File Group 1
血塗れの悪鬼
File.1 騎士テイラーの受難
しばらくすると、スクリーンが暗転した。
「テイラーさん、カメラの準備できました」
何者かの声と共に、今度は人間の顔がドアップでスクリーンに映し出された。
先程出てきた男に似ている……
というか、ほとんど同じ顔なので、この男が騎士テイラーなのだろう。
「しっかり記録してくれよ」
騎士テイラーは、俺たちの奥の方を覗き込む感じで言っている。
誰に向かって話しているんだ?
「分かってますよ。だから、あまり顔を近づけないでください」
騎士テイラーとは、違う声がまた聞こえてきた。
どうも、その声の主は、ビデオカメラを持っている人間のようだ。
昔の騎士団は、事件を捜査する騎士とそれを記録する騎士のツーマンセルで、行動していたんだろう。
ちなみに、今は高性能小型カメラを騎士1人1人が持ち、記録するという風になっている。
どちらにしても、警察の俺からしたら羨ましい限りだ。
こっちなんか、班にカメラ1台が精一杯だからな……
「分かった分かった」
騎士テイラーはビデオカメラから離れ、そのまま歩き出した。
どうやら、騎士テイラーが編集した部分はさっきのところだけのようで、その後は2人の雑談が続いた。
「しかし、まさか殺戮者の事件で警察からお呼びがかかるとはな」
「全くですよ。こっちの身にもなってほしいですね」
どうやら、騎士テイラーとビデオカメラ持ちは、警察に呼び出されたことに不服みたいだ。
「ああ。鎧着て歩くのがどれだけきついと思ってるんだあいつらは!」
騎士テイラーは、身体をクネクネさせながら笑顔で叫んでいる。
スクリーンを通して観ている俺からしてみれば、とてもそんな風には見えない。
というか、さっき見た騎士テイラーと、今喋っている騎士テイラーはまるで別人だ。
さっき見たのは他人行儀の態度で、こっちがこの人の素なのか?
「まあ、その苦労は私にはないですけどね」
ププッという音と共に、ビデオカメラ持ちが言った。
ビデオカメラ持ちは鎧を着ていないのか?
「見習いは良いよ……。俺も昔に戻りたい……」
「その代わり、ビデオカメラがメチャクチャ重いですよ」
騎士の標準装備は、警察や軍とは大きく異なる。
警察は紺色の制服に拳銃、軍は迷彩服に様々な重火器が基本だ。
ところが、騎士の装備は紺色の鎧に紺色の剣。
王族の権威を象徴するために仕方のないことではあるのだが、やはり時代遅れな感が否めない。
「あ、もうすぐ、現場に着きますよ」
同時に、騎士テイラーが真顔になった。
やはり、外面はちゃんと気にするようだ。
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