1÷3=3

 乃々のの文字石もじいし、『女』は完全に砕けた。


 バラバラに、3つに割れた。


 文字石もじいしが壊れたことにより、モジシャンもじしゃんの変身は解除、乃々ののも完全な男になる。




 そのはずだったのだが……。




 その時、不思議なことが起こった。




 ペンダントが、砕けたはずの『女』文字石もじいしの3つの欠片が、輝きだしたのだ。


「え、なになに、なんなの?」


 石の輝きはどんどん激しくなり、その光が乃々ののを包み込む。


乃々のの、大丈夫か!?」


 慌てて勇助ゆうすけが光に駆け寄る。


 その時だった。


 光が分かれた。乃々ののを包んだ光が、3つの等身大の輝きに分裂したのだ


 そして光達が止むと……。


「……の、乃々のの?」

「!!」


 勇助ゆうすけ十文字じゅうもんじは驚きを隠せなかった。モジシャンもじしゃんのマスクの下では、目を見開き、口をポカーンと開けていたことだろう。


 2人の反応は至極当然だった。


 何故かと言うと……。



 

「……え」

「え」

「え?」




 赤いモジシャンが、乃々ののが3人になった。


 仮面ライダーナイトのトリックベントか、ディケイドのイリュージョンか、ウィザードのコピーか。


 とにかく、乃々ののが3人になったのだ。


 いや3人になっただけではない。


「! 声が……」

「元に」

「戻ってる……!」


 乃々のの……いや、乃々のの達の声が元に、男性ボイスから女性ボイスに戻ったのだ。


 声だけじゃない。


 膨らんだ肩幅も元に戻った。


 ようするに、乃々のの達は女性に戻ったのだ。



 



 同時刻。病院にて。


 草垣くさがき天音あまねかん一了かずあき、そして社長をこの病院に運んできた佐々木ささきじんは、乃々のの達の最終決戦を見ていた。


 ノートパソコンを通じて、文字るもじるドライバーどらいばーのカメラが撮影した映像を見ていたのだ。


「どういうことでしょう……? 乃々ののさんが3人になるなんて」


 天音あまねがもっともな疑問を述べる。


 少し間をおいてから、かん社長が口を開く。


草垣くさがきくんは、女性の忍者を『くノ一』と呼ぶ理由を知っているか?」


「え? ……すみません、勉強不足で」 


「『女』という漢字を分解すると、平仮名の『く』、カタカナの『ノ』、漢字の『一』になるから、だろ」


 天音あまねの代わりにじんが答える。


 じんの回答に、頭の中で『女』を分解する天音あまね。しばらくすると彼女は、なるほど、と呟いた。


「おそらく。それと同じことが、文字石もじいし佐倉さくら乃々ののにも起きた。ヒビ割れた『女』が3つに分かれたことにより、所有者である佐倉さくら乃々ののも3人に分裂したのだろう」


 と、かんは自身の考察を述べる。


 もちろん、この考察が正しいのかどうかは、誰にも分からない。


 そもそも文字石もじいしは漢字1文字の言霊を封じ込めたものであり、別の複数の、しかも平仮名やカタカナの文字に分裂することは、ありえないのだ。


 それにヒビの入った『女』が『く』『ノ』『一』に分かれたからといって、男性化していた乃々ののが女性に戻った理由にはならない。


 やはりありえない。


 文字石もじいしを生み出した天才の十文字じゅうもんじたいらですら、この状況を理解できずにいた。


 だが、実際、そのありえない状況が起こっている。


 奇跡、としか言いようが無い。






「……」

「……」

「……」


 3人の乃々はお互いを見合う。


 乃々ののが3人に分裂したことも不思議だが……もう1つ、不思議なことが起こった。


 ノガタナのがたな達が、2本の日本刀が宙に浮き、光り輝いたのだ。


 そして先ほどと同様に、光が3つに分かれる。


 3つの輝きは、それぞれ3人の乃々ののの手元に舞い降りる。

 乃々のの達はそっとその光を受け止める。


 すると光が弾け、彼女らの手元に武器が、新しい武器が出現した。


 銃、刀、杖。3つの武器。


 さきほどかん一了かずあきが述べたくノ一説を基に、あえて敵である十文字じゅうもんじたいらのネーミングセンスで名付けるとしたら……。


 銃はくガンくがん

「ピストル……?」


 杖はいちじょう

「棒……?」


 刀はノガタナのがたな

「か、刀? ……っていつもどおりか」


 3人の乃々ののは、それぞれの武器と、他の自分を交互に見る。


 もし、ドッペルゲンガーのような、自分と同じ容姿の存在に出遭った場合、人はどんな反応をするのだろうか。


 驚き慌てふためくのだろうか。

 冷静に状況を観察するのだろうか。

 夢だと思うのだろうか。


 人それぞれだろう。


 そして佐倉さくら乃々ののの場合は……。


「俺はお前だ!」

「僕はあなた!」

「私も私!」


「「「超協力プレイで、クリアしてやるぜ!」」」


 3人の乃々ののは、一斉に十文字じゅうもんじへ攻撃を仕掛けた。


 乃々のの達は、自分が3人になったことに、ほとんど驚いていなかった。

 彼女らの心はただ1つ、必ず十文字じゅうもんじを倒す。それだけだった。


 1人はノガタナのがたなで切りかかり、1人はいちじょうで殴り、1人はくガンくがんで後方からの援護射撃。


「ほら勇助ゆうすけ、ぼさっとしない!」

「4人同時プレイいきましょう!」

「ドラゴナイトハンターZ!」


「お、おうっ!」


 今まで呆気に取られていた勇助ゆうすけも、3人の乃々ののに注意されて、攻撃に参加する。


 さきほどまでは乃々のの勇助ゆうすけ2人に対し、4倍のパワーを持つ十文字じゅうもんじ


 2対4の戦いであった。


 だが、乃々ののが3人になったことにより、4対4になった。


 戦力差はなくなった。


 いや、それだけではない。

 4対4というのは、合計能力値の話。


 数で見れば、4人と1人で、4対1。


 能力値は互角、兵数は4対1。


 つまり……。


「はぁ!」

「てやぁ!」

「とりゃ!」


勇助ゆうすけ乃々のの達の方が、優勢なのだ。


 4人の攻撃に十文字じゅうもんじは圧倒される。

 

「決めるぞ!」


 ――テンサク、フィニッシュ!!――


「「「オーケー!」」」


 ――テンサク、フィニッシュ!!――

 ――テンサク、フィニッシュ!!――

 ――テンサク、フィニッシュ!!――


 4人は一斉に青いボタンを押し、エネルギーを溜める。

 ルピックるぴっくくガンくがんノガタナのがたないちじょうにエネルギーを集め、一斉に攻撃をした。


「ふざけるな……ふざけるなぁ! 次世代じせだいドライバーどらいばーは、ゴルドモジシャンごるどもじしゃんは私の最高傑作……旧式に負けはずがないぃ!!」


 ――ピリオド、ストライク!!――


 怒り任せに青いボタンを押す十文字じゅうもんじ。必殺エネルギーを右拳に籠める。


 ぶつかり合う4つの武器と、1つの拳。



 勝ったのは、勇助ゆうすけ乃々のの達、正義を愛するモジシャンもじしゃんの方だった。


 4人の必殺技に圧倒され、十文字じゅうもんじは吹き飛ばされる。

 そしてその勢いのまま、十文字じゅうもんじ強制暴走装置きょうせいぼうそうそうちに激突。


「勝った……勝ったぞ乃々のの


「「「っしゃぁ!!」」」


 モジシャンもじしゃん達は歓喜の声を上げた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉さくら乃々のの

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 赤いモジシャンもじしゃんに変身する。

 文字石もじいしは『く』『ノ』『一』


 文字石もじいしが割れたことにより3人に分裂、性別も女性に戻った。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角えすみ勇助ゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青もしくはオーシャンブルーのモジシャンもじしゃんに変身する。

 文字石もじいしは『幾』と『流』


 3人の乃々ののと共に、十文字じゅうもんじを倒す。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



かん一了かずあき

 40代。男性

 ワードカンパニーわーどかんぱにー社長。

 白のモジシャンもじしゃんに変身できる。

 文字石もじいしは『散』


 病室からモジシャンもじしゃん達の戦いを見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣くさがき天音あまね

 18歳。女性

 ワードカンパニーわーどかんぱにーの秘書。


 病室からモジシャンもじしゃん達の戦いを見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



十文字じゅうもんじたいら

 40代。男性

 文字るもじるドライバーどらいばーの開発者。

 黄金のモジシャンもじしゃんに変身する。

 文字石もじいしは『創』と『壊』


 勇助ゆうすけと3人の乃々ののに倒される。

 

 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーデューク(レモンエナジーアームズ)


 

佐々木ささきじん

 29歳。男性。

 黒もしくは灰色のモジシャンもじしゃんに変身した。

 文字石もじいしは『伊』と『止』


 プロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばーを破壊され、戦線離脱。


 病室からモジシャンもじしゃん達の戦いを見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーナイト



佐々木ささき奈央なお

 享年20歳。女性

 佐々木ささきじんの妹。

 マゼンダ色のモジシャンもじしゃんに変身した。


 プロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばーの欠陥により、死亡

 あの世から皆を見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーオーズ(ガタキリバコンボ)


 

  

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