脳筋乙女の異世界花道
藤沢正文
脳筋乙女の異世界花道
第1章 命短し走れよ乙女 〜己の拳で切り開け〜
プロローグ
月明かりが辛うじて射す路地裏に怒鳴り声が響き渡る。
「おい! 聞いてんかオラァ!!」
「はぃいい」
怯える男性の胸倉を掴みながら女は乱暴に言った。
すると、見るからに筋肉隆々の大男の足が徐々地面から離れる。
そう、あろう事か女は片手で男を持ち上げているのだ。
「有り金全部置いてけ。そしたら見逃したる」
「わ、わかりました!」
そう言って、女は徐に手を離し持っていた得物を男に突きつけた。
青ざめた男は、慌ててポケットから皮袋を取り出して女に差し出す。
「シケとんなー」
女はそれを奪い取ると中身を確認し軽く舌打ちした。
「ほら行けッ」
屈んだ状態で睨みを利かす女に、男性は後ずさりながらも路地裏に消えて行った。
…………。
男を見送ると女は立ち上がり、赤いメッシュが入った長い黒髪を後ろで束ね直し始めた。
そして、女は路地裏の隙間か見える夜空を見上げた。
「はぁー。何でチンピラみたいな事やってんねん」
呟くようにそう述べると、戦利品を片手に女は賑やかな夜の街へ消えて行った。
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