第16話 事象:ITにおける装備と役割の重要性について
俺とクラウが冒険者ギルド内にある階段で地下に降りると、案内表示通り、装備品の倉庫のような場所に出た。
圧巻だ。
壁には西洋によくある剣や、槍、ハンマー、弓――トゲの鉄球に鎖がついている見た事の無いような武器まで並んでいる。
中央の付近には防具類が展示してあった。
動きやすそうな何かの革メインの装備や、動くのがつらそうな鉄のプレートがごてごてついた鎧なんかだ。バイキングのメットのようなものもある。角が出てる兜だ。
「ようこそ、冒険者ギルドの倉庫へ。こちらではお好きな武器をお選びいただけます。ただし、お一人様武器は一つ、防具もワンセットの提供になりますのでご了承くださいね」
「は、はい……これはすげぇな。これだけ選び放題でワンセット無料とか、冒険者ギルドって儲かってんだな」
「すごいわね、これ……」
俺たちが周りを見渡して驚いていると、受付のお姉さんが咳払いをした。
「こほん、武器や鎧は冒険者の命ともいえます。私どもとしても、冒険者ギルドに入会したいと言う方を実績を積ませるためと言って追い返した挙句、丸腰で魔物に挑んで殺された、などと言う事態を防ぐためにこのような措置をとっております」
「なるほど……でもこれだけあると悩んじゃうよなー。戦闘スタイルとかも良くわからんしな」
「各職業によって得意な魔物、不得意な魔物がおります。この辺りに良く出没して、討伐の対象となる魔物といえば、やはりゴブリンでしょうか」
ああ、やっぱ居るんだな。ゴブリン。
「ゴブリンって、どんな奴なんだ?」
「アレン様はゴブリンを見たことがないのですか?」
「ちょっと訳ありでな。ここら辺の魔物とか良く知らないんだよ」
「私も良くわからないわ。教えてくれない?」
よかった。クラウも見た事無いみたいだな。
つーか日本に居たときに視たラノベとかアニメとかゲームやらに出てくるゴブリンとはやっぱりイメージ違うんだろうな。
現実にゴブリンが存在するとしたらどんななのだろうか。
ちょっと怖い気もするが、冒険者とパーティー組めばきっと大丈夫だよね。
「ええ、ではご説明させて頂きます――こういうモノです」
瞬間、部屋の隅に蒼い輪郭で出来たホログラムのようなものが現れた。
頭はデカくその口に生えている牙はびっしりと並んでいて、噛まれたらひとたまりもなさそうだ。その頭とは対照的に体は小さい。まるで化物だ。
「……えと、あれも魔術――いや、このギルド内の魔導細工で見せてるのか?」
「左様でございます。色などはこちらではわかりませんが、薄い赤茶色のような肌をしております。気性は荒く、いつも腹を空かせていて、目の前に餌があったら真っ先に喰いつくでしょう。あと、この周辺にはゴブリンほかにも――」
言いつつ、お姉さんが手元でコールをいじる。
すると――巨体が現れた。
「にゃあっ!?」
あまりのデカさにクラウがびっくりして俺の後ろに隠れてしまった。
俺の背中に感じるクラウの体温――気持ちいいなぁ――じゃなくてっ!
ヤバイ。アレはヤバイ。
角が生えた牛の頭に、ヘラクスと同等かそれ以上の人間らしき身体を持っている。だが、下半身――足は牛の後ろ脚のような作りで、だが数倍も太く、その巨体を支えるのに十分な大きさだ。
俺の何倍だろうか――こんなのと出会ったら勝てるわけがない。
「こ、これはなんですか?」
「今の季節ちょうど出るんですよね。ヴォタロスが。繁殖期になると山奥からこの魔物が子供の食料を求めてこの街の近くに居るゴブリンや人を襲いに来るんです。初心者の方は出逢ったらすぐに逃げず、息を潜めてその場を過ぎるまでじっとしていて下さい。この魔物は非常に気性が荒く、動くものすべてを攻撃するので」
「え、ええ。注意しておくわ」
「はい、それでは以上を踏まえて、どのような装備にするかお選び下さい。何と言っても使いやすいものが一番です」
そう言うと、ホログラムのようなものが消え去った。
いやぁ、心臓に悪いね。あれは。
あんなのがこの世界でうろついてんのか……。俺、ちゃんとクラウを守れるか?
いや、何があっても、命に代えても守らなければならない。なぜなら――美少女は世界の宝だからだ!!
「じゃあ、私これにするわ!」
と言いつつ、クラウが持ってきたのは――俺の身の丈ほどもある大剣。
宝が自殺志願者になっとるがな。
「ふざけんじゃねぇっ、クラウ、お前何処にそんなもん振り回せる腕力あんだよっ!」
「えぇ? だめかしら……? きゃっ」
「駄目に決まってんだろ! ほら、ふらついてるっつーのっ」
クラウが俺の言葉に反発して剣を振り上げたらふらついた。
急いで支えてやると、必然的にクラウの身体に俺が触れるわけで。
「……やっぱりいい感しょ――」
「変なこと言ったら突き刺すわよ」
「すんません」
俺が謝ると同時に、受付のお姉さんに大剣を渡すクラウ。
すげぇなあのお姉さん。片腕で受け取って棚に戻しちまった。
「あんなに軽そうに持つなんて、お姉さんいったい何者?」
「魔力を使って身体能力を強化すると容易にもてます。ですが、慣れてない方が真似をすると魔力切れになってふらついたり、重大な事故の元になりますので最初はお勧めしません。冒険者パーティーに居る方に教わると良いかと思います」
「さいですか……」
来たよ、魔力。
未だに魔力の使い方というか、魔力が俺にもあるのか疑問だが、良くわからないまんまだ。
「なぁ、クラウさん。何が得意?」
「私? 強いて言うなら、家事かしら」
「……火をつけんの?」
「いいえ、家の仕事の方よ」
「それ、戦えるの?」
「戦えないって言ってるじゃない。それでもいいっていうから、あなたとパーティー組んだの忘れたの?」
「そうだったな。男に二言はねぇ。任せとけ」
かっこいい事言ったが、内心ガクブルだ。
クラウさん死なせたらどうしよう、なんて柄にもないだろうことを考えてしまう。
不安でしょうがないが、ここは決めるしかない。
そうして、俺とクラウは悩んだ末、
俺は普通に剣を使って戦う戦士。盾もあるぞ。弓とかも使ってみたが全然目標に当たらんのでやめた。んで、魔術も使えない。
必然的にこうなるよね。
クラウは結局、
振りぬく様を見せてもらったが、本当に猫だ。
猫パンチにしか見えねぇ。
何はともあれ。
これで装備と
後は俺達を受け入れてくれるパーティーがあればいいんだが。
猫と騒ぎを起こした変態野郎なんて――受け入れてくれる奴、いんのか?
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