遅刻防止にデンライナーで電車通勤したい
約束の時間は夜8時。その時間を過ぎても
きっとまた撮影に向かったのだろう、と
「やっぱりね」
彼女は確信した。
ため息をつくも、
今まで彼は遅刻をすることはあっても、約束をすっぽかすことは決してなかった。
どんなに遅れても必ず来てくれると、
しかし。
「あの、お客様。申し訳ありませんが、もう店を閉めますので……」
閉店時刻11時を過ぎても来なかった。
無理を言って11時半までお店を開けてもらったが、結局来なかった。
ウェイターが
「分かりました」
暗い顔をしながら
このまま店にいても迷惑がかかるし、これ以上長居したら店員さん達に自分は『彼氏に約束をすっぽかされた惨めな女』と陰で笑われそうな気がしたからだ。
「あの、お客様」
扉に手をかけようとした
「
声の主はこのレストランの料理長だった。彼は中くらいの皿を持っており、そこには少し小さめのホールケーキが乗っていた。
このケーキは、
サプライズで
ケーキの上には『Happy Anniversary』と刻まれたチョコプレートが飾られていた。
それを見た
だがそれと同時に、どうして
彼女の沈黙を了承と解釈したのか、料理長はケーキを箱に丁寧に包んでくれた。
夜も遅いので人通りは少ないかと思ったが、今日は七夕だからだろうか、夜道を歩きながらデートをするカップルがちらほらいた。
そんな恋人達とすれ違うたびに、
彼女はふと夜空を見上げる。
空には雲1つ無く、町の明かりが散乱しているせいで薄っすらとだけれども、天の川と夏の大三角形が見えた。
きっと今頃は織姫と彦星は1年ぶりのデートを楽しんでいることだろう。
自分達は神様や天の川に引き裂かれたわけでもないのに、どうして自分達は満足なデートができないのだろうか。
他の恋人達はベガとアルタイルを見て愛を確かめ合っているのに、どうして自分の彼氏は隣にいないのだろう。
「
そんなことばかり考えていると、後ろから彼女の名を呼ぶ声がする。
おそらく走ってきたのだろう、彼は虫の息になっている。
たしかに
彼女が信じたとおり、約束の時間はかなり過ぎていたが、
だが、今回はあまりにも遅かった。遅すぎたのだ。
「バカ
「わ、悪い。怪人の撮影中に事故が起きて、さっきまで病院で治療してもらっていて、それで」
おそらく骨折したのだろう。
普段の
「また怪人!? 怪人怪人怪人怪人! そんなに怪人が好きなら、怪人と付き合えばいいのよ!」
怪我人は労われ、なんて先人の言葉は今の
料理長が包んでくれたケーキを箱ごと
左腕を庇った
「何よ、こんなもの!!」
気付けば彼女の目からは涙が流れていた。
「お、おい
「来ないで!!」
歩み寄ろうとする
「……私達、もう終わりね」
そう呟き、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
登場人物情報が更新されました
・
19歳。女性
ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。
彼氏持ち。
デートに遅刻する勇助をいつも許していたが、今回は堪忍袋の緒が切れてしまった。
好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)
・
19歳。男性
1周年記念のデートに遅れてしまい、
撮影中に左腕を骨折。
好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。
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