第11話 お尋ね者、最後の晩餐…



 それからの一週間はあっという間だった。


 令状によるところの退去期限最終日の今日、酒場みせの外は騒がしかった。


 十中八九、事情を知ってるお偉いさん達が徐々にこの街から出て行っており、それに勘付いた連中が騒いだり、慌てたりしているのだろう。


 そんな光景をいつものテーブルからボーッと眺めてると、見知った連中がやってきた。



「ん? どないしたん?」


「姐さん……」



 そこにはダラム、ヤヌック、ジョゼの三人が、私の前で立ち止まった。



「何や、シケたつらして。取り敢えず座れや」



 私が席を進めると、全員がいつもの定位置に腰を下ろす。



 …………。



 エールが目の前にやって来ても、誰一人手を付けようとしない。



「姐さん…「ウチは出て行かんで」」



 ダラムが申し訳なさそうに口を開いたので、私は間髪入れずに答えた。



「それはわかってます」


「じゃあ何やねん?」



 まどろこしい連中に少々苛立ちながら様子を伺っていると、全員がテーブルに何かを出した。



「これ、俺たちから餞別です」


「なッ!」



 突然の事に私は固まってしまった。



「俺たち姐さんに貰ってばっかりで何にも返せてないなーって」


「姐さんの意思が固いのは十分理解してます。出来れば力になりたいッス」


「けど、俺たちじゃ姐さんの足手纏あしでまといになっちまうんでぇ」


「だからせめて、姐さんの助けになる物をっと」



 …………。



「「「受けっとって下さい」」」



 ダラム、ヤヌック、ジョセがそれぞれ頭を下げて、私にそれぞれの餞別を差し出した。



「ァホ……んぐッ。……あんがとぉ」



 子分どもの気持ちに、私の目からは大粒の涙がポロポロと溢れた。



「「「姐さんッ!」」」




 ***




 その日は明日の事を考えてすぐに解散となったが、今までで一番楽しい夜を過ごせたと思う。


 そして翌日は日が昇ると同時に、バーウィッチの街に避難勧告が発令された。



 『バーウィッチにオーガ出現ッ! 全ての住民はすみやかに郊外に避難せよッ!』



 慌てて避難する人々の流れに逆らって、私はバーウィッチの中心部へと向かった。



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【子分達からの餞別】


【煙玉】

 使用する事で、周囲に煙幕を張り敵から自分の姿を隠す事が出来る。

 ダラムが盗賊団討伐の際に回収した盗品。

 道具屋で買えば、銀貨1枚程。


回復薬ポーション

 使用する事で、体力を200回復できる薬。

 薬屋か道具屋に銀貨1枚程度で売っている。

 ヤヌックの愛用品。


【レイザーガントレット】

 非常に軽い金属を使用した手を守る防具。

 動きやすさを重視して伸縮性も兼ね備えている。

 防具屋で金貨1枚。

 ジョゼが自分の為に買おうと思っていた防具。


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