File.19 不審者を追え!
画面に、先程の男の後ろ姿が映る。
銀色の髪がとてもきれいだ。
黒い服によって、尚のことその髪がはっきりと見える。
「あの人がどうかしましたか?」
「いや……鉱山に行くにしては、おかしな服装ではないですか?」
父親もその男の異常さに気付いたようだ。
ちょっと遅い気もするけど……
「そうですか?」
騎士テイラーは、あまり気にしていない。
大丈夫か、騎士……
「すみませーん! ちょっと良いですか?」
父親は大声で、銀髪の男に声をかけた。
今、騎士テイラーの返答をちゃんと聞いてなかったよな……
父親の声が聞こえたのか、銀髪の男はピタッと止まった。
そして次の瞬間、猛スピードで走り出した。
「ちょ、ちょっと! 追いかけますよ!!」
「は、はい!!」
父親が走り出し、少し遅れて騎士テイラーも追いかけだした。
それから更に少し遅れて画面の方も動き出した。
ビデオカメラ持ちが走るのに手間取ったようだ。
銀髪の男は、凄いスピードで走っていき、画面の小さな点になりそうだった。
父親は軽装だが、とても銀髪の男に追いつけそうにない。
進む度に画面が上下に揺れる。
うまくビデオカメラを固定できていないのだろう。
「ケインさん、待って下さーい!!」
だんだん、鎧を着込んでいる騎士テイラーの走りが遅くなり始めた。
悲鳴にも似た叫びを発したが、父親には聞こえていないみたいだ。
「テイラーさん、先行きますね!」
ビデオカメラ持ちが騎士テイラーに言った。
それに対しての返答はない。
騎士テイラーは返事をする元気もないみたいだ。
瞬く間に、騎士テイラーが画面から消えた。
「おい、待ちたまえ!!」
父親の大声が木霊する。
なんか発言が、軍の人みたいだな……
それよりも問題なのは、父親と銀髪の男との距離だ。
画面越しなのでちゃんとは分からないが、更に空いてしまっている気がする。
このままではそのまま逃げられてしまうぞ……
「くっ、こうなったら……」
父親がサブマシンガンを取り出した。
まさか、走りながら撃つつもりか!?
ズダダダダダダダダダダダダダッ!!!
銃声と共に爆発が見えた。
だが、銀髪の男には一発も命中していないようだ。
男の走るスピードは全く衰えない。
「駄目か……」
そして遂に、銀髪の男が画面から消えてしまった。
父親の目からも見えなくなったのだろうか、父親は走るのをやめた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」
突然、悲鳴が聞こえてきた。
何があったんだろうか?
というか、今の声、何処かで聞いたことがあるような……
さっきの……ハイドだっただろうか?
彼の声に似ていた気がするが……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます