ⅵ
わたしたちは夕焼けに照らされオレンジ色に光るザルツァハ川の辺りにそって、手をつなぎながら家路に就いていました。
「ねぇノエルさん、夕食はなにがいいですか?」
隣を歩く彼に今晩の献立の希望を伺う。
「べつになんでもいいよ。ルルの作る料理はどえも美味しいから」
「またそう言って誤魔化す」
そう言って拗ねると彼は笑って――
「本当だよ。ルルが作る料理も、ルルと一緒に食べるご飯も好きだよ」
改まってそう言われるとなんだか照れてしまいます……
御立てられたからではないですが今日は腕をふるいましょうか。
それはそうと先程思いついたことをノエルさんに相談する。
「あっそうそうノエルさん。祝典の日なのですが家に職場の知人をお呼びしていいでしょうか。勿論、隣のクリスタとメリッサも。みんなで祝典の日を祝いたくて」
「うん、いいよ。じゃあアンジェやシャルルも来るんだね。会うのも久しぶりだな」
ノエルさんの了承を得たので、早速、お呼びする人達に招待のメールを送る。
自分なりにどうすれば祝典をいいものに出来るかを考えましたが、結局、わたしにできることなどちっぽけで、せいぜい身近な人と一緒に楽しんで過ごすことしか思いつきませんでした。
けれどそれでいいのでしょう。好きな人と好きに過ごす、それが人にとっても、ヒュネクストにとっても幸せなことには変わりありませんから。わたしは関わった人に出来るだけ幸せになってほしい。そうやって繋げた人の輪が大きくなっていけば、いつか本当の平和が訪れるとそうわたしは信じています。
人の声が地図を作るというなら、わたしは彼と共にその地図の上を歩んでいきたい。たとえどんなに道が曲がりくねっていたとしても歩みを止めず、壁があるなら扉を作り、谷があるなら橋をかけましょう。
わたしはそうやって生きていたい。
今はただこうして右手から感じる幸福を握りしめて。
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