File.18 下山

「有力な情報、得られませんでしたね……」

 騎士テイラーが、ホウっと一息ついてから言った。

「そうですね……。他の人にも訊いてみますか?」

「いや、それはしなくていいでしょう……」

「何故ですか?」

 父親がわざわざ騎士テイラーに質問した。

 それは、さっきの雰囲気を見れば一目瞭然のはずだ。

 フィーンドと一緒に働いていた人ということで、ハイドが呼ばれてきた。

 ということは、逆に言ってしまえばフィーンドに詳しい人は、ここにはハイドしかいないということだ。

 他の人に訊いたところで、ハイド以上にあやふやになるだけだろう。

「まあ、いいでしょう」

 父親は質問を撤回した。

 じゃあ、何で質問したし……

「ところで、これからどうしますか?」

 そして、別の質問を騎士テイラーにした。

 まあ、普通だったら父親の部下たちと合流するのがいいんじゃないかな?

「うーん……。今から住宅街の方に戻っても、時間がなあ……」

 騎士テイラーが素の口調になって呟いた。

 そういえば、あまり気にしてなかったが、日がだいぶ傾いている。

 確かに、面倒くさくはある。

 だが、そこは騎士なのだから、少しは頑張って欲しいものだ……

 いや、俺の勝手な要求だが……

「とりあえず、私の部下と合流しましょう」

 そう言って、父親は歩き出した。

 陰で騎士テイラーが、

「やっぱりぃぃ~」

 と言っているが父親は気にしていない。

 騎士の化けの皮が剥がれているのに、気付いていないのだろうか?

 それとも、気付いていてわざと無視しているのだろうか?

 まあ、どうでもいいか。

 父親の後に、騎士テイラーが続き2人は下山し始めた。

 ちょうどその時、向こう側から1人の男が登ってくるのが見えた。

 すぐに画面外に出ていってしまったが、その男は銀色の長髪で、黒いロングコートを纏っていた。

 暑くはないのだろうか?

 ん?

 ロングコートの内側に何かが見えたぞ……

 あれは、剣の柄か?

 2つくらい見える……

 ちょっと待てよ……

 銀色の長髪に、2本の剣って、ひょっとして……

 こいつが、ヴィールが言っていた剣を2つ持った髪の長い人なんじゃないのか!?

 おい、騎士テイラーでも父親でもいい!

 気付け!!

 何が起こるか分からないぞ!!

 って、所詮は記録か……

 俺がどう思おうと、このビデオテープはただ記録を流し続けるだけだな。

 少し熱くなりすぎた……

 と思ったところで、父親がこちらに振り向いた。

「今の人は、何者なんでしょうか?」

「え?」

 騎士テイラーもこちら側を振り向き、ビデオカメラが通ってきた道を映し出した。

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