第5話 お尋ね者、小金持ちになる。



 子分どもが傭兵ギルドで働き始めてから、酒場ここには子分が集まらなくなった。


 それもそうだ。


 元々居場所よりどころがなかった連中がここに集まっていただけで、新しい居場所よりどころが出来れば自然とそこに集まる。


 それでいいと私は思っている。



「ッで、お前らはいつまで私の所ここに居るつもりやねん?」



 いつもの酒場、いつものテーブルに、いつもの面子めんつが集まって宴は始まっていた。



「何言ってるんですか。俺はいつまでも姐さんの子分ですよ」


「まだ姐さんを倒してないからな、それまではここにいる」


「寧ろ、姐さんは商会うちで働いてるから、俺の子分じゃ……」


「「「それはないッ!」」」



 私とヤヌックは最近一緒にいるので、時折こういった冗談も言うようになった。


 勿論、その時は容赦なく殴るようにしている。


 ダラムとジョゼは仕事が終わると必ず酒場ここに顔を出し一緒に飲んでいる。



「そういや姐さん。傭兵ギルドこっちでも噂になってますよ」


「そうそう。賞金稼ぎから賞金稼いでるって」


「「ワハハハーッ!」」



 二人は噴き出した様に笑っていた。



「兄貴、実はそのついでに賭博かけもしてるんですぜぇ」


「知ってる知ってる。けどよ、姐さんが勝つんだから賭けにならないだろ?」


「それが、最近ほかの街からの来た奴が多いから……ねー、姐さん?」



 ヤヌックが悪い顔をしながら私の顔を見た。


 私は従業員おばちゃんからエールを受け取って、一口煽った。



「この間は金貨5枚くらい儲かったんやっけ?」


「正確には金貨4枚と銀貨7枚ですぜ」



 私とヤヌックの会話を聞いて、ダラムとジョゼは口を半開きにして呆けていた。



「「マジかッ!」」



 少し遅れて二人は驚き始めた。無理もない、彼らの1ヶ月分の給料ほどの金額だ。



「っというか、姐さん。今いくら持ってるんですか?」


「それ、俺も気になる」


「俺は、姐さんのパンツの色の方が…「「お前は黙ってろッ!」」」



 ヤヌックが二人にされたのは放って置いて、私はエールを飲み干した。



「知りたいか?」



 私は勿体もったいぶると、ダラムとジョゼはうんうんと黙って頷いた。


 二人の真剣な眼差しに私はアイテムボックスから皮袋を取り出し、テーブルに置いた。



「え? 姐さん。これ全部金貨ですよ!?」


「そやで、それは『金貨だけ』入れてる袋や」



 そう言って私はアイテムボックスに入っている皮袋を全て出した。



「ち、ちょっと待って下さい。マジでこれ全部、かねなんスか?」


「そやで、最近数えんのも面倒なったから、ついでに数えてや」



 私の提案に、ダラムは慌ててヤヌックを叩き起こした。



「ヤヌック起きろ。死ぬぞ」


「はいッ! え? 何ですかい?」


「いいから手伝えッ!」




 ***




 私がエールを5杯飲み終わった所で、ようやく勘定が終わったらしい。



「それでいくらやった?」



 私がニヤニヤしながら尋ねると、ダラムが疲れた様子で結果を教えてくれた。



「き、金貨が634枚。銀貨が、せ、1045枚、銅貨が1275枚、黒貨が113枚」


「合計、金貨で約751枚分になります」



 私は所持金の合計を聞いてニヤリと微笑んだ。



「あんがとッ♪」



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【異世界価格相場】


 屋台の串焼き   1本 黒貨5枚


 エール      1杯 銅貨2枚


 護身用短剣    1本 銀貨8枚


 エール樽     1樽 金貨1枚


 モーニングスター 1本 金貨10枚



 ※作中にこれ以上の金額が登場していないので参考程度に…


 

 金貨751枚、エール樽換算すると751樽。一樽あたりエール100杯なので。

 75100杯分エールが飲めますよ、カオルさんッ!(笑)


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