第3話 事象:ITにおける女神の存在について
「は? 説明を求めるんですが」
アホみたいに口を開けて言うと、目の前の女神っぽい女性は片手で頭を押さえる。
あ、もうちょっとで横乳からアレがみえそう。
「はぁ……めんどうな。いいですか? 時間がないから端的に説明します。一発で覚えて、理解して決断して決心して下さいね」
「めんどうって言った!? ねえ、今面倒って言ったよな!?」
なんだかよくわからないが、時間がないらしい。女神っぽい人も大変ですな。
なんて、他人事のように思っていた。なぜなら、今は女神っぽい人の横乳を凝視してるから忙しいんだ。
「ええ、面倒ですよ。まったく……。貴方は死にました。なぜかと言うと、世界の根幹たるシステムである【死者の選定】に不具合が生じたからです。世界の根幹のシステムってなんだよ、とか質問は一切受け付けません」
「ふーん。あ。視えた!!」
片腕を下ろした時に、身に纏っていた一枚の布がちらりとはだけ、その豊満な乳がさらけ出された時、俺はばっちりと脳内に記録を残した。永久保存版だ。
だがあまりの嬉しさに――視えた、と口走ってしまったのが運の尽きだった。
「――っ!!」
ばっ、とおっぱいを隠す女神っぽい人。
「こ、こんな非常事態に人のむ、胸を見るなんてあなた本当にアホですね!!」
「もう一回! ねえもう一回!!」
「……」
あ、そんな冷めた目で俺を見ないで! へんな性癖に目覚めちゃうだろ。
ばちん、と頬を叩かれた。
びんただ。
痛くねぇのはなんでだろうか。
これが死んでるってことなのか、と思い――俺はなんの感想も抱けなかった。
ああ、そうなのか。としか思えない。
「……。もう本当にダメですね。あなた」
「で? 俺が死んだ理由がわけわかんない世界のシステムが誤作動したせいだってのは分かった。なんで俺ここにいんの? なに、お詫びに胸見せに来たわけじゃないんでしょ?」
「なんでそんなに冷静なんですかっ!! あなた頭おかしいんじゃないですか!? ちなみにあなたに胸を見せる気は髪の毛一本程の気もありませんでしたよっ!! セクハラで訴えますよっ!?」
「はは、なにを言ってんだか。見せてきたのはそっちじゃんか。ほら、落ち着かないともっとはだけてチラッチラッしちゃうぞ?」
「くっ――これだからこんな変な衣装は嫌だって言ったんです……。やっぱりあのクソ神は一回シめないといけませんね……」
なにやら女神っぽい人――ああもう面倒だ。マリーアントワネットみたいな名前だったからマリーでいいや。
「ねえマリーさんさっきから話が進んでないんだけど。時間ないんじゃなかったの? 早く俺を家に帰してくれ。今日は鍋なんだ」
「……こっちはこっちで本当にクズばかり……だれがマリーさんだ……。ああもう、本当に時間ないんで細かいことはどうでもいいです!! 残念ですが、あなたは元居た世界に戻れません! バグの影響であなたの魂ごと【世界線】が変更されてしまったんです! そして、変更された世界線にあなたは転移することが決まってしまっているんです!」
そこまで早口で言い切ったマリーさんは、『どうだほら、喚き散らして己の不幸をぶちまいて無様な姿をさらせ』とばかりに優越感に浸った目を向けてきた。
どんな女神だよ。
「へー。そっか。そりゃ大変だねぇ」
むかついたのでそう吐き捨ててやった。
「へ……? いや、だから元の世界には戻れないんですよ? 鍋とか食べらんないんですよ? 親御さんとかとももう会えないんですよ?」
はは、そんなこと気にしてたのか。
だが甘いぜマリーさん。俺のメンタルはそんなことじゃ揺るぎはしないのさ。
「はっ、そんなことどうだっていい。とうに覚悟は決めてるんでな。大体人間いつかは死んじまうだろ? それが今になっちまったってだけで、それだけの話し――、あ? まてよ。マリーさん転移って言った?」
「……私の名前はマリーさんではありませんが、もういいですそれで。はい、転移です。しかもあなた方の元居た世界とは全く違う世界のようです」
「……そそそそ、そっか。このまま違う世界に放り出されるってそんな冗談いわないよね?」
「……くす」
「笑うなマリーさん!! ちょ、ちょっとどもっただけじゃないか!!」
「だって、見るからに動揺しちゃって……ふふふ、私の胸を見た罰ですよ」
くそ、と俺は顔を赤らめるが後悔してももう遅い。
かくなる上は――!
「あぎゃあああああああああ! 胸揉ませろおおおおお!!」
瞬時に背後にまわり、俺はマリーさんの胸を鷲掴みにした!!
「いやあああああああああああ!! 何考えてるんですかこの変態――! あっ、やん、そんな激しくしちゃ、らめ、らめぇぇぇええっ!!」
もみもみ、くにくに、こりこり。あふれんばかりの豊乳を弄ぶ。
びくんびくん、と体を小刻みに震わせるマリーさん。
その反応が面白くて――つい、やりすぎてしまった。
―――――数分後。
「……ひく、ぐす」
「……いや、泣くとは思わなかったんだ。すみませんごめんなさいもうしません」
「うぅ、私、もうお嫁にいけません……」
やっちまったとまたもや後悔するが、もうどうにでもなれって感じだ。
死んじまったんだから何しても良いじゃんって考えたはいいけど、こりゃ俺地獄行き決定かなぁ。
マリーさん身体抱えてもう俺の事警戒しっぱなしだし。
ちら、ちらちら。
なんかほらチラチラ俺の方見てくるし。
なに、その物欲しそうな目は――!?
「も、もうやめちゃうんです……?」
「ああああああああああああああああああ!! これ以上はまずいぞマリーさん! あんたは強○されて感じちゃう痴女か!? 勘弁してくれ! 俺は嫌われるのは慣れてるけどこういう反応は苦手なんだ!! ホント申し訳なかったすみません!! なんなら地獄に落としてくれてもかまわない!!」
俺はお得意の五体投地でマリーさんに非礼を詫びた。
そしたらなんと――
「初めて私の……その……、胸に、それも直に触った殿方が貴方だなんて……。もう、これは責任とってもらうしかありませんね。――と、言いたいところなんですが、続きしてもらいたいなぁ、なんてことも言う訳にはいかないんですよねぇ。残念ですけど。もう時間みたいです」
「は? まだなんも説明されてないよ? 俺」
「時間ないって言ってるのに、私に夢中になるからでしょう? 自業自得です」
「え、だって物語としてこれ成立しなく――」
「はい時間切れ。じゃあねー♪」
えええええええええええええええ!?
そんなこんなで、俺の異世界転移だかなんだかわからない物語は幕を開けた。
チート持ちだか、才能持ちなんだか、そっくりそのままの姿なのか。
なにも、分からないまま。
女神から得た情報は二つだけ。
一つは俺は世界のバグで死んで、元とは違う世界へ転移するという事。
そして二つ目は――女神は手籠めにしちゃえばチョロインだって事。
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