1号も武器を使って戦ってた

 まずい、やられる。


 乃々ののはそう思った。


 あと少しで大槌が乃々ののにぶつかる。


 その瞬間、彼女の防衛本能は、とっさに両手を前へと突き出させた。


 その時だった。


 何かがイヅチいづちと衝突し、その軌道を反らせた。


 男の攻撃は地面へと流れる。


「なに!?」


 突き出した乃々ののの両手には、ある物が握られていた。


 それは刀。


 刀身と柄の間……『はばき』と呼ばれる部品が欠如した日本刀だった。


「これって……カタカナかたかな?」


 そう、これがモジシャンもじしゃん乃々ののカタカナかたかなである。


 だが、これでまた謎が1つ増えた。


 何故いしを持っていない乃々ののカタカナかたかなを出現させることができたのだろうか。


「……なんだかよく分からないけど。今後こそこれで互角よ!!」


 乃々ののは日本刀で男に切りかかる。


 大槌と刀では、使用者によるだろうが基本的に、刀の斬撃の方が速い。


 大きなハンマーより細いソードの方が、空気抵抗がより少ないからだ。


 また、武器を持ったことにより、乃々ののに冷静さと勢いが戻った。


 隙を狙って、乃々ののは相手を刀身で突く。


「決めるわ!」


 ――テンサク、フィニッシュ!!――


 刀にエネルギーを込めながら、乃々ののは大ジャンプ。


 落下の勢いを利用して斬りかかるつもりだ。


「ちっ!」


 ――DESTROY ERASER――


 男も乃々ののに対抗するため、イヅチいづちにエネルギーを溜めて必殺技の構えに入る。


「せいやーッ!」」


 ぶつかり合う2つの力。


 黒と赤の衝突。


 だが、必殺技を発動するための青いボタン。これを押したのは乃々ののの方が早かった、つまり彼女の刀の威力の方がチャージしたエネルギーが多い。


 黒いモジシャンもじしゃんは衝撃を受け、後方に吹き飛ばされた。


「……ふん、今日はここまでだ」


「なによ、そっちから攻撃してきたってのに、逃げるつもり?」


「戦略的撤回だ。それに俺は目的を果たした」


 男は何かを乃々のの勇助ゆうすけに見せつける。


 それは文字石もじいし


 さっき乃々ののが倒した文字化けもじばけから出てきた、さっき乃々ののが回収したいしだった。


「いつの間に……!」


 ――DESTROY ERASER――


「女モジシャンもじしゃん、そしてそこに転がっている半人前! いつかお前らのドライバーどらいばーを破壊してやるよ!!」


 男はそう言うと、イヅチいづちを地面に叩きつける。


 揺れる大地、舞い上がるコンクリートと土埃。


 それにより乃々のの勇助ゆうすけの視界が遮られる。


 やがて、視界が晴れると、男の姿はどこにもなかった。


勇助ゆうすけ!!」


 敵がいなくなったことを確認した乃々ののは、勇助ゆうすけのもとに駆けつける。


 2人は変身を解除する。


乃々ののすまない。俺が弱いばっかりに……」


 勇助ゆうすけはあの男に言われた言葉を、乃々ののを倒せと言われたことを説明した。


「そんなことが。……でも勇助ゆうすけは悪くないよ! 元はと言えば、私が勇助ゆうすけの言葉を無視して変身したから……!」


「いや、全部俺が悪いんだ。俺の力が弱かったせいで、乃々ののは変身する羽目になってしまったし。俺の心が弱かったせいで、乃々ののを攻撃するなんて馬鹿なことをしてしまって……」


 気が付けば、勇助ゆうすけの両目から熱い涙が流れ出ていた。


「本当、申し訳ない……!」


勇助ゆうすけ


 乃々のの勇助ゆうすけを抱きしめる。


「私ね、モジシャンもじしゃんになったこと後悔してないよ。ううん、むしろ嬉しいの」


 傷を負った勇助ゆうすけが痛がらないように、優しく抱きしめる乃々のの


「たしかに最初はピンチの勇助ゆうすけを助けるために私は変身した、二回目もそうだった。でも今は違うよ。今は勇助ゆうすけの手助けをするためだけじゃない、私は自分のために戦っているんだよ」


「自分のため……?」


「私ね、勇助ゆうすけがヒーローって知って、とても後悔したの。自分の恋人は皆のために戦っているのに、私はのん気に遊んでいたなんてって。自分のことばかりで勇助ゆうすけのこと何も考えてなかったなって」


 乃々のの文字るもじるドライバーどらいばーをそっと撫でる。


「これは私なりの償いなの、今まで勇助ゆうすけが私達を守ってくれた分、私も戦う。勇助ゆうすけが戦うのなら私も戦う。勇助ゆうすけが町を守るのなら、私も守る。……ねえ、勇助ゆうすけ。私も一緒に戦っちゃ、ダメかな?」


「……モジシャンもじしゃんはとても危険な仕事だ。いつ大怪我をしてもおかしくない。それでもいいのか?」


「覚悟の上よ」


 ジッと勇助ゆうすけを見つめる乃々のの


 その瞳には固い決心の色が見えた。


 それは勇助ゆうすけにもしっかり見えていた。


「1つ約束してくれ」


「何?」


文字化けもじばけが出た時は、今日みたいに1人で戦うな。俺が来るまで変身するな。1人じゃなく2人で戦おう。俺もそうする」


 そう言って乃々ののに握手を求める勇助ゆうすけ


「半分力貸すわ、相棒」


 その右手をがっちり掴む乃々ののの手。


 今ここに、町を守る、2人組みのヒーローズが結成された。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉さくら乃々のの

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 何故か文字石もじいし無しで、赤いモジシャンに変身できる。


 どういうわけか、いし無しでカタカナかたかなを出現させた。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角えすみ勇助ゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青いモジシャンもじしゃんに変身する。

 文字石もじいしは『


 乃々ののと和解。今後は2人で戦うことを決意。

 

 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



かん一了かずあき

 年齢不詳。男性

 WワードCカンパニー社長。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣くさがき天音あまね

 18歳。女性

 WワードCカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



たいら

 40代。男性

 WワードCカンパニーの開発部社員。



・謎の男

 年齢不詳。男性。

 黒いモジシャンもじしゃんに変身する。


 乃々ののが倒した文字化けもじばけ文字石もじいしを奪って撤退。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る