プロト型のライダーのかっこよさは異常

 モジシャンもじしゃん同士の戦いから十数分後。


 乃々のの勇助ゆうすけWワードCカンパニーの社長室にいた。


 社長室には社長のかん一了かずあき、秘書の草垣くさがき天音あまね、そして……。


「やあ久しぶり、佐倉さくら乃々ののくん。そして江角えすみ勇助ゆうすけくん。そんなに息を切らせてどうした? 体調が悪いのなら、医者に診てもらった方が良いのではないかね?」


 乃々ののにドライバーを渡したたいらという男が2人を出迎えた。


 乃々ののたいらのことが気になったが、今はそれよりも大事な話がった。


「社長、お話があります」


「あの男は、あの黒いモジシャンもじしゃんは一体何だ? あんたなら何か知っているだろう!」


 2人の問いに答えたのは、たいらと呼ばれる男だった。


「あの男の名は、佐々木ささきじん。君達2人の先輩にあたる人だよ」


「先、輩?」


佐々木ささきじんくんは……江角えすみ勇助ゆうすけくん、君がモジシャンもじしゃんとして戦う前に、文字化けもじばけ添削てんさくを行っていたのさ」


 乃々のの勇助ゆうすけの顔を見る。


 彼はかなり驚いていた。


 どうやら自分の前にモジシャンもじしゃんがいたことを知らなかったらしい。


「彼が使った黒い文字るもじるドライバーどらいばー。あれはこの世に初めて生まれた最初のドライバーどらいばーさ。君達2人が使っているものよりプロトタイプだが、性能の違いはほとんどない」


 プロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばー


 乃々のの勇助ゆうすけが使っている新型と異なるのは、色と音声だけで、たいらの言うように違いはほとんどない。


「初耳だぞ。俺に先輩がいたことやそんなドライバーどらいばーがあったなんて」


佐々木ささきじんくんのことはWワードCカンパニーの間ではタブー扱いになっているからね」


 タブー、禁忌。


 つまりは話題にしてはいけないということだ。


「何かあったんですか?」


「もう1人いたのです、佐々木ささきじんさんの他にもう1人、プロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばーで変身するモジシャンもじしゃんが。名は佐々木ささき奈央なおじんさんの妹です」


 秘書の天音あまねの言葉に、2人はまた驚く。


 でももう1人先輩がいたことと、佐々木ささきじんがタブーになったことに何の関係があるのだろうか、乃々のの勇助ゆうすけは疑問に思う。

 

 2人の疑問を解決するのは社長の言葉だった。


佐々木ささき奈央なおは死んだ」


 かん社長の言葉に、その場の空気が凍りつく。


 凍った雰囲気の中で、最初に口を開いたのは乃々ののだった。


文字化けもじばけに、殺されたんですか?」


「いいえ。奈央なおさんの使っていたプロトぷろとドライバーどらいばーには生命に関わる重大な欠陥があったんです。そのせいで奈央なおさんは……」


 乃々ののの質問に答えたのは草垣くさがき天音あまねだ。


 そしてその答えに補足するようにたいらが語りだす。


「ああ、安心したまえ。じんくんのプロトぷろとドライバーどらいばーと、君達の新型文字るもじるドライバーどらいばーの安全性はバッチリだ、私が保証しよう」


「なんであなたがそんな断言できるんですか」


「ん? ……ああそうか、まだ佐倉さくら乃々ののくんには言ってなかったね。私の名は十文字じゅうもんじたいらプロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばーと新型文字るもじるドライバーどらいばーを開発したのは、私だ」


 たいらのフルネームは十文字じゅうもんじたいら


 文字るもじるドライバーどらいばーはこの男が中心となって開発されたのだ。


 十文字じゅうもんじWワードCカンパニーの開発部門責任者なのだ。


 だからこそ、乃々ののに予備のドライバーどらいばーを独断で譲渡することもできたし、社長のかん十文字じゅうもんじを強く怒れないのだ。


 また、かん十文字じゅうもんじは幼馴染で、だから役職に差があっても互いに呼び捨てしあうのだ。


 このことは乃々ののは後に秘書の草垣くさがきから教えてもらった。


「本当は戦極ドライバーのように、私の名前から取って十文字じゅうもんじドライバーどらいばーにしたかったのだが……文字るもじるドライバーどらいばーの方が語呂がいいからね、そっちにしたよ」


「いえ、誰も聞いてませんけど」


「ちなみに『トメル! ハネル! ハラウ!』や『START WORDING』などの音声は私の趣味だ。いいだろう?」


「だから誰も聞いてませんってば」


「はははすまない。1度言ってみたかったんだ、戦極凌馬のセリフ」


 文字るもじるドライバーどらいばーの名前や音声など、今はどうでもいい。


 今重要なのは佐々木ささき兄妹について、だ。


「……佐々木ささき奈央なおくんのことは私も残念だが、いつまでも悲しんでいられない。これ以上のプロトぷろとドライバーどらいばーによる犠牲が増えないよう、当時の私は新型ドライバーどらいばーを必ず完成させると誓ったのさ」

 

 続けて社長が語る。


「……だが、佐々木ささきじんは納得しなかったようだ。やつは自分と妹の形見であるプロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばー、そして研究室の機材の一部を盗んで、蒸発してしまった。どこで何をしているのかと思えば……」


 姿をくらましていた佐々木ささきじんが今日現れ、乃々のの勇助ゆうすけを襲った、というわけだ。


 乃々のの佐々木ささきじんの姿を思い出す。


 そういえばじんは妙なピンキーリングを付けていた、おそらくあれが彼の文字石もじいしなのだろう、と乃々ののは確信した。


「その先輩が、なんで俺達を襲って、文字石もじいしを奪ったんだ?」


 勇助ゆうすけのその疑問は、乃々ののも思った。


「これはあくまで予想ですが……WワードCカンパニーへの復讐ではないでしょうか?」


 天音あまねの言葉に、なるほど復讐かそれなら合点が行く、そう思う乃々のの達。


 おそらく佐々木ささきじんは、結果的に妹を殺したWワードCカンパニーを、心の底から恨んでいるはず。


 表向きではWワードCカンパニーは単なる文房具開発会社だが、その本当の姿は文字化けもじばけ添削てんさく文字石もじいしの回収という使命を担っている正義の機関だ。


 佐々木ささきじんの目的がそのWワードCカンパニーの邪魔をすることなら、現役モジシャンもじしゃんである乃々のの勇助ゆうすけを襲ったのも、乃々ののから文字石もじいしを強奪したのも、頷ける。


「……やつの目的が何にせよ、これ以上我々の邪魔をするのであれば、こちらも黙ってはいられない。江角えすみ勇助ゆうすけ佐倉さくら乃々のの、君達2人に命じる。佐々木ささきじんを制圧し、プロトぷろとドライバーどらいばーと奪われた文字石もじいしを奪還せよ」


 勇助ゆうすけ乃々ののは敬礼した。


 勇助ゆうすけじんに洗脳された借りがあるし、そんなことをしたじん乃々ののは許せなかった。


 だから2人はその命令を遂行するのに抵抗は無かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 登場人物情報が更新されました


佐倉さくら乃々のの

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。

 何故か文字石もじいし無しで、赤いモジシャンもじしゃんに変身できる。


 かん社長の命により、佐々木ささきじんと戦うことに。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角えすみ勇助ゆうすけ

 19歳。男性

 乃々ののの彼氏。

 青いモジシャンもじしゃんに変身する。

 文字石もじいしは『


 かん社長の命により、佐々木ささきじんと戦うことに。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



かん一了かずあき 40代。男性

 WワードCカンパニー社長。


 乃々のの勇助ゆうすけに、佐々木ささきじんを制圧するように命令する。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣くさがき天音あまね

 18歳。女性

 WワードCカンパニーの秘書。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2)



十文字じゅうもんじたいら

 40代。男性

 文字るもじるドライバーどらいばーの開発者。


 ドライバーどらいばーは彼によって開発された。

 

 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーデューク(レモンエナジーアームズ)


 

佐々木ささきじん

 29歳。男性。

 黒いモジシャンもじしゃんに変身する。


 妹の死により、WワードCカンパニーを恨んでいる模様。



佐々木ささき奈央なお

 享年20歳。女性

 佐々木ささきじんの妹。


 プロトぷろと文字るもじるドライバーどらいばーの欠陥により、死亡 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る