理解した。『流』が持つ力を。


 その力はまさに水が流れる如し、全ての攻撃を受け流す鉄壁の防御。身体を一時的に液体に変えるのが『流』の持つ力だった。


「これならいける!」


 勇助ゆうすけがさらに勢いづく。対し、『流』の力にたじろぐじん


 つるはしを振り回し、着実にダメージを与える勇助ゆうすけ。その勢いのまま、勇助ゆうすけは青いボタンをプッシュ。


 ――テンサク、フィニッシュ!!――


「必殺スプラッシュストライク!!」


 身体全体を水に変え、まるで大蛇のようにじんの周りを囲む勇助ゆうすけ。そしてエネルギーの溜まったルピックで敵を叩く。


 その攻撃に吹き飛ばされるじん

 その際、じんが持っていた2つの石、勇助ゆうすけのペンダントと奪われた石が宙を舞う。


「返してもらうぜ!」

 それらの石をガッチリと掴む勇助ゆうすけ


 その時、時間が来た。乃々ののが呪われてから、5分が経ったのだ。

 乃々ののの身体に自由が戻った。


「ちっ」


 しばらく『止』は使えない、相手は2人。

 分が悪いと判断した佐々木仁ささきじんは、逃走した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉乃々さくらのの

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 赤いモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『乃』


 仁に襲われるが、勇助に助けられる。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角勇助えすみゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青もしくはオーシャンブルーのモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『幾』と『流』

  

 新たな力で、佐々木仁ささきじんを撃退。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



漢一了かんかずあき

 40代。男性

 ワードカンパニー社長。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣天音くさがきあまね

 18歳。女性

 ワードカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



十文字平じゅうもんじたいら

 40代。男性

 文字もじるドライバーの開発者。

 

 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーデューク(レモンエナジーアームズ)


 

佐々木仁ささきじん

 29歳。男性。

 黒もしくは灰色のモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『伊』と『止』


 新フォームになった勇助ゆうすけに敗北し、撤退。



佐々木奈央ささきなお

 享年20歳。女性

 佐々木仁ささきじんの妹。


 プロト文字もじるドライバーの欠陥により、死亡 

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