第4話 お調子者、傭兵ギルドへ行く!



「両方ともに登録したらアカンのか?」



 いがみ合っているサノワイケメンアイヴァンのんべぇに私はふとした疑問を尋ねてみた。



「あー、それはですねー……」



 サノワイケメンの話によると、傭兵の活動が冒険者の規約に違反するらしい。


 傭兵は『対人』の依頼を受け持つのが主な仕事だ。


 故に、人をあやめることもあるし、依頼の中には略奪を黙認するものもある。


 一方、冒険者は『対魔物モンスター』の依頼を受け持つのが主な仕事だ。


 人間よりも凶暴な魔物モンスターを相手にするのだから、人間なんて容易くあやめる事ができる。


 それを防ぐ為に、規約で殺人や略奪行為の一切を禁止しているのだ。



「ともかく、酒場ここで話していてもらちが明かないですので、各ギルドにカオル様をお連れして説明するのはどうでしょう?」



 二人の遣り取りに痺れを切らしたヴィエールクソジジイの提案に、サノワイケメンアイヴァンのんべぇは納得した様子だった。



「ほんじゃ、行こか」


「「「え?」」」



 立ち上がった私に、御三方は驚いた様な表情を浮かべた。



 …………。



「……私はこれで失礼します。また後日、どちらのギルドに所属するか返答をお伺いに参ります」



 今から私がギルドに向かう事になり食事会はお開きとなった。


 しかも、酒場ここの飲食代はヴィエールクソジジイが払ってくれた。



 お会計の時にヴィエールクソジジイは一瞬固まってたけど、いくらやったんかな?



 正規兵を連れてヴィエールクソジジイが先に帰ると、サノワイケメンが意気揚々と私の前にやってきた。



「今日は、傭兵ギルド僕のところを見学して行ってよー」


「うむ。今日は遅いので冒険者ギルドわしのところは明日参られよ」



 サノワイケメンが私を誘うとアイヴァンのんべぇは、どうぞどうぞとサノワイケメンに先を譲った。。


 まあ十中八九、いい感じに酔ったから今日はもう仕事はしたくないって所だろう。



「それでは先に失礼する」



 そして、アイヴァンのんべぇもフラフラっと一人で帰って行った。




 ***




「じゃじゃ〜ん! ここが傭兵ギルドです!」


「「「おぉーーッ」」」



 サノワイケメンが大げさに傭兵ギルドの建物を紹介すると、子分アホどもはそれに感心して頷いている。



「なんか思ってたのとちゃうなー」



 ギルド内は酒場の様な食事処となっており、沢山のテーブルが用意されている。


 酒場と少し違うのはその奥に受付があることだ。


 しかし、どのテーブルにも誰も座っていない。ギルド内はもぬけの殻だった。



「マスター。戻ってたんですねー。ってあれ? お客さんですかー?」



 受付にいた女性がこちらにやって来て、サノワイケメンに話しかけている。



 何だ、この女こいつサノワイケメンに色目使いやがってッ。



「サノワさん。その人、誰なんですかぁー」



 私はサノワイケメンの腕にワザとらしく抱き付いて見せた。


 すると、彼女は少しムッとした表情で私を睨んだ。



「ああ、モニカ。こちらは『あの』カオルさんだ。カオル、こっちはモニカ。ギルドうちで受付をやってくれている子だよ」



 私はニッコリと彼女モニカに微笑んだ。


 しかし、彼女は私の名前を聞くなり、顔を青くしてブルブルと震え始めた。



「え、あ、その……は、はじ、はじめまして……モニカと、もも申します……」



 明らかに私に対して怯えている。よく見ると彼女モニカは眼鏡を掛けたいかにも優等生といった感じの女の子だ。


 そしてどう見ても、彼女と私は絶対に相入れる事はない人種だ。



「丁度良かったー。モニカ、カオルにギルドここを案内してよー。僕は彼女に渡す資料を取ってくるからさー」


「ぇえ!? あ、ちょっと、ま……」



 それなのに、サノワイケメンはそう言い残すとモニカを置いて受付の奥に姿を消した。


 残されたモニカは、絶望に満ちた表情で立ち尽くしていた。



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【登場人物紹介】


【モニカ】

 バーウィッチ傭兵ギルド職員 女 17歳


 バーウィッチに店を構える小さな商家の娘。

 計算能力や事務処理が得意だった為、現在のギルドマスターに引き抜かれて働いている。


 ギルドマスターに恋する17歳、突然の恋のライバル登場に焦っている。



 ダラム談

 「大人しそうな見た目と凛とした立ち振る舞い、嫁に貰うなら彼女みたいな娘だな」


 ヤヌック談

 「三つ編み、眼鏡、巨乳。たまらんッ!」


 ジョゼ談

 「俺は年下に興味はないッ!」


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