第25話 事象:ITにおける秘密いっぱいな旅の仲間たちについて

 あれから俺は部屋に監禁された。


 いやまぁ、監禁っていっても手錠をされてたり鎖でつながれている訳じゃない。

 軟禁だな。


 なぜ俺が軟禁されたのかと言うと――クラウさんへの狼藉は赦されていたのだが、俺が矢継ぎ早にマリーさん、エリスちゃんとイチャコラしていたのが気に喰わなかったらしい。いや、誰が気に喰わないのか聞いてないから、誰が俺を監禁しようなんて言ったのかは分からんが。


 マリーさんとクラウさんに、エリスちゃんが俺の部屋から出ていくのを目撃されてすぐ、明日は部屋から出ないで私たちに説明する事、と釘を刺されたのだ。


 よって、今日は二人に俺の言い訳を聞いてもらう日だと説明された。ハットリに。

 というか、ハットリは俺の事を許しているらしい。俺が誰に手を出しているのかは興味が無くて、ただ単に筋のいい弟子くらいにしか思ってないらしい。知ってたけど。


 とにかく、今日は言い訳を聞いてもらえる日なわけだ。

 俺の言い分を聞いてくれる日――のはずなのだが。


「死刑よ」


「そんなご無体な!! まだ俺何にも言ってねぇし!!」


 全然聞いてもらえてねぇ!

 なんだこれ!


「うるさいわね。アレンが悪いんじゃない! こんな得体の知れない女とか、私じゃない獣人の女の子捕まえてきて、あ、あまつさえ、あんなにあの子の顔紅くさせといて! それでも無罪を主張するっていうの!? ふざけんじゃないわよっ!」

「……そ、それは――その。俺の意志じゃない、というか、いや、これも違うな……と、とにかく俺が自分自身で進んでヤってやるぜっ! って思ったわけじゃないんだ! 全部俺にかかった『呪い』のせいなんだ!」

「呪い……でース?」


 ハットリの眼がなんだか鋭いような気がした。

 だが、今はそんなことを気にかけている余裕はない!

 ここは、マリーさんに呪いを説明してもらった方が説得力があるはず!


「そ、そう、呪いなんだ! マリーさん! 説明をっ!」

「アレンは黙っててっ!」

「えぇ!? 俺の事責めてんじゃないの!? この流れで俺黙れってどゆこと!? クラウさん時たま意味わからんぞ!?」

「……黙れ」

「はい……すみません」


 やべぇ。クラウさんガチでキレてる。

 逆らわない方が身の為だ。

 だが――その目も堪らなく俺は好きだ。

 興奮しちゃう。はぁはぁ!


「……で、マリー……だっけ。貴女も貴女で昨日は私たちに説明どころか、アレンが部屋を出たらいきなり爆睡しちゃったわけだけれど……あなたについても、アレンのいう呪いについても、説明してくれないかしら?」

「はい。それではアレンさんの成り立ちから説明しましょう。まず、アレンさんの両親がセッ○スして――」


 おいそこの駄女神。何言ってんだ!

 つーかいつまで俺正座してりゃあいいんだ?

 崩しても、いいかな?


「ちょっと! あんたふざけてんの!?」

「あれ? こういうのに興味があるのかと思ったんですけど? クラウは違うんですか?」

「……私は、マリーと、アレンについて聞いてんの、よっ!」


 あぎゃあああああ!

 クラウさんに正座してる太もも踏まれたぁああああああ!

 じんじんするぅ! じんじんするぅ!


「あぁ……クラウさん? それ、アレンさんにはご褒美みたいですよ? ほら、よだれ垂らしてるでしょう?」

「……コイツ……」


 だめぇ、ぐりぐりしちゃいやぁ!

 興奮しちゃう!!


 以下、割愛する。


―――――


 そして、俺が悶絶する中、マリーさんが俺の呪いについて説明してくれた。


「――変態」

「分かってたさ。俺の呪いの説明聞いたら絶対そうなるって知ってたさ。でも、でも、もう少しこう――なんていうかさ、憐み、みたいなのってないか?」

「ハン、可哀想に」

「なんでそんな高圧的な可哀想にっていう言葉になるの!? というか可愛い! 結婚してくれ!」

「この、バカアレン!!」


 あはは! もう蹴られてもぐりぐりされても痛くねぇぞ!!

 むしろ気持ちいい! カモン!! あ、パンツ視えた!!


「クラウ。パンツみえてるでース」

「っ!?」

「さてと、クラウさんのサービスカットが済んだところで、私の話をしましょうか」

「誰が、何のサービスですって!?」


 眼福眼福。

 そういえば今日のマリーさんはまともな格好している。

 普通の服を着ているのだ。ローブっぽい服だけど、魔術師っぽく見える。

 ピタっとしているそのローブを見ると、そのスタイルが強調される。体つきが改めてとてもいいのが良くわかる。ぼんきゅっぼんを地で行く黄金のスタイルだ。


「私は、アレンさんの嫁です。第一夫人です」

「何言っちゃってくれてんのマリーさん!? 嘘だから! ねぇクラウさん信じてくれ! 嫁にするならクラウさん一筋だからっ」

「……どうでもいいわ。マリー。貴女の目的はなんなの? 貴女は何処から来たの?」

「それは、ワタシも気になりま―ス。聞かせてくださーイ。マリー」


 どうでもいいんかい!

 ちょっと、泣きたいんですけど。


「……どうでもいいとか、悲しいぞ、俺は……うぅ」

「『聖剣』さんに『混血』さん。貴女たちにも知られたくないヒミツ位あるでしょう?」

「どこまで知ってっ……!?」

「なるホド。そう来るでース?」


 ん? なんか空気が重いぞ?

 つーか今何て言ったマリーさん。


「今なんていったんだ? マリーさん」

「互いの事情を詳しく知らなくとも、冒険者パーティーを組む上では一蓮托生じゃないですか。誰にでも触れられたくない過去位ありますし、彼女たちにもそれがあります。ですから、このままでいいじゃないですかって話です。最低限のアレンさんの呪いについては説明しましたし」

「いいわけないでしょっ! マリーが知ってるソレは、いったいどこで手に入れた情報なのよっ! アレン、答えて!」

「……悪い。クラウ。俺にもマリーさんが言っている事が正しいように聞こえる」

「ちょっと、アレン! あなた、なんでもするって言ったじゃない!」

「そうでース。その女、ワタシの秘密を知っているようでース。その説明を求めまース」

「……。まぁまぁみんな。落ち着けって。

 俺にはよくわからんが、みんな何かしら抱えてるみたいだ。クラウさん、ハットリ、マリーさん。それに俺。全員、言えないヒミツがある。

 なら、それでいいじゃないか。

 どうせこの集まりを解散したら、個人でまた仲間を集めなきゃならん。マリーさんに至っては二人の秘密を知ってそうだが、二人も、こんな女を野放しにしておくわけにはいかないだろ?

 だから、ここは折り合いをつけて、一緒にとりあえず冒険者パーティーとしようじゃないか。

 二人はマリーさんを監視できる。マリーさんは二人の事情を少なからず知っている訳だから、二人にとってはこれが一番自分の安全を保障できると思うんだが、どうだ?

 あと、マリーさんが二人の秘密を他の人に暴露しないとここで誓えばいいわけだろ? マリーさん。誓ってくれるか?」

「――アレンさんが、そういうのでしたら、私、この命に代えてもお二人の秘密は口外しないと約束しましょう」


 ふぅ。

 俺に言えるのはここまでだ。

 この先どうなるかは、知らん。

 解散するんなら、仕方がない。俺が悪いんだから。


「……納得いかないけど、納得したことにするわ……。確かに、私はここを出たら他にパーティーを組んでくれるところはないから」

「ワタシもそれで納得しまース。その代わり、マリーの故郷だけ教えてくださーイ。殺さなきゃいけないかもしれないでース。『掟』なのデ」


 なんと、ハットリが物騒な事言ってんだが。


「私ですか? 信じる信じないは別ですが……この世界ではない事だけは確かです。なぜなら私はエリアンテネット――元、女神なんですから」

「えっ、マリーさんそれ言っていいのか?」

「私が話したくない事、というのはこれではないので。隠してもしょうがありません。それに、真の名を明かしてもこの人たちには理解できないでしょうし」

「……なに? 女神、ですって?」

「女神……でース?」


 あらら。

 二人とも混乱してるよ。


「アレン、本当なの? マリーが勝手に言っているだけじゃないの?」

「……マリーが女神なのは本当だ。ちなみに、俺もこの世界の出身じゃない。俺とマリーさんは、ここじゃない別の世界から来たんだ」

「なるホド。だからアレンは忍者を知っていたんでース。納得したでース。クラウ。ワタシが保障しまース。マリーは女神でース」

「な、ハットリまでそんな…………もうっ、分かったわよ。マリーは元女神なのね? そういう事にしといてあげるわよっ。」


 ははは、なんとか落ち着いて話ができたな。

 やれやれ、パーティーをまとめるのも大変だ。でも、三人とも聞き分けが良くてよかった。


 みんなが微妙な雰囲気を持ちながらも、うまくまとまったと思う。

 これからの冒険者生活をしていく中で信用とかを勝ち取れればいいな。マリーさんに俺にせよ、別世界からってのはクラウさんにはまだ信じらんないだろうし。


 口で言ってるのと、心で思ってることは絶対違うはずだから。


 ここが正念場だと思う。

 俺が、しっかりしなきゃね。

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