file:namber=02 title:Mind is like a swaying braid.
ⅰ
レジデンツ広場は休日ということもあってたくさんの人で賑わっている。老若男女に様々な人種、皆それぞれ違った服を来て、違った目的でここに来ている。そしてその中にはわたしと同じヒュネクストも数人見られる。
現在の世界人口は90億人を越えていますが、ユーフォリア・コロニーの総人口は4億5千人。セントラル・エリアだけですと1億人を下回り、その内ヒュネクストの数は100万人程です。ヒュネクストは凡そ人口比の百分の一の比率で生産されており、主に行政機関や公共機関に配属されています。昔ではわたし達が労働を奪うのではないかと懸念されていましたが、昨今のユーフォリア・コロニー全土は人口減少に伴い、ヒュネクストの労働力は寧ろ必要とされるようになっていました。そうして最初は疎まれていたわたし達ヒュネクストですが、少しずつ人の世の中に馴染めるようにもなって、今ではこうして人と変わりなくお出かけするようにもなれました。
今日わたしとノエルさんはデートをしにきていました。もとい引きこもりがちな彼を外に連れ出すために半ば無理やりにですが。
「ノエルさんは何処か行きたいところあります?」
「べつにどこでもいいよ。なんならもう家にに帰ろう……暑いし人多いし……」
「ダメですよ、いつも本ばっか読んで家に引きこもってるから、だからこうして外に連れ出してるんですから」
気だるく歩く彼の腕にしっかり腕を抱き寄せ、雑踏の中に進んでいく。
「そういえばノエルさん、何か気付いたことはありませんか?」
そう言って彼の目の前に出て、身体をクルッと回しフレアスカートの裾を広げアピールする。
「えーっと……その服にあってるね」
彼は微笑んで見せたものの、言葉はぎこちない感じでした。
「んー、そう言ってもらえて嬉しいですが、なんだか無難な回答ですね。でも残念ながら違います。実はですねこの身体に
そう言って再び彼の腕に抱きつくと、彼にそむけられてしまいました。
「それ以上成長してどうするんのさぁ……それにしてもどうしてまた急にそんな思い切ったことを」
「この前ですね、クリスタに子供扱いされたので、やっぱり見た目が幼気てるかのが原因なのかなっと思いまして、それで身体を促進させてみましたけど、人の成長速度も模しているので成長しているか実感できないんですよね。それにノエルさんはこれからも成長するというのに、ルルはいつまでもこのままの見た目というのもなんだか寂しくて」
すっかり彼はわたしの身長を追い越し、わたしがつま先立ちしてようやく同じ目線に並ぶくらいに成長なされました。
「そういうところが子供っぽいんじゃないのかな」
彼は手を口元に当てクスっと笑う。
「もーノエルさんまで子供扱いしてー」
「ぼくも小さい頃からルルは自分と同じ歳くらいの子供だって思っていたよ。たぶん今もそう。でもだからこそルルも僕と一緒に成長してるんだなって実感できるし、それが嬉しんだ。べつに見た目が変わらなくてもちゃんとルルの心は成長しているよ」
「ではこれからは身体も心も一緒に成長できますね!」
「その言い方は誤解が生じてしまうからやめて欲しい……でもルルが大人の姿になったらやっぱりメアリーさんみたいになるのかな?ルルの見た目ってメアリーさんの若い時の姿なんでしょ」
「らしいのですがメアリーの若いころの写真と見比べてもそっくりではないんですよね。なんかこう、目が吊り上がってて硬い表情してました」
目の端を両手の人差し指で持ち上げる。
「ははっ、確かにそんな顔してたね。でも昔のルルも表情硬くてそんな顔してたよ。今はいつも笑ってるから緩んだ顔してるけど」
「顔立ちは日々の表情によって変わりますからね。なので昔の彼女の身なりを模したこの身体も生活習慣が異なれば彼女とは異なった成長を遂げると思います。もしかしたらシャルルみたいにスラっとしたスタイルになるかもしれませんよ」
「たぶんルルは歳をとってもあまり変わらないよ」
「そんなこといってられるのは今の内ですよ。いつか絶対に魅了させてあげます」
いたずらに微笑んでみせると彼は微笑みを返してきた。
「ルルは今でも充分魅力的だよ」
彼の表情を読み取るにその言葉に嘘は包装されてないようでした。てっきり適当にあしらわれるのかと思っていたら、不意打ちをくらわされ調子を乱してしまいエラーが発生する。
心拍数が少し高まり頬が仄かに熱くなる。
「ノエルさんは意地悪です……」
そう小さく呟いて彼の袖を掴み、緩んだ頬を気付かれないように俯いた。
わたしの身体はほぼ人のそれと変わらないものとなりました。はたして今のわたしは彼の目にどう映っているのでしょうか。もしもわたしが人だったなら彼がわたしの事をどう見ているのかわかるのでしょうか。そしてこの胸を締め付ける痛みの正体を知ることは出来るのでしょうか。
わたしにはわかりません。わたしは人ではないのですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます