第6章 仮面ライダーに登場する天才にろくなのがいない

裏切り

 8月21日。WC地下駐車場。


 この場所にいるのは社長の漢一了かんかずあきただ一人。


 彼はある人物をここに呼び出した。その人物が来るのを待っている。


「やあ、一了かずあき


 その人物が、十文字平じゅうもんじたいらが、やって来た。


「いつもは社長室に踏ん反り返っている君が、こんな所に呼び出して、何の用かな? 誰かに聞かれるとまずい話でもあるのかい? まさかサスペンスドラマみたいに私を殺すつもりなのかな?」


 冗談を交えながら、フレンドリーにかんに話しかける十文字じゅうもんじ


「……聞かれたくない話があるのは、たいら、お前の方だろう」


 かん社長の発言に、十文字じゅうもんじの顔から笑みが消える。


佐倉乃々さくらののに無断で文字もじるドライバーを譲渡したこと、江角勇助えすみゆうすけに危険な文字石もじいしを託したこと。最近の貴様の行動は怪しすぎた。だから草垣くさがきくんに調べてもらった」


 黙ってかんの話を聞く十文字じゅうもんじ


「そして調査の結果、貴様の研究所には多額の使途不明金が確認された。お前のことだ、何か隠れて研究していたのだろう。……答えろ、何を企んでいる」


 ギロっと十文字じゅうもんじを睨むかん


 少し間を置いて、十文字じゅうもんじは口を開いた。


一了かずあき。君は、文字石もじいしはどこからこの世界にやって来たと思う?」


 十文字じゅうもんじは話を逸らしているわけではない。それはかんも分かっていた、だから答えた。


「さあな。だが宇宙から飛来してきた未知なる物質、と考えるのが妥当だろう」


「宇宙か。残念ハズレだ」


 かんの解答を嘲笑う十文字じゅうもんじ


 そして次の瞬間、彼は驚きの一言を放った。



文字石もじいしをこの世に生み出したのは、私だよ」



 その言葉にポーカーフェイスなかん社長も眉をひそめる。


「今から19年前、私は長年の研究の末に、言葉が持つ力……言霊を石に封じ込めることに成功した。私は歓喜した。この力があれば世界を手にできるとね」


 十文字じゅうもんじは元々単なる科学者だった。だがその研究は奇天烈なものばかりで、誰も彼を認めなかった。


 そしていつしか彼の心に野心が芽生えた、いつかこの世界を自分のものにする、と。文字石もじいしはその野望の結晶だったのだ。


「だが事故が起きた……」


 哀しげな顔をする十文字じゅうもんじ。それをじっと真顔で見るかん


文字石もじいしの力が暴走し、全ての石が町中に散らばってしまった。研究室も爆発し、文字石もじいしは私の前から消失してしまった」


「……」


「町中に散らばってしまった小さな石を全て回収するなんて不可能だ。私は諦めかけたよ、5年前までは。5年前、石が怪物となって現れるまではね」


 文字石もじいしが町に散乱したのは19年前、文字化けが町に現れたのが5年前。


 この期間、文字石もじいしはそれぞれ力を溜めていたのだ。

 そして溜まった力が暴走し、石は化け物となったのだ。


「だから開発したのさ、文字もじるドライバーという石を集めるツールを、モジシャンという石を回収する存在を。一了かずあき、そのために君を利用させてもらったよ。……だがこれ以上は無理なようだ。君にバレてしまったからね」


 不気味な笑みを見せる十文字じゅうもんじ。その顔は野望を諦めるとは一言も語っておらず、邪魔者は消す、そう言っていた。


「そうそう。質問の答えがまだだったね。君に隠れて私が何をしていたのか。その答えがこれさ」


 十文字じゅうもんじからあるものを懐から取り出す。


「変身」


 ――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、モジックTIME!――


 それは文字もじるドライバーだった。


 だが勇助ゆうすけ乃々ののが使っているものとも、じんが使っているプロトドライバーとも似ていない。黄金の色をしたドライバーだった。


 十文字じゅうもんじは金色のモジシャンに変身する。


「なんだそのドライバーは……」


「新型さ。江角えすみくん佐倉さくらくんが使っているものよりも最新型。言わば、次世代 文字もじるドライバーってところかな。一了かずあき、君には実践データ収集のためのモルモットになってもらうよ」


たいら……」


 たいら社長も懐から、ドライバーを、十文字じゅうもんじが作った3つ目の文字もじるドライバーを取り出す。


 このドライバーは以前、文字石もじいし無しでモジシャンに変身可能か検証するために作られたもの。


 検証が終了し、役目を終えたこの文字もじるドライバーはかん社長が保管していた。


 そして佐々木仁ささきじんと和解した後、漢はじんにこれを譲渡するつもりでいた。


 だがじんがWCに戻らなかったため、今まで渡せずにいたのだ。


「変身」


 ――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、カキトリ!!――


 赤いボタンを押し、白色のモジシャンに変身するかん


「これは驚いた。一了かずあき、君もドライバーを使えるようになっていたとはね」


佐々木仁ささきじんが送ってきた文字石もじいし。その中に私と適合する石があった」


 更にかん社長はカタカナを呼び出す。


 社長と適合した文字石は『散』。


 それは『サ』の元となった文字。


 彼が呼び出したのは『サ』の形を模した弓矢だった。


 名付けるとしたら、そう、サアロー。


 十文字じゅうもんじに向かってエネルギーの矢を放つかん

 柱に隠れてそれを避ける十文字じゅうもんじ


「ふふふ、懐かしいな。子供の頃を思い出す。よく2人で仮面ライダーごっこをしたっけな」


「お前はいつも私に怪人役を押し付けて、自分ばかり1号ライダーだったな。だが今は、お前が悪役だ、たいら


 交差しあう2つの攻撃。


 2人が子供の姿で、持っている物がオモチャだったのなら、微笑ましい光栄だっただろう。


 しかし今の彼らは戦士、モジシャン。


 これは遊びではない、戦いだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉乃々さくらのの

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 赤いモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『乃』(?)

 

 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角勇助えすみゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青もしくはオーシャンブルーのモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『幾』と『流』


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



漢一了かんかずあき

 40代。男性

 ワードカンパニー社長。

 白のモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『散』


 仁が送ってきた石の中に、彼と適合する石があった。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣天音くさがきあまね

 18歳。女性

 ワードカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



十文字平じゅうもんじたいら

 40代。男性

 文字もじるドライバーの開発者。

 黄金のモジシャンに変身する。


 19年前に文字石を生み出した。

 新たな次世代文字るドライバーを発明する。

 

 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーデューク(レモンエナジーアームズ)


 

佐々木仁ささきじん

 29歳。男性。

 黒もしくは灰色のモジシャンに変身する。

 文字石もじいしは『伊』と『止』


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーナイト



佐々木奈央ささきなお

 享年20歳。女性

 佐々木仁ささきじんの妹。

 マゼンダ色のモジシャンに変身した。


 プロト文字もじるドライバーの欠陥により、死亡

 あの世から皆を見守っている。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーオーズ(ガタキリバコンボ)

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