第8話 お尋ね者、一線を越える?



 昨日の事もあり、私はいつもより遅い時間に酒場に行った。



「あ! 姉さん。今日は遅いッスねッ」



 既に、ダラムとヤヌックはいつものテーブルで飲み始めており、私もいつも通りテーブルに着いた。


 不意に、私は視線をヤヌックに向けた。



「ん? ヤヌック、怪我はどないしたん?」



 昨日は見るに堪えなかったヤヌックの痛々しい腫れや痣が無くなっていた。



「あ、回復薬ポーションを使ったんですよ」


「え? ヤヌック、回復薬ポーションを使うほどの怪我をしたのか?」



 私とヤヌックの会話を聞いたダラムが驚いて尋ねた。


 しかし、ヤヌックはその話題を何となく誤魔化して、いつの間にか違う話をしていた。


 勿論、私もこれ以上昨日の話を思い出したくなかったので、それ以上突っ込んで話はしなかった。




 ***




「そういえば、この街にオーガが現れたらしいですよッ!」



 突然、思い出した様にダラムが興奮した様子で話し始めた。



オーガ



 異世界ここに生きる魔物モンスターの一種で、巨大な身体、凶暴な性格、そして最たる特徴が怪力である。


 一流の冒険者でさえ、苦戦すると言われているオーガは、様々な生を蹂躙する非常に危険な魔物モンスターだ。



「それが、昨日の晩にヴィエンヌ商会に現れたって言うんですよッ」



 ヴィエンヌ商会それの名前が出た瞬間、ヤヌックはビクッと反応した。


 しかし、それに気がついていないダラムは話を続ける。



「突然現れた、オーガは商会で暴れまわり、最終的に商会の建物を破壊して去っていったらしいんだが……ん?」



 ダラムが話をしていると、いつの間にか正規兵おかみが私たちのテーブルにやって来ていた。



「カオル=アサヒナ。貴様は昨晩、どこで、何をしていた?」



 突然の正規兵おかみの質問に、ダラムが訳が分からないと私と正規兵おかみを交互に見比べている。



うちは…「姐さんは酒場ここで俺と遅くまで飲んでましたッ! ねぇ、ローズリーさん?」」



 私が話そうとすると、ヤヌックが慌てて割り込んできた。


 話を振られた従業員おばちゃん何故なぜか頷いている。



「それは事実か?」



 二人の話に、正規兵おかみは再び私に尋ねた。



「あ、そやった……な」



 取り敢えず私は、二人に同調する形で返事をした。



「そうか。協力感謝する」



 私の返事を聞くと、正規兵おかみはその場を去って行った。


 そして、それと入れ替わる様にして、ジョゼが酒場にやって来た。



「ヴィエンヌ商会を襲撃したのって、姐さんですよね?」



 ジョゼはテーブルに着くと、真剣な顔でそう尋ねた。


 そして、その質問に私は頷いた。



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【組織情報】


【ヴィエンヌ商会】

 バーウィッチに本店を構え、王国中に支店を持つ大商会。


 ヴィエール侯爵が後ろ盾ということもあり、バーウィッチでは比較的に幅を利かせて商いを行っている。


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