第11話 勇者様(仮)、チンピラとして生きるッ!



 偉いさん達が来てから、丁度一ヶ月後。


 再び、正規兵を引き連れて御三方が酒場ここにやって来た。



「……なのです」



 相変わらず、ヴィエールクソジジイの話は無駄に長い。


 結局その間、前回と同じようにサノワイケメンは料理ばっかり食べてるし、アイヴァンのんべぇはひたすらエールを飲んでいた。


 少し変わった事といえば、私が視線を向けると、サノワイケメンアイヴァンのんべぇもピクリと反応して私を見る事くらいだろう。



「それで、前回の話なのだが…「それな、やっぱええわッ」」



 ヴィエールクソジジイがようやく長談義むだばなしを終えて本題に入ったので、私は単刀直入に結論だけ話した。



「ふむ。」


「えッ?」


「なッ!」



 私の言葉に、三者三様の反応だった。


 ヴィエールクソジジイ顎鬚あごひげを撫でながら。


 サノワイケメンはフォークを落とし。


 アイヴァンのんべぇはエールを吹き出して。



「だって、どれもメンドイやん」



 それが私の答えだった。


 傭兵ギルドの各種資料はヤヌックが全て目を通して、私に説明してくれたが、規約が多すぎて初っ端で脳が拒否反応を示した。


 冒険者ギルドは最初はGランクから地味な依頼を沢山しないといけないと聞いて至極面倒だったので諦めた。



「ちょっと待って下さい。貴方は傭兵ギルドに必要な人材なのです」


「子分達が仕事してるから、人材不足ではないやろ?」


「ッう、……確かに」


其方そなたの力は、この世界の為に使われるべきですッ!」


「今は魔王さんも居らんらしいし、ウチよりもやる気ある冒険者(ひとら)がおるやん」


「…………。」



 私の返答に二人はぐうの音も出ないようだった。



「っという事ですので、話し合いはここまでになりますね」


「わざわざ、来て貰ったのにすまんなー」


「いいえ。カオル様の今後のご活躍とご健勝をお祈り致しております。それでは」




 ヴィエールクソジジイは一通りの挨拶を終えるとそそくさと帰って行った。


 勿論、お代はヴィエールクソジジイ持ちだった。



「サノワも、おっちゃんも、ごめんなー」



 ヴィエールクソジジイが帰った後も、テーブルに残っていた二人に、私は声を掛けた。


 すると、ようやく二人は顔を上げた。



「カオル、無茶はするなよ」


「うむ。詳しくは言えぬが、儂はずっと其方そなたの味方じゃぞ」



 なんだが含みのある言い方をして二人はふらふらと酒場を後にした。




 ***




 翌日、お尋ね者として私に懸賞金が懸けられた。



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