File.17 殺戮者になる理由
「で、フィーンドが殺戮者になったですって?」
ハイドは気を取り直して、騎士テイラーと父親に訊いた。
まだ、微妙にオドオドしているが、さっきまでに比べると全然マシだ。
「はい。何かその理由に心当たりでもあれば……」
ハイドは、すぐに首を傾げた。
やっぱ、ないのかなあ……
「最近、仕事量が以前よりも増えたこととかですかね……」
呟くようにハイドが言ったが、果たしてそれが理由だろうか?
そんなのが理由だったら、今頃世界中に殺戮者が溢れ返っているはずだ。
「何か命に関わるようなことはありませんでしたか?」
騎士テイラーが更に質問した。
確かに、フィーンドは自身の命に関することで怯えているようだった。
この質問はとても的を射ているだろう。
「い、命に? そんなことは……」
それに対して、ハイドは更に戸惑った。
「何か事故があったとか……」
父親は更に更にハイドに質問した。
これじゃあ、ただの質問攻めだ。
それに、事故なんかが殺戮者になる理由だとしたら、もはや意味が分からない。
何故、それを人を殺すのに向けようとするんだ?
「いや、そんなことは全く……」
だが、どの質問にもハイドは否定をした。
日常生活が原因ということではないようだ。
やはり、武装集団に襲われた現場で何かあったってことかな?
ヴィールが言っていた長髪の双剣士が行った秘力攻撃が、フィーンドを殺戮者にしたのか?
でも、それは何か違う気がする。
『秘力』は人を傷つけるのには使えても、人を惑わせたり人を癒したりはできない。
あくまでも、攻撃や破壊にしか使えない。
それが『秘力』の大原則だ。
だから、『秘力』を使えるようになっても、それを活かせる職に就かないと全くの無駄になってしまうことになる。
「本当に何にもなかったんですか?」
父親はハイドに詰め寄った。
ハイドが何かを隠しているんじゃないかとでも思っているみたいだ。
「え、ええ……」
ハイドはそれにビビり後ずさりをした。
多分、本当に何にもないのだろう。
「ケインさん、それくらいでどうですか?」
父親の後ろから騎士テイラーが言った。
「そうですね」
父親は、ハイドから離れ、深く息を吸った。
どうやら、落ち着けないとグイグイ行ってしまうようだ。
「ハイドさん、ありがとうございました」
「い、いえ……」
騎士テイラーがお辞儀をして、ハイドを見送った。
結局、ハイドから何か有力な情報を得ることはできなかった。
果たして、この後はどうするんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます