第11話 事象:ITにおける黒猫美少女との邂逅について

「むにゃぁっ、にゃあああっ!!」

「暴れんなっつーの!」


 黒い布で包んだ奴が暴れ回る。布の中で俺の事を蹴ってくる。いてぇ。

 だが、ここでこいつを放してしまうと、報奨金は泡となって消えてしまう。

 俺は黒い布の中身の人物の急所を探るべく、布の上から体中をまさぐった。


 ふにふに。

 ふにふに。


 なぜか一部分だけふにふにとしてとても気持ちがいい。なぜだろうか……少しばかり俺が元気になってきた気がするぞ。

 そんなことを思った瞬間だった。


 もふもふ。


 これ以上ない位の極上のもふもふ感が、俺の掌越しに伝わってきたのだ。


「おひょおおおおおおおおおおお!!」


 この感触――まさしく獣人のアレ!

 ネコ耳だぁああああああ!!

 これは好機! いや、ヤるなら今しかねぇ1!


「もふれ、もふれもふれ。もふれもふれもふれもふれもふれぇえええええええええええええ!!」

「にゃっ!? んにゃぁああああっ!!」


 優しく――されど適度な刺激を加え続ける。

 俺の本能が囁くのだ。こいつはココがいいのだと。

 その箇所は耳。しかし人間の耳のある場所ではない。頭の上――ネコ耳だっ!!


 もふもふもふもふもふもふ。


 あ、ついでにお尻とか触ろうかな。


 ふにふにふに。


 どれ、次はおっぱいを――失礼。


 むにむにむに。



―――――



 俺が一通り人気のない路地で黒い布に包まれた【獣人の少女】であろう物を気の済むまで揉みしだき、蹂躙した後、俺はやっと彼女の姿を見ることに成功した。

 否、動かなくなってちょっと心配だったから布を外したのだ。


 そうして現れたのは――カラスの濡れ羽のような色をして、少女の腰辺りまである艶めかしく輝く黒髪と、それと同色のネコ耳。ちなみに耳の中は淡いピンク色だった。そして一番目を引いたのが、俺がこれまで見たことのない位の――可愛い系の極地のようだ――、まるで神の最高傑作と言っても過言ではないその少女の顔、そして同じく、黄金の比率を保った体の造詣だった。背はそれほど高くはなさそうだ。だが、それがイイ。


「ん、ハぁ……はぁ……」

「ヤバイ。これヤバイ」


 これはヤバイ。

 一言で表すなら、ちょーヤバイ。

 うん。語彙が少なくてごめん。俺アホなんだ。


 とりあえず、不自然なまでに俺のドストライク美少女が息も絶え絶えな状態で腕の中に居た。

 右手で体を支え、上半身を抱き起す。

 下半身に目を向けたら、俺のせいで下着が丸見えだった。しっかりと脳内にその光景を焼き付け――ちなみに重要なことなので補足しておくが、彼女の下着はレースの白だった。しかもガーター付――そのめくれた、これまた肌触りがすごくいい白と黒のスカートを優しく直してやる。おそらくすごく高い衣服なんだろう。だが、今しか太ももの感触を楽しめないので、それを楽しむのも忘れない。


 すべすべ、むにむにだ。やべぇまじやべぇ。この美少女、天使だわ。


 獣人と言いつつ、やはりこの世界の住人は俺と同じく人間に近しい姿をしていた。この娘にしてもそうだ。黒い尻尾や本来あるべき場所に耳が無かったり、その耳がネコ耳だったりしてそこに毛はあるものの、他の部分は人間の女性と同じだった。


 そんな少女に思う存分触れたのだ。俺のソコは必然的に――その、アレするわけで。そのアレが彼女から布を取っ払ったときに腕に当たったりしてたわけで。

 ちょっと気まずくなったり、申し訳ない気持ちになったりして。

 そこそこある胸がはみでそうだったので直そうかと手を伸ばした瞬間――。


「んっ……」


 ぱちり、と彼女は目を覚ました。

 そして交錯する俺の瞳と彼女の瞳。

 彼女の目の前には、自分の胸元に手をかけている俺。つーか変態。

 きっと俺の顔は先ほどまでの高揚感と、興奮で顔は真っ赤。しかも彼女を取り押さえるために少しばかり体力を使ってしまったので息が荒い。


「はぁ、はぁ」


 そんな男が目を覚ましたらいきなり隣にいたのだ。しかも自分の胸を触ろうとしていると誤解しかねないところまで手を伸ばして。


「きゃぁあっっむぐ、むぐぐぅ!!」


 ま、当然叫ぶわな。けど、こっちは叫ばれると困るわけで、急いで口を片手でふさいでやる。必然的に彼女を頭から抱え込むような体制になってしまうわけだが……いい匂いだっ!

 おっと、話が脱線したな。

 ここで兵士たちに見つかる訳にはいかない。このままじゃ俺は確実に牢屋にぶち込まれる。最悪死刑だ。


 それくらいの判断はついた。

 あー。なんだ、頭がすっげぇクリアになってきたぞ。


「……落ち着け……落ち着いて俺の言うとおりにしろ……」


 思いっきり低い声で彼女のネコ耳に囁いてやる。

 すると彼女は――


「ふぁっ」


 びくびく、と体を少しばかり震わせておとなしくなってくれた。

 素晴らしい。なんて聞き分けの良い少女なんだ。嫁にしたい。


「やっと落ち着いたか……」


 俺が彼女の身体を支えつつ、立ち上がる。

 最初はフラフラとしていて直立状態も維持できない位だったが、しばらくすると治ったようで、俺の事を鋭い目つきで睨んできた。

 キッ、とか擬音がつきそうだったが、なんだろう。全然怖くない。むしろかわいい。嫁に欲しい。


「何すんのよっ、この馬鹿!」

「おいおい、こんなイケメン捕まえといてそりゃないだろう」

「ふざけんじゃないわよっ! そりゃあんたの事つけてたのは悪かったけど! なにも――その、あそこまで揉みくちゃにしなくてもいいじゃない!!」

「君のいう事はもっともだが、俺にも言い分はあるんだ。まずは落ち着こうぜ☆」

「これが落ち着いていられると思ってるの!? 今まさに私、あんたに襲われてたのよ!? 分かる!?」

「襲われてたんじゃない。俺はただ、つけてきたっていう悪事を働いた君に付け込んで、体を少しばかり堪能させてもらっただけじゃ――」

「変態!」


 すかさず俺の顔面に猫パンチが来た、いや、可愛い言い方しただけでただのパンチなんだが。

 痛くない。

 なぜだ。

 ああ、痛さより触れて来てくれた嬉しさの方が上だからか。ははは。


「ははは! もっとだ。もっとくれ!」

「えぇっ!? なんなのよあんたっ! 馬鹿じゃないの!?」

「ふぅ……なんだ、してくれないのか」

「……ホントになんなのよ、あんた……」


 どうやら彼女の方も言いたいことを全て言い終えてクールになったようだ。今だ。今しかない。このタイミングが今後の俺と彼女の関係を決める決定的なものだっ!


「なんなの、と聞かれたから答えるぞ。俺は冒険者ギルドに行こうとしていたアレンだ。そして君が好きだ愛してる。結婚してくれ」

「うっさい!」


 立ちあがって密着した状態から、彼女は右足をものすごい振りかぶって俺の脛を蹴ってきた。

 痛くねぇや、ははは!


「どうして君は俺の事をつけて来てたんだ?」

「……ぁ、ん、気持ちいっ……! ねぇちょっと! 人に物を尋ねるときにお尻とか胸とか触りながら聞くわけ? 強姦で訴えるわよ!?」

「あぁ、悪い! 道理で手が昇天するほど気持ちいいかと思った!」

「あんた自身を昇天させてやるわよっ!」


 思いっきり蹴ってくる黒猫少女。とまらない俺の手。

 まずい、離れないと手が勝手に彼女の身体を欲してしまう。

 一体どうしたんだろうか俺の身体は。こんなに欲望に忠実な身体だったかな? いや、結構欲望に忠実だったな俺の身体。


 そう思い、少し彼女から離れようとする。

 だが、どうしたことだろうか。一歩後ろにさがったら、彼女が俺に合わせて一歩前に出てきた。密着したままだ。なんだこれ。


「え……離れないの? 君」

「うっさいわね! 腰ぬけてんのよ! ちょっと落ち着くまでそうしてなさい!」

「あ、ああ」


 どうやら彼女は動けないらしい。

 立ち上がりはできるがどうやら支えてないと崩れ落ちそうだった。


 さて、どうしたものか。

 これじゃあ兵士に突き出すなんて論外だ。

 まずはこの黒猫美少女からナゼ俺を尾行してきたのか聞きだすとするかな。


 そういえばここを曲がってくる途中に喫茶店があった。今の手持ちなら紅茶の一杯くらいだったら彼女に奢ってやれるな。お茶でもしながら、ゆっくり話を聞きたい。


「なぁ、君、そこの通りにある喫茶店で紅茶でも飲むか?」

「……あんたのおごりよ」

「はは、分かってるさ。君に聞きたいこともあるし、じゃあ、ちょっと移動しようか」

「ちょっ、何よいきなり……!」

「え、俗に言うお姫様抱っこ?」

「ふざけんじゃないわよ! 降ろして!」

「はは、腰ぬけて動けないくせにぃ。ほら、パンツとかはこの黒い布と俺の服で隠してやるから」

「やん、ちょっと、どさくさに紛れてお尻とか太ももとかさわんないでよっ!」

「ははは、体が勝手にな。ま、喫茶店に着くまでの辛抱だ。我慢してくれ」

「我慢してくれじゃないわよっ! 何!? まさかこのまま喫茶店行く気なの!? 馬鹿なの!?」

「……。問題ないだろ?」

「問題しかないわよっ!!」


 にゃーにゃー可愛いなぁ。

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