第3章 乃々の決意

悪魔と相乗りする前によく考えろ

 7月14日。


 勇助ゆうすけの左腕は完治した。


 すでに2日前の12日の時点で、文字化けもじばけ添削てんさくに支障をきたさないレベルまでに回復していた。


 そして今日、医者に包帯を取ってもらい、完全回復の太鼓判を押してもらった。


 病院を出た勇助ゆうすけは考えごとをしながら家まで歩く。


 乃々ののモジシャンもじしゃんとして戦う道を選んだ日から5日間。


 町には毎日文字化けもじばけが出没した。


 勇助ゆうすけは左腕を治療しながら戦った。


 もちろん乃々ののも一緒にだ。


 だが勇助ゆうすけ乃々ののと一言も言葉を交わさなかった。


 彼女に投げる言葉は『いしは俺がWワードCカンパニーに届ける』くらいの事務的なものだけだった。


 勇助ゆうすけ乃々ののが戦うのに反対だった。


 その意見は今でも変わらない。


 彼は乃々ののを戦いに巻き込みたくなかった。


 今まで自分の正体を隠し続けていたのもそのためだ。


 だが彼女が添削てんさくに加わったことにより、勇助ゆうすけの負担が軽くなり、腕の治療に集中できた。


 勇助ゆうすけはそれが許せなかった、自分の左腕が憎い。


 左腕だけではない。自分が不甲斐ないばかりに乃々ののは戦う羽目になってしまった。


 勇助ゆうすけは自分が許せなかった。


 どうにかして乃々ののモジシャンもじしゃんから解任させる方法は無いものかと、勇助ゆうすけは考える。


「倒しちまえばいいんだよ」


 そんな彼の心を見透かしたような声。


 その声の主が物陰から勇助ゆうすけの目の前に現れる。


 その男は、9日に乃々のの勇助ゆうすけが戦う姿を覗いていた男だった。


「なんだお前、突然」


「俺のことなんかどうでもいいだろ。町を守るモジシャンもじしゃん、ヒーローさんよ」


 その言葉を聞くと、勇助ゆうすけは警戒モードに入る。


 この男は自分がヒーローであることを知っている、知っていて自分に近づいたのだ。

 

 しかも男はヒーローの正式名称がモジシャンもじしゃんであることも知っている。


 WワードCカンパニーの社員かもしれないが、男から発せられる空気は、ただの社員が醸し出すものではないと勇助ゆうすけは思った。


「あんたさ、あの女が変身するのが気に入らねえんだろ。だったら、倒しちまえばいい」


「……この俺に、あいつを攻撃しろと?」


 勇助ゆうすけにそんなことできるわけがなかった。


 乃々ののを心から愛している自分が彼女を攻撃することなど、彼は想像さえしたくなかった。


「別に殺せとは言ってないだろ、ただ倒せばいいだけだ。あの女を制圧して、文字るもじるドライバーどらいばー文字石もじいしを奪って破壊すれば良い。まあ戦わずにこっそり盗むって手もあるが……俺は痛めつける方を薦めるな。ヒーローがいかに辛く痛くキツい仕事ってことをあの女に分からせてやるためにも、な」


 どうやらこの男、乃々のの文字石もじいし無しで変身したことまでは知らないようだ。


 乃々ののを倒す。悪魔の囁きがヒーローの脳にこだました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉さくら乃々のの

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 何故か文字石もじいし無しで、赤いモジシャンもじしゃんに変身できた。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角えすみ勇助ゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青いモジシャンもじしゃんに変身する。

 文字石もじいしは『


 左腕は完全に回復した。

 乃々ののと喧嘩中。

 どうにかして、乃々ののが変身するのをやめさせたい。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



かん一了かずあき

 年齢不詳。男性

 WワードCカンパニー社長。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣くさがき天音あまね

 18歳。女性

 WワードCカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



たいら

 40代。男性

 WワードCカンパニーの開発部社員。



・謎の男

 年齢不詳。男性。


 勇助ゆうすけに「乃々ののを倒せ」と囁く。

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