第28話 ナイアルラトホテップの影 プロローグ
人間の心の奥底にある、未知なる物への恐怖。人類が思考を始める以前から未来永劫に続くであろう、この恐怖は一体何処から派生したものであろうか。
原始の時代、弱肉であるひ弱な人類が強食である動物から身を護る術のひとつとして危険を察知する能力が研ぎ澄まされていった結果、闇や未知なる物に対しての危機感を持つに至ったのであろう。
そんな人類に対して、遺伝子の中にさえそれに対しての恐怖が埋め込まれていると考えられるものがある。原初の異質な、そう極めて異質であり、混沌であり、全く以って相容れない存在である神々(それを神々と呼ぶのは他に呼びようが無いからである。)の存在がそれだ。
それらの神々はあまりにも強大な力を有するため自分以外の存在を許さない。自分以外の総てのものを滅ぼそうとした。そして、それを止めようとする神々も存在する。
同じ神々と呼んでいいのかは、よく判らない。そして、総てを滅ぼそうとする側とそれを阻止しようとする側との長い長い戦いがあった。
その戦いが前者の勝利に終っていたのなら今の人類はおろか地球そのものの存在さえも消滅していた筈である。幸いにして永劫に続くかに見えた戦いは後者の勝利に終わり、前者のものたちは様々な場所、空間、次元に封印されたのだった。
なぜ総ての存在に対して危険極まりないような神々を消滅させるのではなく、ただ封印するに留めたのだろうか。それは封印した側の神々にとっては消滅させようとした神々の存在さえも、愛すべき、そしてその存在を許すべきものであったのかも知れない。
封印されしもの、封印をなしたもの、そして封印されるほどの力は有していなかった故に封印を免れたもの。封印されたものはその限定された力の及ぶ限り自らの封印を解く術を探している。ある時は封印を免れた眷属を使い、あるときは更に下等な存在であった人間に影響を与えながら。
それらの様々な営みの中で、唯一封印されるべき力を有しながら封印されなかった存在がある。それは総てを滅ぼそうとした陣営に組してはいたが、その中でも異端の存在であった。ナイアルラトホテップである。
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