第7話 チンピラ、買い物に行く!



「姐さん。どういう事ですか!?」



 店に入って来るなり、ダラムは大声を張り上げて尋ねてきた。



「何やねん。喧しいで」


「いやいやいや。呑気にエールなんて飲んでる場合じゃないですよ!」



 本日10杯目のエールを注文しようとする私にダラムは割って入ってきた。



「姐さん。ルアク傭兵団のナンバー4を倒したらしいですね」


「あんま、大した事なかったで」



 どうやらあの傭兵ヴァレオンはルクア傭兵団でも強い方だったらしい。


 確かに少々てこずったが、それ程強くは無かった気がする。



「や、やばいですよ。絶対奴らお礼参りほうふくに来ますぜ」


「へぇー」


「へぇー。じゃないっスよ! どうするんですか!? 構成員200人越えの傭兵団にどう考えても俺たちじゃ勝てないっすよ」



 成る程、どうりで店にいる連中子分共がお通夜みたいに沈んだ顔しけたツラしている訳だ。



「別にお前らは相手せんでええやろ。私が始めた喧嘩なんやから」


「で、でも、そういう訳には……」


「男がグダグダ言うなッ!」



 確かに、得物を持っているだけで、あれだけ苦労したのだ。


 素手1人で得物を持った200人も相手にするのは相当骨が折れるだろう。



「確かになぁ……」


「姐さん?」


「よしッ、行くぞ! おばちゃーん、おあいそーッ!」




 ***




「んー、どれがええかな〜」



 私はダラムを連れて武器屋に来ていた。


 素手で得物と対峙するのは一苦労だが、得物と得物なら攻撃も得物で受ける事が出来るし、その際に間合いを詰める事が出来ると思ったのだ。



「これとかどないやろ?」



 私が手に取ったのは『モーニングスター』のような柄と棘が付いた鉄球の間を鎖で繋いだ武器だ。



「これやったら、攻撃は鎖で防げるし、振り回したら近寄って来れんし、めっちゃええ感じちゃう!?」


「流石、姐さんっス! 完璧ですね!」



 私が顔を輝かせて尋ねると、ダラムも顔を輝かせて頷いている。


 これで決まりと私達は納得し店主の元へ新しい相棒モーニングスターを持って行った。



「それじゃあ、金貨10枚頂くよ」


「はぁあ!? ボッタくってるやろ!」


「戯けッ! 適正価格だ!」



 完璧に予算オーバーだった。


 武器なんて、銀貨5枚くらいで買えて、高くても金貨1枚くらいだと思っていたのだ。



 …………。




 ***




 武器屋からの帰り道、私は上機嫌で歩いていた。



「なぁなぁ! ここに隠してたら女スパイみたいで格好良くない?」



 結局、予算内で買えたのは少し丈夫な初心者向けの短剣ショートソードだった。


 私はそれをスカートの中に隠すように身に付け、ダラムに見せた。



「姐さん……」


「ま、まぁあれや、無いよりかはええやろッ」



 そんな顔をするな、コレは仕方ない事なのだ。


 武器なんか買うよりエールを飲む事の方が私にとって大切なのだから。



『いたぞッ!』



 突然、怒号と共にこちらに向かってくる沢山の足音が聞こえて来た。



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【購入履歴】


護身用の短剣ショートソード 銀貨8枚


※カオルが破壊した長剣ロングソードは金貨2枚


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