第7話 当事者、キレる。



「これは……一体……」



 僕の目の前に広がるのは見慣れた街の景色ではなく、見渡す限りの瓦礫の山だった。


 その中心では今もエリーゼ達前衛陣が必死で彼女との死闘を繰り広げている。



『……ダ……ィダー……』



 どうしてこうなった。


 何がいけなかった?


 僕は必死に思考を巡らす。



「リーダーッ!」


「な、何だい?」



 余りにも現実離れした光景に僕は我を忘れてしまっていた。



「一旦下がるぞ。このままでは回復が間に合わぬッ」



 普段は冷静なマルカルロが声を荒げた。


 それ程まで事態は深刻だった。


 後衛陣のほとんどが建物の倒壊に巻き込まれて重症を負っており、暴れまわる彼女を抑え込むのに前衛陣が一人、また一人と倒されていた。



「一旦引くッ! 最後尾しんがりは僕が務めるッ!」



 剣を抜き、僕は彼女に視線を向けた。



「…………ッ!」



 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。


 彼女は……笑っていたのだ。




 ***




 討伐作戦2日目は、まだ夜も明けない未明から作戦を開始した。


 彼女が油断している隙を攻める。


 所謂いわゆる、奇襲作戦だ。


 昨日の戦闘で正面からの攻撃は全て効果が無いことはわかっていた為、奇襲からの遠距離攻撃を軸に作戦を企てた。



「作戦開始ッ」



 僕の指示で、彼女を囲う様に配置したメンバーが一斉に魔法と弓で攻撃を仕掛けた。


 そして、全ての攻撃が安らかに眠る彼女に直撃した。


 奇襲は成功、全員がそう確信した。


 しかし、爆煙の中には至極苛立った様子の彼女が佇んでいたのだ。



『……全員しばくッ』



 何かを呟くと、彼女は気が触れた様に無差別に暴れ始めたのだ。



『私(ウチ)はな、無理矢理起こされるんが一番ムカつくねんッ!!』



 街を破壊しながら、彼女はそう雄叫びを上げていた……



 __________________________________


粗暴者チンピラカオルのMK5】


・自分が馬鹿にされた場合。特に『馬鹿』という言葉に反応します。


・朝、無理やり起こされた場合。← New!!


・????



 ※MK5とは…『マジでキレる5秒』までの略称です。


 __________________________________


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る