第8話 当事者、我に返る…



 気が付いた時には辺り一面が瓦礫の山となっていた。


 今朝、奇襲を掛けられ無理やり起こされた所までは覚えているが、その後の記憶が曖昧だった。



「もしかして、これ全部ウチがやったんか?」



 辺りを見回し、唖然とした。


 ヨーロッパを彷彿させる美しい街並みは、私も気に入っていた節があった。


 しかしそれが、今や見るも無惨な瓦礫の山となっているのだ。



「あちゃー、これ弁償とかせなアカンのかな?」



 全て修復するのにいくら掛かるのだろと考えていると、あることに気が付いた。



冒険者あいつらはどこ行ったんやろ?」



 辺りを見回しても、人影は確認できない。



 …………。



 グゥーー〜〜ッ。



「そういや、朝飯食ってなかったなー」



 太陽は昇り切り、これから傾こうとしていた。



「飯食ってから考えるかーッ!」



 私はアイテムボックスから食事を取り出し、遅めの朝昼食ブランチを摂った。


 そしてその日、冒険者共が私の所にやってくる事はなかった。




 ***




「今日はえらい遅かったなー」



 翌日、ようやくやって来た冒険者共に私は言葉を投げかけた。



 …………。



 しかし、彼らから返事は返って来ない。



「……チッ。無視かいな」



 私は金属バットを取り出し、いつでも動けるように臨戦態勢を取った。



「ん?」



 離れていたのでわからなかったが、よく見ると魔法使いウィザードが既に呪文の詠唱を始めていた。



「クソッ! もう始めとったんかッ!」



 私は慌てて、冒険者共に向かって突っ込んで行った。



「おっと、行かせないよ」



 すると、サンディスイケメンが私の行く先を塞いだ。


 私は何度も金属バットで彼に殴りかかるが、盾で簡単に防がれてしまう。


 それは、明らかな時間稼ぎだった。



「クソッ! 何やってんねん、お前らッ!」



 私が慌てた様子で尋ねると、サンディスイケメンは爽やかに微笑んだ。



「君を倒す『秘策』さ」



 サンディスイケメンがそう言い終えると同時に、後ろにいた冒険者共に光の粉が降り注いでいた。


 これはヤバイと感じた私はすぐに冒険者共から距離を取った。



 …………ッ!!



 それと同時に冒険者共が一斉に攻撃を仕掛けて来た。


 私は飛んでくる矢をギリギリでかわし、降りかかってくる大剣を寸前で避けた。


 一昨日までの彼らとは何かが違った。



「前より速なってるやんッ」


「当たり前でしょッ、強化魔法エンチャントで強化してるんだからッ!」



 女剣士つりめの突きをギリギリでなしながら呟くと、彼女は嘲笑あざわらうかの様にそう述べた。



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【スキル解説】


強化魔法エンチャント


 術者又は味方、もしくは味方全員のステータスを上昇させる魔法。

 レベルや種類によって、効果と対象範囲が異なる。


 今回使用されたのは、ベテラン魔法使いウィザードダミアの強化魔法エンチャントで、

 詠唱時間が長くなるが、全てのステータスが40%上昇する。


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