File.2 警察と騎士

「騎士が到着しました!!」

 誰かが叫び、警察が一斉にこちら側を向いた。

「公務、ご苦労様であります!」

 警察は、上位組織である騎士団に対して、このように挨拶しなければならない。

 一斉に発言されたそれは、さながら騒音のようだった。

 俺は本来する側なのだが、される側に立つとこんな感じなんだな……。

 こういう挨拶をする規則だが、実際やられてみるとただただ五月蠅い……

「責任者は何処にいる?」

 騎士テイラーは、先程雑談していたのが嘘であるかのようにきびきび動いている。

「こちらです。ケインさん!!」

 1人の警察が大声で、父親の名前を呼んだ。

 しばらくすると、腰に警棒とサブマシンガンを携えた警察が奥の方からやってきた。

 相当鍛えているのか、他の警察と比べても一段とガッシリしている。

 そして、その警察の顔は俺やレフシィに似ていた。

「わざわざ、こんな事件の為にありがとうございます!」

 何故か敬礼をして2人の騎士を迎えたその警察は、紛れもなく俺の父親ケインだった。

 敬礼をする規則なんか、あったかな?

 それにしても、父親は随分と金持ちだったみたいだ。

 警察でも軍でも、申請さえすれば自分専用の武器を職場で使うことができる。

 ただ、専用の武器は自腹で購入しなければならない。

 普通だったら、必要がないものだからだ。

 映像から察するに、俺が今持っているマシンガン以外に、サブマシンガンも持っていたみたいだ。

「いえ、我々が助けなければならない事件なのでしょう。まずは、状況を説明してください」

 騎士テイラーは、父親に事件の詳細を尋ねた。

 さっきまでの態度だったら、「本当に何で呼び出したんだよ……」と愚痴をこぼしていそうだ。

「はい。現在、殺戮者はこの近辺に潜伏している模様、警戒している次第です」

 ……だろうなあ。

 警察が武装状態で待機しておらず、事件の調査をしているところから、それはすぐに分かる。

 殺戮者が暴れているのであれば、軍が出動しているはずだし……

「では、殺戮者とは、まだ遭遇していない?」

「そうなりますね」

「死者の数は?」

「数人の遺体が見つかったのみです」

 騎士テイラーと父親の会話から、この『血塗れ悪鬼事件』はそれほど大きな事件というわけではなさそうだ。

 死者もそれほど多くはない。

 勿論、殺戮者絡みの事件としてはの話だが……

「となると、殺戮者の正体や使う武器は分からないか……」

「いえ、殺戮者の正体については分かっています」

 意外な言葉が父親から発せられた。

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