第3話 お尋ね者、仕事も始める。



「カオルちゃん、いるかい?」



 ヤヌックと私が小競り合いをしているとティアーノ商会の店員さんにーちゃんが酒場にやって来た。



「おッ! ルクレオやん。仕事終わったん? 一緒に飲むか?」


「いや、まだ仕事中だよ。それよりカオルちゃん、『また』お願いできる?」



 店員さんルクレオは申し訳なさそうに、私に用件を述べてきた。



「しゃーないなー。特急料金貰うでー」


「勿論、報酬はちゃんと」



 私は立ち上がり店員さんルクレオに付いてティアーノ商会へ向かった。




 ***




「これがラモンさんの所で、これがボルドさんの所、最後のこれはローズリーさんの所だから、全部場所知ってるよね?」



 店員さんルクレオは店に予め準備されていた酒樽をどこへ納品するのか私に説明した。



「これが髭のおっちゃんとこで、これが禿げのおっちゃんとこ、ほんでこれがおばちゃんとこやろ?」


「うん。それとこれが納品書だから、こっちを渡して、受領書にはサインを貰ってね」


「わかったわかった」



 この仕事を始めたのは、私がアイテムボックス持ちだと知られたのが切っ掛けだった。


 ティアーノ商会は所有している荷馬車の数が少なく、買い付けと定期配達で常に荷馬車は手元にないらしい。


 しかし、まれに定期配達外での注文も入る。が、荷馬車がないので納品出来ない。


 そんな時、私が現れたという訳だ。


 アイテムボックス持ちで、本人が用心棒代わり。


 商会からすれば、私は稀に見る逸材いつざいだったらしい。



「それと、終わったら一度、納品書持って帰って来てね」


「えー。おばちゃんとこそこやねんから、店員さんルクレオが最後酒場あそこに来たらええやん」


「そう言わずに、仕事なんだから」


「けちやなー」



 私は文句を言いつつ、店員さんルクレオから納品書を受け取り、酒樽をアイテムボックスに入れて行った。


 たまにしか仕事はないが、大体一回の配達で銀貨2枚を貰える。


 まあ、商会むこうからすれば、荷馬車を借りてくるより安いと思っているだろうし。


 私自身、大して苦労せずに銀貨2枚も貰えるのだから、お互いに利益はあるのだ。



「ほな、行ってくるわー」



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【カオルの収入源】


・賞金稼ぎからの接収ファイトマネー


・賭博の売り上げ


・配達のアルバイト ← New!


・????


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