File.4 重要参考人ヴィール

 何で、息子を持つような人が殺戮者になったんだろう?

 という疑問が頭の中で湧いた。

 そういう人が人殺しをする理由が全く分からなかった。

「何ですって!? いったい、どうやって見つけたんですか!?」

 しばらくの間固まっていた騎士テイラーは、顔をブルブルと震わせた後、父親に掴みかかりそうな勢いで、質問した。

 無理もない。

 殺戮者に息子がいることなんて、滅多にないことだからだ。

「この近くに住んでたんですよ」

 父親は尚も淡々と話を続けている。

 いったい、どんだけ肝が据わっているんだよ、本当に……

「この近くに……?」

 騎士テイラーは、顎に手をあてながら言った。

 息子が近くに住んでいたということは、その父親に当たる殺戮者も住んでいたのだろうか?

 となると、その殺戮者はまだ殺戮者になってから日が浅いのか?

「ええ。名前はヴィール。年齢は5歳で、近くの幼稚園に通っています」

 15年前で5歳ということは、生きていたとしたら俺と同い年か……

 今は何をしているんだろう……

「5歳ですか……」

 騎士テイラーは微妙な反応をした。

 もう少し大きければ、聴取しやすかったのになあとでも思ったんだろう。

 さっきから、ところどころボロが出ているのが面白い。

「で、その子に会うことってできますか?」

「ええ、もちろん。本部に匿っているところですから」

 騎士テイラーの質問に父親が笑って答えた。

 匿っているということは、ヴィールという少年も危うく殺されかけた被害者ということになる。

 殺戮者と一緒に過ごしていたんだから、当然と言えば当然か……

「では、その本部とやらに行きましょう」

 手っ取り早く済ませるためか、騎士テイラーはさっさと捜査本部に向かおうとした。

「いや、別に行かなくても……。私が呼んできますよ」

 だが、父親はそれを制して、

「おーい! ヴィール少年をこっちに連れてきてくれ!」

 捜査本部があると思われる方向に向かって、大声で指示を出した。

 いいのか、それで!?

 仮にも被害者なんだよな……

「分かりました!」

 画面の奥の方から声が聞こえてきた。

 多分、父親の部下の声なんだろう。

 しばらくすると、1人の少年が警官と一緒に父親たちの下に来た。

 この少年が、殺戮者の息子ヴィールなのだろう。

 その顔は、恐怖で青ざめているというよりも、ただただ真っ白だった。

 俺と同じだ……。

 俺も『セントラル学園虐殺事件』に遭遇した時、最初何が起きたのか分からなかった。

 この子も、きっと頭の整理がまだできていないんだろう。

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